公立豊岡病院組合立 豊岡病院日高医療センター

今回、兵庫県豊岡市で糖尿病をはじめとした生活習慣病の治療に尽力されている公立豊岡病院組合立 豊岡病院日高医療センターの田中愼一郎院長、小松素明医師、そしてリハビリテーション科の井垣誠科長(理学療法士)にお話を伺った。

公立豊岡病院組合は、豊岡市と朝来市の2つの市で構成される病院組合であり、豊岡病院、日高医療センター、出石医療センター、朝来医療センターの4つの病院を有する。豊岡病院は急性期医療を担い、ほか3つの医療センターはそれぞれの地域のニーズに合わせた医療が提供されている。日高医療センターは人工透析センター、眼科センター、健診センターを有し、また訪問看護ステーションを設置して地域包括ケアシステムの医療拠点としての役割を担う。

日高医療センターの特色の一つとして、1968年からの豊岡市日高町循環器健診を基盤とした高血圧、動脈硬化に対する研究・治療の伝統を引き継ぎ、生活習慣病への積極的な取り組みが続けられている。その一つとして、2002年に運動療法の指導を行なう「ライフスタイル外来」が開設された。この外来は、生活習慣病患者に対する通常の診療およびリハビリ室を利用した通院型の運動療法を実施するものである。運動療法の処方に基づき、理学療法士の指導が行き届いた運動療法が実践されている。

運動療法は内科疾患の治療に効果的であることを伝えていきたい

日高医療センターのスタッフ間では、生活習慣病治療の核心は、「いかに患者さんが栄養・運動で自己管理を継続できるか」という共通認識がある。そのため、生活習慣病治療は医師だけではなく、看護師・管理栄養士・理学療法士・薬剤師等のコメディカルスタッフの役割が重要であると田中院長は語る。

田中愼一郎 院長

近年、強度が軽い運動でも効果が認められ、また、運動は生活習慣病だけでなく、がんや透析患者など多くの内科疾患に有効であることが示され始めている。「運動療法は多くの患者に対して日常生活動作能力の向上や健康寿命の延長に貢献できると思われるため、きちんとした検証・研究を行い、運動療法の効果を示していきたい」と田中院長は意欲的だ。

また、田中院長は運動療法の処方において、リスク管理の重要性を強く訴える。日高医療センターでは、運動療法開始時は一般的なメディカルチェックに加え、心肺運動負荷試験や動脈硬化検査等を行って安全な負荷強度を決定している。そして月に1度の診察では、治療に対する動機付けを高めるため、血液検査結果の説明と合わせて行動変容を促す説明を行う。そのため、利用者は自らの病態を自覚し、安心して運動療法に取り組むことができるのである。

ライフスタイル外来の流れ

 

運動療法を利用者が継続するためのポイント

2002年にライフスタイル外来を開設してから総利用者数は280名に達し、一時、1日50~60名の患者が利用するようになった。そして、この取り組みは、テレビや新聞で取り上げられるほど注目された。

和やかな雰囲気のライフスタイル外来の様子

10年以上週2~3回の頻度で通っている利用者も20人にのぼる。2007年より運動を続けている利用者の一人は、「運動を一人でするよりも、誰かと一緒にできるほうが楽しくて良い。ずっと通っていると、顔なじみになる人もいるので、行かないとさみしいね。」と、運動を共にする仲間がいる環境こそ運動継続の秘訣であると語る。

また、小松医師は、診察で運動継続できていることに対して利用者を褒め、運動の効果を明示することも運動療法の継続にとって重要であると語る。

地域を巻き込んだ生活習慣病予防の取り組み

日高医療センターでは、豊岡市の糖尿病対策推進事業の一環としての役割も担う。その一部として、病診連携のほか、豊岡市健康増進施設「ウェルストーク豊岡」との連携を行っている。その内容としては、生活習慣病の治療で通院されている患者に、ウェルストーク豊岡を紹介し、運動指導・体力測定を依頼している。

内科疾患治療に対するさらなる運動療法の可能性

リハビリテーション科の井垣科長は、生活習慣病における運動療法の特徴は、「運動療法には、他の治療にはない達成感、すなわち自分が実践したことに対する成果を感じられること」と語る。

井垣誠 科長

従来から、運動療法はウォーキングや自転車こぎなどの有酸素運動を20〜60分行うことが推奨されている。しかし近年では、このような計画的な運動だけでなく、家事や仕事などの生活活動における身体活動量の増加も重要視されている。また、身体不活動の概念において1日の座位時間の多さが2型糖尿病や心血管疾患の発症と関連することが報告されている。言い換えれば、座位時間を短くさせ、少し立って歩くだけでも運動療法としての効果が期待できる。このように運動療法を行うということのハードルは下がっているものと考えられ、運動療法が適応とされる患者の範囲は拡大している。

また、井垣科長は生活習慣病患者に対する運動療法において、内科医と整形外科医の連携の重要性を訴える。生活習慣病患者では、変形性膝関節症や腰痛症など運動器疾患を有していることが多い。そのため、整形外科医からみた運動の適否の情報を受け、障害のある運動器に負担をかけない運動の方法を考案し、患者に提供している。

医療機関内の診察・治療に留まらず、行政や他施設との連携を図ることや、運動療法の効果を国際的な学会誌に掲載されるよう学術活動にも精力的に取り組む、公立豊岡病院組合立 豊岡病院日高医療センターの田中愼一郎院長、小松素明医師、そしてリハビリテーション科の井垣誠科長。

今後も豊岡市を中心に地域を巻き込んだ、生活習慣病予防のため、今後も精力的に活動をされていくことだろう。

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