いつもめでぃまがをお読みいただきありがとうございます。船井総合研究所 医療コンサルタントの川本です。
今回は“診療効率化のポイント解説”というテーマにてお送りします。
■よくある“診療効率化”の勘違い
弊社では日々、様々な科目の医療機関様よりご相談をいただきますが、その中でも科目を問わず特に多いテーマが「診療の効率化」についての内容です。そして多くの場合に院長先生が最初におっしゃられるのが、「診療の効率化を進めると、患者さんから不満の声が出ないでしょうか」というご質問です。
ここで、「診療効率化」を進める際によくある勘違いについてお伝えします。
・短い診察時間では患者さんから充分に情報を得られず、診断があいまいになる
・診察時間が短くなると、患者さんに必要な情報が伝わらない
・医師と話す時間が短いことで患者さんからクレームが出る
・スタッフに大きな負担がかかり、離職につながる
これらは全て、「診療効率化」の本質を誤っていることから生まれる勘違いです。
確かに診療効率化の名目のもと、むやみに診察時間を短くする“だけ”では上記の現象につながる可能性があります。しかし診療効率化は適正に進めていただくと、患者さんの満足度を下げるどころかむしろ上昇させ、更にスタッフの定着率向上にまで寄与するものなのです。
■患者満足度を下げないためには
患者さんが医療機関を受診する際、最も不満に思うことは何でしょうか?一般消費者1,206名に聞いたアンケート調査によると、不満要素で最も多かったものは34%で「待ち時間が長い」ことでした(2015年3月 メディアコンテンツファクトリー調べ)。
診療効率化によって待ち時間が短くなると、それだけで患者さんの満足度は向上します。更に待ち時間の解消は院長先生やスタッフさんにとって残業・業務過多による疲弊を少なくし、心と体力の余裕を生み出してくれます。心と体力の余裕は患者さんへの接遇にも良い影響を与えますし、スタッフの離職率低下につながります。そしてスタッフの定着率が高まると長期視点での育成が可能になることでスタッフのレベルも上がり、医院全体の体制が強化されるという好循環となります。
逆に言うと、医療機関において起こっている多くのマイナス事象(待ち時間、接遇に対するクレーム、スタッフの疲弊・離職)は、実は“診療効率が悪いこと”が原因となって起こっていると言えるのです。
もう一つ、診療効率化を進めるうえで大切な視点としては、患者さんへの情報提供が充分であるか、ということです。先ほどお伝えした通り、診療効率化の名目のもと、ただ単純に診察時間を短くしただけでは患者さんにとって充分な情報提供ができず、満足度が下がってしまう恐れがあります。ですので診療効率化と患者満足度を両立させるためには、「効率化された状態であっても患者さんには充分な情報提供ができ、本人もどのような病気(検査・治療)なのかを理解できている」という診療体制を構築することが重要となります。
■患者満足度と診療効率化を両立させるための体制づくり
ではどうすれば患者満足度と診療効率化を両立させることができるのか、ポイントをお伝えします。
診療効率化のポイントを一言で言うと、「いかに院長(ドクター)の負担を少なくするかを突き詰める」ことです。つまり日々の業務を棚卸しした時に、「その業務は本当に院長(ドクター)にしかできないことなのか」を徹底的に検証していただきます。
例えば診断、処方薬の決定などは、必ず医師が行う必要があるものです。しかし診断の判断材料となる「問診」、毎回同じことを繰り返す「検査の説明」、「病気の説明」、「薬の飲み方」などは、本当に先生が行う必要があるものでしょうか?
特に問診は、通常診察時間の中で非常に大きな割合を占めている傾向にあります。問診票の有効活用、スタッフによる事前問診の導入などにより、患者さんが先生の目の前に座られてから「今日はどうしましたか?」と診察を始めることがないようにしましょう。
このように患者さんが来院されてからお帰りになられるまでの一連の動きの中で、医師でなくてもできることを看護師や受付スタッフ、あるいは説明ツールなどを活用しながら医院全体として対応することによって、“必要な情報収集・情報提供はしっかり確保しながらも、医師の診察時間を短くすることができる”診療体制を作りあげることができます。
また最近では予約システムや問診システムなど、医療機関を支援するITツールも数多く出てきています。これらも上手く活用していくことで、人手不足であってもスタッフの負担を減らしながら診療効率を高めることが可能ですので、ぜひ積極的に情報収集していただければと思います。
■内科クリニック向け 医療×IT導入 診療体制改革セミナー開催のお知らせ
さてこの度、3月31日(日)に内科医師が代表を務める「株式会社フリクシー」様が主催の『内科クリニック向け 医療×IT導入 診療体制改革セミナー』が東京にて開催されます。フリクシー様からは、診療効率化を実現するためのITツールとして、内科医師が開発した最新のWEB問診システムをご紹介いただきます。また船井総研からも最新の診療効率化の時流についてお伝えさせていただきますので、診療効率化を進めたいが自院でどう進めるべきか分からない、という内科クリニックの院長先生はぜひご参加ください!
・セミナーの詳細はこちらから
https://peraichi.com/landing_pages/view/8ylxx
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この記事を書いたコンサルタント
川本 浩史
大手製薬・医療機器メーカーのMRを経て船井総合研究所に入社。
船井総合研究所に入社後は心療内科・内科診療所を中心にコンサルティング業務にあたっている。
前職では大学病院での消化器手術から療養病棟の輸液・栄養管理に至るまでそれぞれの臨床現場に入り込み、医療従事者と共に『より良い医療の提供』を実現するために邁進してきた。
臨床に近い現場で医師と対話を重ねてきた前職の経験を活かし、机上の空論とならず臨床現場に即したエビデンスのある実行策を提案している。