目次

1.クリニック・医院開業の実態

(1)現状のクリニック・医院の開業

(2)これからのクリニック・医院の開業

2.失敗するクリニック・医院開業

(1)クリニック・医院開業の経費

(2)クリニック・医院開業の集患

(3)クリニック・医院開業の採用

(4)クリニック・医院開業の診療効率化

(5)クリニック・医院開業のスタッフマネジメント

3.成功するクリニック・医院開業

(1)クリニック・医院開業前のコンセプトづくり

(2)クリニック・医院開業前のモデルクリニックめぐり

(3)クリニック・医院開業前のミッション、ビジョン、バリュー作成

(4)クリニック・医院開業の採用

(5)クリニック・医院開業の集患

(6)クリニック・医院開業の診療効率化

(7)クリニック・医院開業後のスタッフマネジメント

(8)クリニック・医院開業前の評価制度

1.クリニック・医院開業の実態

(1)現状のクリニック・医院の開業

クリニック・医院の開業は2007年~2017年の厚生労働省医療施設調査によると、開業・再開したクリニック数が54,236施設、廃止・休止したクリニック数が51,868施設です。9年間でクリニック数は2,368施設増加しています。また、2014年から開業・再開のクリニック数、廃止・休止のクリニック数が増加傾向となっています。

医科クリニック・医院の開設・再開、廃止・休止施設数

(2)これからのクリニック・医院の開業

クリニック・医院の「入院医療需要」は高齢化により2040年までは上昇する見込みですが、その後は、ほぼ横ばいで推移すると思われます。一方、「外来医療需要」は高齢化率の上昇と人口減少により、2025年をピークに減少する見込みです。2025年は団塊世代が後期高齢者(75歳以上) になる年で、国民の1/4が後期高齢者になります。後期高齢者になると、通院が困難になったり、病院や介護施設に入院することが増えたり、在宅医療を利用する患者が増えます。外来は若年層がメインになりますが、この層の人口が減少するため、クリニック外来の医療需要は減少していく見込みです。そのような状況に対し、病院の廃止・休止施設数の増加、医師の医局離れなどでクリニック・医院の開業施設数は増加、1医院当たりの患者数は減少していく見込みです。そのため、2025年をピークに診療圏によってはクリニック・医院の開業が非常に厳しくなる可能性があります。

医療需要指数・診療所外来利用者数の将来推計について

2.失敗するクリニック・医院開業

(1)クリニック・医院開業の経費

クリニック・医院開業の経費とは、主に開業までにかかる初期投資と開業後の運転資金にわかれます。 初期投資に関して、クリニック・医院を新規で開業する場合、基本的に戸建てかテナントでの開業になります。戸建ての場合、土地を所有していれば土地購入の費用はかかりませんが、所有していない場合は土地を購入するか借りる費用が発生します。建物も自分で建てる場合は購入費が発生し、賃貸の場合は賃料が発生します。テナントでの開業の場合は、内装設計・工事費用が発生します。また、医療機器・検査機器、スタッフ採用経費、ホームページ制作費、内覧会費用など、開業までにかかるイニシャルコストを初期投資と言います。クリニック・医院開業で失敗するパターンとして多いのは、まずこの初期投資をかけ過ぎてしまうことです。診療圏やコンセプトに合わないゴージャスな建物・内装にしてしまったり、高額な医療機器、高額なMRI、CTなどの検査機器を購入して、初期投資をかけ過ぎてしまうと、開業当初から苦しい状況に追い込まれることになります。 また、運転資金とはクリニック・医院開業後、クリニックを運営するためにかかる経費で、主にスタッフ人件費、家賃、広告宣伝費などがあります。開業後の運転資金で失敗するケースは、開業当初から大丈夫だろうとスタッフを多めに採用してしまうケース、テナント開業の場合、高額な家賃の発生する物件を選んでしまうケース、必要以上に広告宣伝費をかけてしまうケースなどがあります。最近ではよくわからないままWEB広告会社の営業で、広告費を必要以上にかけ過ぎてしまうクリニックも見られます。

(2)クリニック・医院開業の集患

クリニック・医院開業の集患において、今、ライフサイクルで導入期・成長期にある診療圏(患者の需要に対して、クリニックの供給が足りていない診療圏)の場合、あまり集患の工夫をしなくてもほとんどのクリニックで患者が増えていきますが、東京、大阪、京都、名古屋、福岡などの一部の都市部では、ライフサイクルで成熟期に入っている診療圏(患者の需要に対して、必要以上にクリニックの供給がなされている診療圏)があり、このような診療圏では集患の工夫をどんどんしていかないと、クリニックを開業して半年、数年経っても患者が増えていかないケースも見られます。今、クリニック・医院開業の集患で失敗しているクリニックは、診療圏内におけるクリニックの長所・強みを把握していないこと。そして、そのクリニックの長所・強みを今、集患で最も効果の高いホームページ(特にスマートフォン)に掲載し、アピールできていないことです。また、GoogleやYahooでクリニックのホームページを上位表示させるSEO対策ができていないことも大きな要因になっています。

(3)クリニック・医院開業の採用

昨今の労働力人口減少により、クリニック・医院開業の採用には、従来のような無料媒体のハローワークに求人を掲載したり、有料媒体の集合チラシに求人広告を掲載するだけでは求職者の応募をあまり獲得できない時代になりました。また、求職者の応募があったとしても面談でスタッフの能力や人間性を見抜けず、残念ながらクリニックにふさわしくない人材を採用してしまうケースも見られます。クリニック・医院開業の採用で失敗するケースは、欲しい人材の明確化ができていない。その欲しい人材が見そうな求人媒体がわからない。さらにはそういう人材が職場に求めているメリットを掲載できていない。求職者の応募があったとしても、先生の面談経験が乏しく、クリニックに適切な人材を見抜いて採用できていないというケースが見られます。

(4)クリニック・医院開業の診療効率化

クリニック・医院開業の診療効率化は、開業後に患者が順調に増え、待ち時間が長くなり、クレームが起きたり、帰る患者が出てくるのを防ぐために行います。診療効率化は患者満足度アップのために行うものですが、クリニック・医院開業の診療効率化で失敗するケースは、ITへの投資やクラークなどの人材に投資ができない。あるいはそのような人材に投資ができたとしても、クリニック内に人材を育成する教育システムがないなどがあります。

診療効率化

(5)クリニック・医院開業のスタッフマネジメント

クリニック・医院開業のスタッフマネジメントとは、院長がクリニックを開業して実現したい夢・目標などをスタッフと共有し、共感してもらうこと。そして、その夢・目標の実現に向けてスタッフをまとめ上げ、一緒に推進していくことです。クリニック・医院開業のマネジメントの失敗例として多いのは、クリニックのミッション・ビジョン・バリューなどの柱がないため、「院長が何を考えているのかわからない」「院長が何を目指しているのかわからない」と、スタッフから言われてしまうケースです。こういうことをスタッフから言われるクリニックはスタッフにやりがい、働きがいを与えられていないことがほとんどです。また、働きやすい環境づくりができていないにも関わらず、スタッフの声を聞く場がなく、スタッフがどんどんつらくなって辞めていくといったケースも見られます。そういうクリニックは絶えず先生が採用活動をして疲弊しています。

スタッフマネジメント

3.成功するクリニック・医院開業

(1)クリニック・医院開業前のコンセプトづくり

クリニック・医院開業のコンセプトづくりとは、開業した後に先生が対象にしたい患者層や患者の疾患を明確化し、その患者に対してどんな医療・サービスを提供していくかを決めることです。開業前にコンセプトを明確化し、そのコンセプトに基づいて立地、建物・内装、医療・サービス(医療機器・検査機器、サービス内容、欲しい人材像、接遇スタイルなど)などを決めていきます。特に成熟期に入っている診療圏でのクリニック・医院開業は、コンセプトづくりが重要になります。

コンセプト

(2)クリニック・医院開業前のモデルクリニックめぐり

クリニック・医院開業前のモデルクリニックめぐりとは、先生が決めたコンセプト、あるいはコンセプトに近く、成功されているモデルクリニックへ見学に行きまくることです。知り合いの先生のクリニックや紹介でモデルクリニックがあれば見学に行き、先生にいろいろ話を聞いてみたり、アドバイスをもらいましょう。そうすることで、先生のクリニックのイメージが具体的にどんどん固まっていき、理想のクリニック開業に近づいていけるでしょう。

(3)クリニック・医院開業前のミッション、ビジョン、バリュー作成

クリニック開業前のミッション、ビジョン、バリュー作成とは、クリニックマネジメントの方針書をつくることです。ミッションとは「なぜ、先生のクリニックが存在しなければならないのか?」クリニックの存在意義・目的、最終ゴールを決めることです。ビジョンは最終ゴールであるミッションのマイルストーン(中間ゴール)です。これから3年後、5年後、10年後にクリニックがどのようなクリニックになっているかを具体的にイメージできるようにします。3年後、5年後のクリニックの医療・サービス領域、医業収入、ドクター・スタッフ人数、給与などを明確化します。最後にバリューは行動指針のことで、ミッション、ビジョンを達成するための日々の行動指針です。開業前にこれらのミッション、ビジョン、バリューを作成していくことで、採用はもちろん、開業後のスタッフマネジメントもやりやすくなります。

ビジョン

(4)クリニック・医院開業の採用

クリニック・医院開業の採用は、まず欲しい人材像を明確化することです。そして、その人の目に触れる可能性の高い媒体を選び、その人がクリニックで働くことで感じてもらえるメリットをその媒体にしっかり記載します。無料媒体のハローワーク、e-ナースセンター、INDEED(有料広告を掲載することもできます)などは最低限フル活用しましょう。

(5)クリニック・医院開業の集患

今、クリニック・医院開業の集患で最も重要なのはホームページ(特にスマートフォン)対策です。私たちのクライアントのクリニックでは新患の7割ぐらいはスマートフォン経由で来院しています。患者がGoogleやYahooなどの検索エンジンで検索したとき、狙ったキーワードでクリニックが上位表示されるためのSEO対策やGoogleマップで上位表示されるためのMEO対策、病院なびやCalooなどのポータルサイトで上位表示されるためのポータルサイト対策などが重要です。美容クリニックなどの自費クリニックの開業の場合は、WEB対策に加え、FacebookやLineなどのSNS媒体の活用も重要になります。

集患

(6)クリニック・医院開業の診療効率化

今のクリニック・医院開業の診療効率化におけるキーワードはデジタル化です。電子カルテ導入にともなうクラークの採用・育成。WEBによる事前問診の導入や自動精算機による会計、疾患・薬の説明動画活用など、デジタルを使った診療効率化が今の主流になってきています。今後はAIによる事前問診や診療診断システムなどを活用した効率化も広まっていくでしょう。

(7)クリニック・医院開業後のスタッフマネジメント

クリニック・医院開業後のスタッフマネジメントの基本はミッション、ビジョン、バリューを作成し、それらに基づいたスタッフマネジメントを行うことです。そして、スタッフの成長とともに権限委譲を行い、スタッフがやりたいことをなるべく自由に行え、楽しく働ける職場環境をつくることです。また、働きやすい職場づくりとしては、残業がない、お子様の病気や学校行事のときにお休みを取りやすいなど女性の職場環境特有の働きやすさをつくることも忘れてはなりません。

(8)クリニック・医院開業前の評価制度

クリニック・医院開業前に評価制度を作成しておくと、賞与査定のときはもちろん、スタッフマネジメントにも大きな効果を発揮してくれます。評価制度の項目には先生のバリューを念頭に、どれだけミッション、ビジョン達成のためにスタッフが貢献してくれたかがわかるような評価項目を入れましょう。そうすることで、スタッフは先生に何を求めているのかを知ることができます。また、先生はクリニックに貢献してくれたスタッフを高く評価し、より多くの還元をすることもできます。

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