医療法人社団ナイズ

医療法人社団ナイズ近年、新しい医療の在り方として予防医療への関心が高まってきており、医療機関が病気を治すことから、病気にかからないようにすることに意識が傾いてきている。
そして、この予防医療において先進的な取り組みをされているのが、今回、船井総研医療チームで取材を行った医療法人社団ナイズである。ナイズは代表である白岡亮平医師を中心に、都内に5医院展開をしており、各クリニックは小児科、内科を主要科目としている。代表は2012年に記念すべき西葛西院を開院した後、わずか5年で5院展開、そして法人内で医師を(非常勤含め)30名以上、スタッフ100名以上を雇用する一大組織にナイズを成長させた。
この驚異的なナイズの急成長には様々な要因が挙げられるが、この急成長を支えた大きな要因は、代表の積極的な予防医療への取り組みと、医療現場のIT化といえるだろう。

1、予防医療

医療法人社団ナイズ

(1)小児の予防医療

小児科医としてスタートした白岡代表が、子供の健康を考えた時に重要な要素として捉えたのが病気を未然に防ぐ予防医療である。代表は人々が子供の時から正しい生活習慣、食生活、睡眠、運動に取り組むことで、免疫力を高め、この健康的な姿勢を維持していくことこそが予防医療の原点であると考えた。そして、医療機関の展開や企業との連携を通してこの予防医療を広めていくことをミッションとして捉え始めたことが、ナイズの予防医療に向けた取り組みの第一歩となる。そして今回、ニューヨークに本部を置くセサミストリートを制作するセサミワークショップと提携し、エンターテインメントと医療を融合し、子どもたちに楽しく健康リテラシーを向上できるような新しいクリニックの環境づくりに取り組み始めた。

(2)大人の予防医療

まず、最初に予防医療の取り掛かりとして注力をしたのが、生活習慣病などを未然に防ぐことができる健康診断だった。当初、健康診断の対象は「大人」であったが、健康診断を実施していくにあたり、働く人々にこそ予防医療が必要であると考えた代表は、次第にナイズを働く人を支えるクリニックとして発展させていった。代表自身、ナイズの理事長でありながらヤフー株式会社を始めとする企業の産業医としての立場もあり、その立場やセミナー活動を通して、まだ健康な人々への予防医療普及に尽力している。
一般的なクリニックが地域にアプローチをしていく中で、代表はより健康な人にアプローチをするためには医療機関は企業に対してもアプローチをしていく必要があると考え、この医療機関と企業の関わりは今後の社会に求められる側面の一つであると主張している。
代表は予防医療の今後の更なる展開として、働く人の生産性を著しく低下させている花粉症に対する治療である舌下免疫療法への注力や医師監修の食事メニューの開発などを実践し始めているが、その中でも、健康スポーツ医のみが取り組める運動療法・運動処方箋の活用に特に力を入れようとしている。生活習慣病予防をメインとした運動療法とは整形外科的な処方とは異なり、生活習慣病など幅広い疾病の改善、予防も行うことができる方法だ。この運動処方箋を広く普及するために、運動療法施設との提携、そして設立を積極的に進め、医療控除の中で運動療法の利用ができる環境作りを進めている。医療機関がフィットネスジムなどと連携をすることで、食事指導、血液検査、心電図、骨密度測定など、幅広い医療情報をもとに患者様に運動プログラムを提供することができるようになり、患者様にとって自らの健康の変化を常に把握出来る環境は、継続的な通院や運動、つまり予防医療の実現に繋がるという。
ナイズの運動療法施設との連携の仕方には3種類ある。都内のフィットネスジムとの連携、ナイズの提携企業(メディカルフィットネスラボラトリー株式会社)が運営する施設との連携、そしてナイズが運営する医療法第42条施設との連携があり、幅広く多彩な形で運動療法を通した予防医療の普及に努めている。

2、分院展開・365日診療

医療法人社団ナイズ代表は予防医療を中心としたナイズのコンセプトをより社会に広く浸透させていくために、分院展開と365日診療にも力を入れている。現在都内に5医院展開をしており、今後も更なる分院展開を検討中だ。
分院展開と365日診療を実現させるために、多くのスタッフ、特に医師の採用が非常に重要になってくる中で、ナイズは現在、常勤医師7名、非常勤医師20~30名近くを雇用している。今後も更なる医師を採用するために、代表自身が医師向けのセミナーや学生向けのインターンなどを積極的に実施し、常に医師の採用の可能性を常に広げている。
代表は新しい分院を作る上で、患者様が医師個人だけを頼りに来院をするのではなく、医療機関という組織を頼りにして来院をしてくる、そのような医療機関作りを目指している。地域の健康リテラシーを高めるために、医療現場を健康について学ぶ場へと変化させていき、保険医療だけに頼る医療ではなく、人が健康に投資をする社会の実現を目指しているのだ。

3、IT活用

医療法人社団ナイズ

(1)診療効率化と医師の標準化

ナイズはITを医療現場に深く浸透をさせることで画期的な診療効率化を実現させた。
まずは、患者様の待ち時間短縮を目指したIT事前問診の取り組みである。ナイズではネットで事前問診をされた患者様に対して優先的に受診ができるようにしており、万が一患者様が問診を実施せずに来院された場合は、待合室でタブレットを用いて問診を行ってもらう。そのため、いずれの場合でも医師の診察が始まる時には電子カルテに事前問診の情報が自動的に記載されており、患者様にとって待ち時間の少ない快適な診療体制が実現できている。
また、分院展開や多くの医師を採用していく中で課題となる「医療の標準化」の解決に向けてITを活用した取り組みが行われている。
標準化の方法は至極シンプルで電子カルテ上に代表の治療方針を設定し、全ての医師に代表の治療方針を参考にしてもらう、というものである。電子カルテの中には治療方針の他にも、治療の説明方法や処方セットの詳細まで含まれており、この電子カルテのおかげで医師間の治療のズレが起こらなくなっているようだ。
ナイズはこのようなITを駆使した診療効率化、医師の標準化を行うことで、患者様の待ち時間の短縮、そして医療の質の維持を実現し、地域に貢献できる医療機関を生み出している。

(2)ドクター・スタッフマネジメントに活用

代表にはスタッフマネジメントにおいても、大切にしている考えが多々あるが、その中でも特に重視していることが、課題に対して「自分たちで話し合い、解決をすること」である。トップダウン型の組織が多い中で、ナイズではスタッフ主導型の組織であることを大切にし、全ての課題を自分たちの課題として捉えさせるボトムアップ型を維持することで、スタッフの成長を促すことを重要にしているのだ。
また、チャットワークとよばれるクラウド型のグループチャットを組織全体で活用し、スタッフの横の連携を強化することで、スタッフ主導型の組織体制の確立を進めている。スタッフ主導型×ITの職場が実現できる要素の一つに、スタッフ全員のITリテラシーが非常に高いことがあげられる。20代から60代のスタッフ全員がチャットワークやGoogle ドライブを使いこなしているという。
スタッフを含めた医療現場にここまでITが浸透している事例は全国を探しても類を見ないだろう。

4、さいごに

予防医療に対する取り組みの積極性とその幅広さ、ITの医療現場への活用、この2点においてナイズと肩を並べることができる医療機関はそうないだろう。医療業界の時流の最先端にいるといっても過言ではない医療法人社団ナイズから学べることは多く、今後もナイズの動向、そして白岡代表の活躍に注目をしていきたい。

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