循環器内科クリニックが2025年以降も持続成長するための医院経営のポイント

2019年06月26日 (水)

科目:
内科
コラムテーマ:
経営計画/経営管理

内科・循環器内科クリニックを取り巻く外部環境

厚生労働省の医療施設調査によると、内科全体の診療所数は平成11年に60,211件であったのに対し、平成26年には63,888件と約6.1%の増加となっています。
更にこの中から「循環器内科」だけに絞ると、平成11年に11,041件であった診療所数が平成26年には13,097件と、循環器内科を標榜するクリニック数はこの15年間で18.6%の伸びとなっており、内科全体の増加率を大きく上回っています。

一方で日本における総人口は、ご存知の通り2008年をピークに減少を続けています。
その中でも高齢者の数は増えていたため外来需要は増加していましたが、経産省の推計によると2025年には更なる高齢化、人口減少に伴い外来医療の需要もピークを迎えると言われています。
つまり外部環境から見る内科・循環器内科を取り巻く経営環境は、今までは需要が伸び続ける成長期であったのに対し、2025年を境に需要が減少していく転換期を間近に迎えている、ということが言えます。

このように需要(人口)が減少していく中で供給(循環器内科クリニック診療所数)が増加している状況で循環器内科クリニックが今後も継続して成長していくためには、いかにして「患者さんに自院を選択してもらうか」という発想が必要です。

 

患者さんに自院を選択して来院してもらうために

いかにして患者さんに自院を選択してもらうか、というのは、逆を言うと「患者さんは何を基準にクリニックを選択するのか」ということが分かっていなければ対策ができません。

一般の方1,206名を対象に医療機関を受診する際の意識調査をしたところ、受診するクリニックを選択する際に重視するポイントの1番は「自宅や勤務先から近いこと」、そして2番目は「専門性の高さ」でした。(株式会社メディアコンテンツファクトリー調べ:2015年)

既に開業している先生の場合、立地を今から戦略的に変えることは難しいケースが多いでしょう。
しかし「専門性」を認識してもらうのは、情報発信の工夫によって取り組みを強化することが可能です。
そしてここでしっかりと「専門性の高い循環器内科クリニックを探している」患者さんにアプローチができると、
多少遠かったとしても自院を選択して通ってくれることになるため診療圏は広がり、安定して患者さんを確保できることに繋がります。

逆に、専門性を上手く患者さんに受け取ってもらえていない循環器内科クリニックはどうなるでしょうか。
内科の一般的な診療圏は、地域にもよりますが1km~3kmほどです。
「立地」を理由に先生のクリニックを選定する患者さんはこの足元診療圏だけに限られるため、地域の人口減少とともにその母数は減っていきます。
また患者さんにとって専門性が明確ではないため、様々な疾患背景を持った患者さんの比率が高くなり、診療オペレーションの効率も悪くなります。

このような傾向は決して未来の話ではなく、既にいくつかの地域では見受けられるようになっています。
5年後10年後、またその先も継続して安定したクリニック経営を続けるためには、今から競合他院に先んじた対策を考えていく必要があるのです。

 

循環器内科の「専門性」を発信する手段

それでは患者さんに先生の「専門性」を受け取ってもらうためには、どのような対策をすればよいでしょうか。
結論を言うと、それはホームページ情報の充実です。

2017年の総務省のデータによりますと、今やインターネットの利用者数は60代でも約74%、70代でも約半数となっています。
同じく2008年時には60代で約半数、70代では約28%でした。
これは患者さんの行動をベースに考えると、健康診断等で何らかの異常が見つかる、もしくは他院にかかっているが病状が良くならない、などの理由があり受診すべきクリニックを探すときに、インターネットを用いて探す機会が非常に多くなっていることを示唆しています。

多くの循環器内科クリニックのホームページでは「診療内容」というページがあり、その中で対応できる疾患名が一覧で記載されているケースをよく見かけます。
しかしこれでは患者さんからすると、どの程度それらの疾患を専門的に診てくれるのかが明確に分かりません。

対してしっかりと情報発信ができているクリニックでは、疾患毎に独立した単独のページが存在し、病気の説明や検査・治療方法、療養時の注意点などが網羅して記載されています。
「専門的なクリニック」を探している患者さんにとって、どちらが選択されやすいかは明確でしょう。

特に循環器疾患、中でも特に患者数の多い高血圧や脂質異常症といった生活習慣病は、循環器内科に限らずどの内科でも一定の診療はできますし、自覚症状もないことから患者さんにとって受診自体の優先度も下がりがちです。
ホームページを用いて「循環器内科専門」ならではの情報発信を行うことにより、治療の必要性があること、専門の医療機関へかかるべきであることを啓蒙することが重要です。

 

これからも持続的に成長する循環器内科クリニックであるために

これまでご説明した通り、人口動態など外部環境の変化、またインターネットの急激な普及により、循環器内科クリニックを取り巻く環境は大きく変わってきています。
今までは開業した地域の足元診療圏の人々に対してクリニックの存在を広報できていれば患者さんは集まりましたが、多くの人が簡単に情報を取捨選択できるようになった今、広い地域の患者さんからも選ばれるクリニックとなるため、広報も戦略的に変えていく必要が出てきています。

このような中これからも持続的に成長する循環器内科クリニックであるためには、「専門性を明確に」し、インターネット等の「適切な媒体で広報する」ことが最初のステップとなります。
何を専門的なものとして広報すべきか、どのような内容を発信すべきかは地域によっても異なってきますので、ぜひ積極的な情報収集を行い、一日も早い取り組みをしていただければ幸いです。

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この記事を書いたコンサルタント

川本 浩史

プロフィール詳細

大手製薬・医療機器メーカーのMRを経て船井総合研究所に入社。
船井総合研究所に入社後は心療内科・内科診療所を中心にコンサルティング業務にあたっている。
前職では大学病院での消化器手術から療養病棟の輸液・栄養管理に至るまでそれぞれの臨床現場に入り込み、医療従事者と共に『より良い医療の提供』を実現するために邁進してきた。
臨床に近い現場で医師と対話を重ねてきた前職の経験を活かし、机上の空論とならず臨床現場に即したエビデンスのある実行策を提案している。

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