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高齢者対象にコロナワクチンの接種が始まってきました。
具体的な接種方法については自治体ごとに、集団接種のみ、個別接種のみ、それらのハイブリッド、と運用体系が大きく変わっています。本日のメルマガでは自院での個別接種を行っている、また接種対象が拡大した際に院内での個別接種を検討されている院長先生に、今からできる取り組みについてお伝えいたします。
ワクチン予約における大混乱
既に始まっている高齢者の接種予約受付では、現場において大混乱を招きました。電話予約を受け付けたクリニックでは電話線がパンクし、来院による予約を受け付けたクリニックでは開院1時間前には100人以上の行列が発生するなど、通常診療にも多大な影響が出るほどの混乱が起こっています。メルマガをお読みいただいている先生の中にも、こうした対応に追われた先生がいらっしゃるのではないでしょうか。
困ったことに、先生は“地域の方たちに貢献したい”という想いから個別接種を行おうと決意されたにも関わらず、こうした混乱によって、却ってクリニックに対してクレームをつける方も出ているような状況です。
これは、「高齢者だからネット予約などはできないだろう」「全ての人に平等にワクチンを受けてもらう機会を創出したい」という先生の真っすぐな想いが、裏目に出てしまった結果だと考えています。
では、ワクチン予約のオペレーションは今後、どうしていくべきでしょうか?
“予約受付”には明確な線引きを
結論を申し上げると、やはりワクチン接種はネット予約のみ、とすべきだと考えています。通常の診療でネット予約のみしか受け付けていないと困る方が多くいらっしゃるのは事実ですが、ワクチン接種予約は1回のみの話です。1回のみであれば、高齢者やネットが苦手な方であっても、ご家族に助けを求めることで予約ができる方が大半です。この場合、明確に「電話での予約はできない」ことを明言することが大切です。一部、どうしてもネット予約ができないかかりつけ患者さんについては、来院時にスタッフさんがネット予約を手伝ってあげることで対応も可能です。
もうひとつの線引きとして、「広く地域住民を受け入れるか」「かかりつけ患者さんのみにするか」という基準があります。これはクリニックの状況や地域の他院の状況によって最適解は変わりますが、先生が選択できる立場であるのであれば、「かかりつけ患者さんを優先する」ことをお勧めします。理由は2つあります。
①一つ目は、そもそも接種できる人数が限られていることがあります。配分されるワクチンの数、また時間的な制限もあり、希望する全ての人に自院でワクチンを打つことは不可能です。
②二つ目の理由は、キャンセル対応です。どうしても“ワクチンを確実に接種したい”という想いが先行し、どれだけ注意喚起をしたとしても、複数の予約を取ってしまう方は一定数存在します。そしてその割合は、かかりつけでない方に多くなることが容易に想像できます。ワクチンは数が限られたものですので、一人分でも無駄にできません。突然のキャンセルを未然に予防するためにも、ちゃんと接種いただける確率の高いかかりつけ患者さんを優先すべきであると考えます。
具体的な予約オペレーションは?
上記をふまえて、これからどのような予約オペレーションを構築していくべきか、お伝えします。
まず、かかりつけ患者さんのみに情報発信ができる媒体を準備しましょう。メルマガ等も可能ですが、最近は手軽な「LINE公式アカウント」を活用する場合が増えています。高齢者の次の接種予約開始までは期間がありますので、その間に受診されたかかりつけ患者さんに対して、「コロナワクチン接種の予約方法についてはLINEでお知らせします」と、登録を促すことがお勧めです。
そしてワクチン接種に関する情報は、原則として公式LINE以外には発信しないようにします。HP等で公開すると、偶然知った方が「どのように予約すればいいのですか」と電話で問い合わせてこられる可能性があります。また勘違いして、通常の診療予約の枠で予約を取られることも考えられます。よって、ワクチンの情報はLINEのみで配信し、かつLINEからしか予約ができない(リッチメニューで専用予約フォームを設置など)ようにするのが良いでしょう。
大切なのは、外来診療との両立
クリニックとして診療をしている以上、「全ての人に平等に」は不可能です。極端な話では24時間365日クリニックを開けることも不可能ですので、そもそも様々な制約が存在することを受け入れるしかありません。
何よりも大切なことは、ワクチン接種により“通常の外来診療が滞ってしまうことを防ぐ”ことです。当メルマガをご覧いただいている先生のクリニックでは、いわゆるコロナ感染の重症化リスクが高い、持病を持った患者さんが多く通院されているかと思います。ワクチン接種を優先することで、こうした患者さんへの治療が滞り、病状の悪化を招いてしまう、というのでは本末転倒です。
第一義として従来通りの外来診療を継続すること、そしてその上で時間的、人的、ハード面での余裕があればワクチン接種の対応を行っていく、というスタンスが非常に大切であると、私は考えています。そういった意味では、仮にワクチンの個別接種を行わなかったとしても、“かかりつけ患者さんの重症化を防ぐ“という外来診療に注力することは、地域の中でコロナと闘っていくクリニックの姿勢として、全く不自然ではないのではないでしょうか。
世間では様々な情報が飛び交うことで、患者さんも混乱し、不安を抱えています。クリニックとして対応できることはできる、でも対応できないことはできない、と明確に線引きをすることは、患者さんに次の選択肢を持ってもらうことにもつながります。ぜひ今日のメルマガもご参考に、先生のクリニックに合った方法を模索していただければ幸いです。
当社では、初回に限り1時間程度での無料相談を承っています。クリニックの現状をお伺いし、今後地域の中でどういった立ち位置で経営を進めていくべきか?コロナワクチンの接種オペレーションの方策も含め、お伝えさせていただきます。お困りの先生はどうぞお気軽にお声かけください。
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この記事を書いたコンサルタント
川本 浩史
大手製薬・医療機器メーカーのMRを経て船井総合研究所に入社。
船井総合研究所に入社後は心療内科・内科診療所を中心にコンサルティング業務にあたっている。
前職では大学病院での消化器手術から療養病棟の輸液・栄養管理に至るまでそれぞれの臨床現場に入り込み、医療従事者と共に『より良い医療の提供』を実現するために邁進してきた。
臨床に近い現場で医師と対話を重ねてきた前職の経験を活かし、机上の空論とならず臨床現場に即したエビデンスのある実行策を提案している。