オンライン診療、やるべきですか?私の答えは…
目次
いつもめでぃまがをお読みいただきましてありがとうございます。また新型コロナウイルス感染症に罹患された皆さま、および関係者の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
オンライン診療、やるべきですか?
『内科クリニックで、今からオンライン診療を導入すべきですか?』
これは、日々のコンサルティングや全国の内科クリニック院長からの無料相談でよくいただくご質問です。
私は、原則として「はい、導入すべきです」とお答えしています。
その理由について、オンライン診療の歴史を簡単に振り返りながらお伝えさせていただきます。
オンライン診療の歴史
元々、オンライン診療は『遠隔診療』として、2015年に初めてその仕組みが日本に導入されました。
しかしご存知の通り、制度面、システム面、運用面で様々な課題があり、「普及した」とは言えない状況でした。
オンライン診療の明らかな転換点は、やはり新型コロナウイルスの感染拡大でしょう。
不要不急の外出自粛が呼び掛けられる中、特に罹患リスクの高い高齢者や基礎疾患を持った患者さんが治療を継続するためにも、こうした仕組みの導入は喫緊の課題でした。
実際に制度としても初診からのオンライン診療が時限的緩和措置として認められたり、保険点数にも特別措置が設けられたりと、オンライン診療を活用する医療機関にとってもメリットがある仕組みが整えられました。
更に2022年の診療報酬改定によって、時限的緩和措置であった初診からのオンライン診療が恒常的に認められるようになり、診療点数も通常の外来診療と比較しても遜色ない程度にまで引き上げられました。
これまでオンライン診療が普及しなかった原因としては、診療の質が担保できないという臨床的な理由の他に
①そもそものニーズがない
②点数が低い(医療機関の売上が少ない)
③予約や会計など、診療前後のオペレーションが複雑
④患者さんがシステムを使いづらい
などといったことがありましたが、新型コロナを受けて①・②が、そしてここ数年、各企業が様々なサービスを展開することで③、④においても徐々に解決されてきていると感じています。
『オンライン診療』の未来の立ち位置は?
今後、更に様々な企業によって便利なシステムが開発されることで、ますますオンライン診療は利用しやすいものになっていくと思われます。
そのうえで、私がオンライン診療の導入をお勧めする理由として、以下の2つの切り口を挙げさせていただきます。
【2024年問題】
2025年問題、という言葉をお聞きになられたことのある先生は多くいらっしゃると思います。いわゆる「団塊の世代」が後期高齢者となり、医療需要の大きな変化が想定されており、外来需要がピークを迎え入院需要へと置き換わっていくとされる転換点です。
実はその前の2024年、医療業界においては「医師の働き方改革」という大きなイベントがあります。これは既に他業界では2019年より導入されている働き方改革において、医療業界では一気に働き方改革を進めることが難しいという理由から、導入が先延ばしにされていたものです。
詳しい説明は割愛いたしますが、この「医師の働き方改革」が施行されることにより、病院の勤務医の働き方が大きく変わり、端的に言うと「病院の医師不足」が発生、それに伴い医療資源の提供が縮小、病院の担う機能が制限される可能性があります。
つまり今まで以上に、病院と診療所の機能分化が進んでいく、という流れが加速されます。とは言え医師の絶対数が減るわけではないので、「病院の勤務医」という働き方から、「診療所の勤務医」という働き方が、今までよりも身近になってくると私は考えています。
もちろん地域によって大きな差が生じることではありますが、マクロ的には
1.病院の機能(特に外来)は縮小→クリニックの機能(特に外来)が拡大
2.軽症ならクリニックへ→入院以外はクリニックへ
3.病院の勤務医は減少→クリニックの勤務医が増加
という変化が想定され、自ずとクリニックが提供する医療も徐々に高度なものが求められてくることでしょう。
この時、「安定していますね、では同じお薬を出しておきますね」といった患者さんは、3.で増えるクリニックの勤務医にうまくオンライン診療を活用して担当してもらうことで外来受診枠に余裕を持たせ、より多くの、また治療単価の高い患者さんを受け入れられる体制ができるものと考えます。
【オンラインファースト】
コロナを境に、医療業界以外では”オンラインファースト”という概念が当たり前になりました。医療においても、この概念は非常に親和性が高いと私は考えています。ここで重要なのは、通常の外来診療と同じ水準をオンライン診療に求めないこと、つまりオンライン診療は外来診療の代わりではない、と考えることです。
今、医療の提供場所としては「外来」「入院」「在宅」の3つがあり、それぞれ違った役割を担っています。ここに4つ目の「オンライン」が加わることが、医療における”オンラインファースト”の意義ではないでしょうか。まずはオンライン診療でスクリーニングを行い、オンラインで完結する方はそのままオンラインで治療継続、詳細な検査が必要な方は外来受診へ、という棲み分けが、今後数年内に進んでいくものと予想しています。
オンライン診療導入の方法
いかがだったでしょうか。
あくまで個人的意見も含めてですが、そう遠くない将来には「オンライン診療」は今よりも身近なものとなり、外来診療と肩を並べるような立ち位置になってくるものと思っています。
今の内からオンライン診療に少しずつでも慣れておくことで、いざそういった時代が来た時にスムーズに対応ができる、という意味でも、早目に導入を検討しておくべきでしょう。
とはいえ、オンライン診療の導入には様々なハードルがあることも事実です。
お勧めは、時間を絞ること・疾患を絞って始めてみることです。診療時間の一部分だけ、お昼休みなど通常外来に干渉しない時間帯かつ患者さんが利用しやすい時間帯で、オペレーションが複雑化しないよう特定の疾患からスタートすることで、医療機関側の負担は最小限にすることができます。
目先の売上がすぐに上がる、という施策ではありませんが、近い将来のため、ご参考にいただけましたら幸いです。
さらに詳しく話を聞いてみたい、などございましたら、お気軽に無料経営相談をご利用ください。内科専門のコンサルタントが貴院の実情を踏まえ、アドバイスをさせていただきます。
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この記事を書いたコンサルタント
川本 浩史
大手製薬・医療機器メーカーのMRを経て船井総合研究所に入社。
船井総合研究所に入社後は心療内科・内科診療所を中心にコンサルティング業務にあたっている。
前職では大学病院での消化器手術から療養病棟の輸液・栄養管理に至るまでそれぞれの臨床現場に入り込み、医療従事者と共に『より良い医療の提供』を実現するために邁進してきた。
臨床に近い現場で医師と対話を重ねてきた前職の経験を活かし、机上の空論とならず臨床現場に即したエビデンスのある実行策を提案している。