医療法人社団みゆき会みゆきクリニック
東京都多摩市で開院している医療法人社団みゆき会みゆきクリニックの院長である辻野武氏が先代から医院を継承したのは2017年の事である。辻野氏はクリニックでは珍しい超音波内視鏡検査(EUS、以下EUSと表記する)も日々の診療と並行して行っている。全国でも先進的な医療を提供されている辻野氏に、今回お話をお伺いさせていただいた。
辻野氏が描く膵臓癌撲滅への想い
辻野氏は東京大学医学部附属病院とアメリカのカリフォルニア大学アーバインメディカルセンターで消化器内科医・内視鏡医として勤務していた経験を活かし、日米の最先端の知見を取り入れた医療を提供している。その一つにEUSが挙げられる。日本では主に大学病院や総合病院でEUSが行われており、クリニックレベルで導入している施設はほとんど無い。辻野氏は膵臓の精密検査としてだけでなく、原因不明の腹痛など様々な患者様に対して、”胃カメラ感覚”でEUSを行っている(検査時間は10分程度である)。さらに膵臓などの確定診断法である超音波内視鏡検査ガイド下穿刺細胞診(EUS-FNA、以下EUS-FNAと表記する)も外来で実施しており、近隣の大学病院や総合病院からも検査依頼がある。
膵癌を撲滅する為には、いかに初期の段階で膵癌を発見し適切な治療を行えるかが鍵となってくる。しかし膵癌は早期発見の難しい癌で、そのため予後が非常に悪い癌として認知されている。
早期発見が難しい要因としては、1)膵臓の画像診断の困難さ、2)膵癌の危険因子が明らかでないこと、が挙げられる。体外式超音波検査は簡便で、多くの医療施設で実施可能であるが、腸管ガスや脂肪のため膵臓自体の描出が困難なことがある。また腹部CTやMRI検査は膵臓の精密検査として行われるが、実施できるのは総合病院に限られている。EUSは、胃や十二指腸から観察するため非常に綺麗に膵臓全体を描出でき、また膵癌の診断能もCTやMRIよりも優れていると言われている。
膵癌の危険因子としては、近年、膵嚢胞、糖尿病、膵癌家族歴が注目されている。
辻野氏はこのような危険因子を有する患者様に対して、EUSを含めた画像検査を定期的に行って早期発見に努めており、クリニックではstageIの膵癌も発見されている。また些細な膵臓の変化(血中膵酵素の軽度異常や膵菅拡張、膵嚢胞など)も無視せずに、きちんと検査、フォローすることが膵癌を早期発見するために重要であると、辻野氏は強調している。
辻野氏は、地域の大学病院でもEUSを行っている。そこで辻野氏の手技を教えているそうだ。膵癌で苦しむ方が一人でも少なくなるよう、EUSの普及、EUSを行える医師の育成にも力を入れている。
辻野氏が描く診療コンセプトとは?
辻野氏は検査時に使用する機器一つ一つにもこだわりを持っている。EUS-FNAで使用する針も、アメリカ時代から愛用している通常よりも細い針を使用し、患者様がより安全に苦痛なく検査を受けられるよう細心の注意を払っている。内視鏡検査は辛いと思われる事が多い検査であるが、一度の内視鏡検査で患者様に不快感を強く与えてしまうと2度目の検査に躊躇してしまう方も多く、早期発見の機会を逃してしまうことになる。胃癌、大腸癌や膵癌で辛い思いをする方を一人でも減らしていく為にも、いかに苦痛無く快く内視鏡検査を繰り返し受けていただくかが大切となる。
辻野氏はこのように患者様を配慮した治療を行っている。
また辻野氏はEUS-FNAを受けられた患者様に電話をかけて、検査翌日の体調に変化をきたしていないかを自ら確認している。どんなに診察や検査で忙しい中でも、この電話掛けは徹底して行っている。辻野氏の患者様を第一に考える診療スタイルはやはり地域のコミュニティーでも広まり、その口コミを聞いた患者様が辻野氏の元まで足を運んでくるそうだ。
辻野氏の考える今後のビジョンとは!?
膵癌は胃癌や大腸癌と同じく、癌のごく初期に発見が出来れば5年後生命予後は決して悪くはない。しかし、膵癌の早期診断に有用なEUSを行える医師は少ない。この現状では、日本から膵癌を撲滅する事は難しいだろう。こうした現状を背景に据えて辻野氏は、EUSをクリニックでも行える医師を一人でも多く教育していく必要性があると話されていた。
膵癌は決して不治の病ではない。医療を適切に提供できる環境が整えば膵癌で苦しむ方を減らす事は可能である。日本では広く普及していないEUS領域を、日米の先端施設で学んだ知見を活かして辻野氏に牽引していただきたく願っている。
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