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一般的な内科クリニックの一日外来患者数は
今回のコラムでは、内科クリニックを開業しようと考えている先生、
また開業してからしばらく経っているが、なかなか患者さんの数が伸び悩んでいる先生にとって
興味深いテーマである、「外来患者数の目安」についてお届けいたします。
まず一般的に、平均的な内科クリニックがどのくらいの患者さんを診察しているのかを見ていきましょう。
厚生労働省が発表している「社会医療診療行為別統計(平成29年)」によると、
平成29年6月に内科クリニックに外来でかかられた患者さんの延べ来院数は、約3,600万人となっています。
※内科クリニックは季節変動が大きく6月は閑散期となりますが、一つのデータとしてご参照ください。
同じく厚生労働省の「医療施設調査(平成26年)」によりますと内科を標榜する診療所の総数は約64,000件ですので、
平均すると月あたり約562人、ひと月の外来診療日を21日とすると、
一日あたり平均して約26.8人の患者さんが診療所にかかられている計算になります。
もちろん季節変動の大きい内科クリニックでは冬場の繁忙期には患者さんの数は跳ね上がるかと思いますが、
一つの目安として
「閑散期の内科クリニックにおける平均外来患者数は一日25~30人程度である」
ということが考えられます。
一般的に内科クリニックの平均診療単価は5,800円程度ですので、先ほどの月間の来院数562人に
この単価をかけると、5,800円×562人=約326万円が月間の医業収入となります。
経営を安定させるために目指す外来患者数は?
では逆に、経営の安定化を目的として目指したい外来患者数という視点から見てみるとどうでしょうか。
仮に先ほどの6月の外来患者数を年間平均に当てはめると、年間医業収入は
326万円×12ヶ月=約3,900万円 となります。
ところが実際には、内科クリニックの平均外来収入は約7,600万円となっています。
※厚生労働省「医療経済実態調査(平成29年)」より
つまり先生方もご経験の通り、冬場の繁忙期は閑散期の何倍もの患者さんが来院されることによって
この収入が成り立っているということです。
※冬場の繁忙期に”診療効率”と”患者満足度”を両立させたい先生はこちらをご覧ください!
もちろん疾患に季節性がある以上、ある程度の繁閑の差は出てくるものですが、
「経営の安定化」ということを考えると、外来患者数が「季節性に左右される」というのは
非常に大きな不安定要素となります。
「安定した経営」を考える際には、計画に基づいたクリニック運営が重要です。
スタッフの人員配置、年間の収支計画、中長期の経営計画などを考えるにあたって、
上記のように季節要因、流行性疾患に大きく左右されるような患者構成が自院の外来患者の多く占めていると
当然計画は立てづらく、結果として行き当たりばったりの経営になりがちです。
先ほど、閑散期の内科クリニックにおける外来患者数の目安は25人~30人程度とお伝えしましたが、
ここで是非考えていただきたいのは先生のクリニックに来院されている患者さんが単純に平均値と比較して
多い、少ない、ということだけでなく、「どのような患者構成となっているか」ということです。
つまり風邪やちょっとした体調不良で一時的に来院される患者さんだけでなく、
”閑散期にも安定して継続通院してくれる外来患者さんがどれだけいるか”
ということが、内科クリニックの経営を安定化させるうえでとても重要なことです。
こういった外来患者さんの割合が増えてくることで、閑散期にも継続して通ってくれることから
繁閑の差を可能な限り埋めることができ、計画的な医院運営ができるようになります。
内科クリニックが「継続通院する外来患者」数を増やすためにすべきこと
それでは具体的に、閑散期にも継続して通ってくれる患者さんの割合を増やすには
どうすれば良いのでしょうか。
それは季節や流行性疾患に関わらず定期的に来院してくれる、
「生活習慣病」など「慢性疾患」の患者さんの集患対策を強化することです。
例えば循環器を専門とされている先生でしたら高血圧や脂質異常症、不整脈、
呼吸器を専門とされている先生でしたらCOPDや喘息、
他にも糖尿病や睡眠時無呼吸症候群、高尿酸血症などの患者さんが挙げられるかと思います。
※内科医院向け!睡眠時無呼吸症候群(SAS)集患強化のメソッドはこちら
こういった生活習慣病や慢性疾患の患者さんに対する治療は、一般的に薬物療法など
画一的になりがちなことから治療面での差別化が難しい一面があり、
患者さんも”家や職場から近いクリニック”を一番の選択基準にしがちです。
ここで立地だけでなく競合他院よりも自院を選んで来院していただくには、
「いかに情報を発信できているか」が重要です。
つまり「かかりつけ内科として何でも診ます」という発信だけではなく、
「特にこの疾患においては専門的に診ます」ということについて
検査や診断方法・治療方法などの情報をしっかりとホームページなどを用いて発信していただくことで、
「専門の先生に診てもらいたい」というニーズを満たす“立地以外での差別化”のポイントとなるのです。
この情報発信がしっかりでき、集患体制が築けていると、
だんだんと外来患者数に占める慢性疾患の患者さんの割合が増えてきます。
そうすると閑散期であっても安定して外来患者数が積み増しされることで繁忙期との差が縮まり、
安定的な経営を行えるようになってきます。
目安として、慢性疾患の患者さんだけで月間500~600人程度が
継続して来院してくれる体制を築くことができれば、
流行性疾患や季節の繁閑に左右されすぎない、安定した医院経営が目指せるのではないかと考えます。
ぜひ、今の先生のクリニックに来院されている患者さんの内、どれくらいの割合の患者さんが
慢性疾患として継続して通ってくれている患者さんか、を確認してみていただければと思います。
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この記事を書いたコンサルタント
川本 浩史
大手製薬・医療機器メーカーのMRを経て船井総合研究所に入社。
船井総合研究所に入社後は心療内科・内科診療所を中心にコンサルティング業務にあたっている。
前職では大学病院での消化器手術から療養病棟の輸液・栄養管理に至るまでそれぞれの臨床現場に入り込み、医療従事者と共に『より良い医療の提供』を実現するために邁進してきた。
臨床に近い現場で医師と対話を重ねてきた前職の経験を活かし、机上の空論とならず臨床現場に即したエビデンスのある実行策を提案している。