今こそ労働生産性の向上を!~クリニックにおける測定すべき重要な経営数値~

2021年07月15日 (木)

科目:
内科
コラムテーマ:
経営計画/経営管理 診療効率化

今回のテーマは下記に当てはまる方にはぜひお読みいただきたい内容です。

◆スタッフの数はこれ以上人件費的に増やせないが、利益を上げたい
◆生産性というワードを最近頻繁に耳にするようになったが、良く理解できていない
◆スタッフも医師も生産性を上げていきたいが、取組み方が分からない
◆働き方改革に着手したい

上記のような、お悩みやご希望がある方は、まずは本メルマガにて「生産性」について理解を深めていただき、
生産性対策立案の一助としていただけますと幸いです。

労働生産性とは?~働き方改革~

昨今の社会では、働き方改革が声高に唱えられています。
特に日本は労働時間が長く、しばしば問題として取り上げられている状況です。

まずはこちらのグラフをご覧ください。
企業規模別従業員一人あたり労働生産性の推移です。

中小企業の生産性は、今日のめまぐるしい情勢の変化にも関わらず、横ばいの状態です。特にクリニックは、この傾向が強いのが事実としてございます。その理由として、クリニックのスタッフ(事務や看護師)は企業の営業職などとは違い、そのまま雇い入れるだけでは売上に直結しないという特徴があるためです。加えて、新型コロナウイルスといった世の中の変化により、業務の質や量も変わってくるという点も特徴的です。

この特徴は下記のような「あるある問題」を引き起こす大きな要因となっています。
①スタッフを増やしても、人件費がかさんだだけでその分の医業収入が増えていない
②スタッフの残業が多くなってしまう
③医師に業務の負荷が集中してしまっている
④スタッフが意識すべき業務やKPI(目標数値)が明確ではなく、日々の業務がマンネリ化してしまう

このような課題をなんとか克服し、スタッフ一人一人の時間当たりの生産性を向上させることは、医業収入を伸ばすうえで必須な要素となります。
集患施策という「外側の施策」と並行して、「内側の施策」である生産性向上を狙っていくことができるかどうかが、これからのクリニック経営ではターニングポイントとなると考えています。

人時生産性とは

それでは上記のような、生産性を理解するために重要な指標として把握しておくべき「人時生産性」についてご紹介をいたします。
【人時生産性=粗利÷労働時間】という計算式で求めることができます。
しかし「粗利」という考え方は医療業界ではあまり一般的ではありません。さらに月次で粗利を管理しているクリニックも一般的ではありません。そこで簡単に把握ができる「売上(医業収入)」を元にした「人時売上高」という指標を使ってご説明いたします。

【人時売上高=売上÷労働時間】で計算することが可能です。この式から考えられる方向性は2つで、
①売り上げを増やす
②総労働時間を少なくする
このどちらか、または両方を取り組めばよい、というシンプルな構図となります。

もちろん同時に取り組むことがベストですが、それぞれ施策は取り組み方が全く別方向になります。まずどこから注力していくべきなのか決めることになりますが、これがまさにクリニックの戦術を決めることに他なりません。施策に優先順位を付けて取り組んでいく、という技術はクリニック経営において成功する重要なポイントです。

では具体的な施策として考えられるのはまず売上を伸ばす点から考えると

・保険診療の高算定の施術を実施する
・自費診療を展開する など

そして、総労働時間の削減は「省人化」「IT化」「資料化」を実施していくことがポイントです。

・WEB問診による診察時間の省略と、主訴の深堀り
・クラーク制度の導入による医師の負担軽減
・自動精算機やクレジットカード決済の導入
・予約システムによる患者コントロール

といった施策を実施していくことになります。

上記の施策は、当然ながら容易に実施できるものとそうでないものが存在します。
また生産性よりも追いかけるべき経営数値がある。という場合もあるかもしれません。

しかし、これからより一層労働人口が減っていき、労働者の確保が難しくなっていくと予想されている中で、現状のスタッフで売り上げを効率よく高めて、利益を追求していけるようにすることはリスクヘッジの観点からもとても大切なことになります。

生産性の停滞は、組織の成長の停滞を指します。
先が読みにくい情勢だからこそ、組織の地盤を固め、生産性を高めていきましょう。

まとめ

簡単ではございましたが、人時生産性(人時売上高)についてご説明をさせて頂きました。
医業収入の増加ばかりを追いかけていくと、いつの間にかこの労働生産性という観点は抜け落ちてしまっていることが多くあります。労働時間を可能な限り短くし、その時間の中でどれだけ売上に繋がる行動ができているかどうかが、これからの時代に合った経営の仕方になっていくのではないでしょうか。

以上のような手法を実践し、人時売上高を意識した診療を行って頂けますと幸いでございます。

より具体的な方策や、その実践方法について知りたい方はお気軽にお問い合わせください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

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この記事を書いたコンサルタント

長谷川 寿人

プロフィール詳細

大学卒業後、新卒として船井総研へ入社。
入社後は、主に人材開発・組織開発を中心に、不動産業界や士業業界にてコンサルティングに携わってきた後に、医療業界のコンサルタントへ。
組織のエンゲージメントを高めるマネジメント施策や、評価制度、研修、人事労務補助金対策などを得意としている。他科目のコンサルティングを経て、皮膚科・美容皮膚科が専門。
皮膚科保険診療においては基本の集患から、院内のキャパシティー増大のための診療効率化施策を展開。
美容皮膚科では、4p+1Cの原則に則り、適切かつ売り上げ最大化ができるような料金設定・機器選定・予約導線整備・販促強化を、自院の強みを最大限活かしてコンサルティングしている。
同時に院内の組織体制についても、クリニックに合わせたものにカスタマイズして実施している。攻めの施策・守りの施策両面から、クリニック経営を支えていく。

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