2025年に向けた医療介護の一体化改革が進む中で、「惑星直列」といわれる2018年度の診療報酬・介護報酬の同時改定は大きなメルクマールとなります。
各種セミナーや勉強会が開催されていますが、「ボリュームが多すぎて、何がポイントなのか良く分からない」「結局、どうすれば良いか良く分からない」という方も多いのではないでしょうか?
そこで、本連載では、弊社の病院経営研究会で常任講師を務めて頂いています、株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高 氏と、地域包括ケア支援部部長の北里淳が「日本一わかりやすい2018年度診療報酬改定」を目指して、対談致します。
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高 氏 |
船井総合研究所 地域包括ケア支援部 部長 北里 淳 |
(社医)河北総合病院、(医)亀田総合病院分院等の合計18年間にわたる病院勤務を経て99年より現職。専門は診療報酬側面からの病院経営戦略立案。『日経ヘルスケア』好評連載中 | 医療機関のコンサルティングに10年以上の経験を持つ。医療・介護分野全体を統括し、病院経営を中心として現場主義を徹底し、クライアントの業績アップ、幹部育成などのマネジメントを行っている。 |
第2回:地域包括ケア病棟においてサブアキュートを評価
北里 先日、点数表がリリースされました。今回の改定は入院料の大改革となりましたが、地域包括ケア病棟についても入棟経路による段階的な点数が設けられましたね。
工藤氏 今までは、7対1を持つ病院が地域包括ケア病棟を設置してポストアキュート(急性期後)患者に転棟を行うといったポストアキュート機能が地域包括ケア病棟運営の中心的な運営法でした。今回の改定で、サブアキュート(直接入院)機能を有する地域包括ケア病棟を評価する形で、許可病床200床未満病院に限定して(新)地域包括ケア病棟入院基本料1が設置されました。
北里 地域包括ケアシステムの構築を1丁目1番地と位置付けていることから考えれば、必然の流れですね。
工藤氏 また、今回の改定には、
① 急性期病院のポストアキュート機能としての地域包括ケア病棟はもっと増やす必要があるため点数(2558点)としては据え置き、引き続き7:1急性期から地域包括ケア病棟への転換を促していく。
② また、地域医療完結の考えに基づき、合わせてポストアキュート機能を強化していく
という2つメッセージがあると思います。今後もポストアキュート機能を担う地域包括ケア病棟は増えていくと思いますし、サブアキュート機能を担う地域包括ケア病棟を有し、地域との連携を深めていく中小病院の転換も増えていくと思います。
北里 今回、新設された地域包括ケア病棟入院基本料1は許可病床数200床に限定されていたり、在宅(訪問診療、訪問看護、介護保険の訪問介護、訪問リハetc)などの要件が加わっていることから考えると、地域の200床未満の中小病院が進むべき新たな道筋が示されたとも言えますね
工藤氏 同じ地域包括ケア病棟でも、『急性期病院のポストアキュート機能』と、『急性期機能を含んだサブアキュートかかりつけ型病院』の役割分担がより明確に定義された格好ですね
北里 分かりやすく言うと、これまでの地域包括ケア病棟入院基本料1が、新基準の入院基本料2になり、新基準の入院基本料1は、サブアキュート比率が一定以上で、訪問診療・訪問看護という在宅機能をやっていて、という国が推奨する地域包括ケア病棟のモデルのイメージですね。
要約:地域包括ケア病棟の新基準(イメージ:詳細は下記)
入院基本料1 | 国が推奨する地域包括ケア病棟のモデルケース サブアキュートが10%以上あり、訪問診療・訪問看護を実施。在宅復帰率も70%以上 |
入院基本料2 | これまでの入院基本料1は、ここに該当 |
入院基本料3 | サブアキュートが10%以上あり、訪問診療・訪問看護も実施しているが、在宅復帰率70%以上が |
入院基本料4 | これまでの入院基本料2は、ここに該当 |
工藤氏 ええ。さらに1は終末期における看取りの指針を構築しておく必要があります。そうですね。船井総研のお付き合い先の病院は、サブアキュートに強いところが多いので、新基準の1を狙えるところもあるのではないですか?
北里 そう思います。また、このような改定に備えて、訪問診療・訪問看護も強化して来ていますので、追い風になるところもあると思います。
サブアキュートを強化するのは、船井総研のお家芸みたいなものですが、今後はますます力を入れていきたいと思います。
地域包括ケア病棟入院料
[施設基準]
(1) 通則
イ) | 当該病棟(入院医療管理料1、2、3及び4にあっては、当該病室を有する病棟。)において、1日に看護を行う看護職員の数は、常時、当該病棟の入院患者の数が 13 又はその端数を増すごとに1以上であること。 |
ロ) | 当該病棟(入院医療管理料1、2、3及び4にあっては、当該病室を有する病棟。)において、看護職員の最小必要数の7割以上が看護師であること。 |
ハ) | 一般病棟用の重症度、医療・看護必要度Ⅰの基準を満たす患者を1割以上、又は一般病棟用の重症度、医療・看護必要度Ⅱの基準を満たす患者を 0.8 割以上入院させる病棟又は病室であること。 |
ニ) | 当該保険医療機関内に在宅復帰支援を担当する者が適切に配置されていること。 |
ホ) | 当該病棟又は病室を有する病棟に常勤の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が1名以上配置されていること。 |
ヘ) | データ提出加算の届出を行っていること。 |
ト) | 特定機能病院以外の病院であること。 |
チ) | 心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、廃用症候群リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料、呼吸器リハビリテーション料又はがん患者リハビリテーション料に係る届出を行った保険医療機関であること。 |
リ) | 地域包括ケア入院医療を行うにつき必要な体制を有していること。 |
ヌ) | 病院の一般病棟又は療養病棟の病棟(入院医療管理料1、2、3及び4にあっては病室)単位で行うものであること。 |
地域包括ケア病棟入院料1の施設基準
イ) | 当該病棟において、退院患者に占める、在宅等に退院するものの割合が7割以上であること |
ロ) | 当病室の床面積は、内法による測定で、患者1人につき、6.4 平方メートル以上であること。 |
ハ) | 許可病床数が 200 床未満の保険医療機関であること。 |
ニ) | 当該病棟に入棟した患者のうち、自宅等から入棟した患者の占める割合が1割以上であること。 |
ホ) | 当該病棟において自宅等からの緊急入院患者の受入れが3月で3人以上であること。 |
ヘ) | 以下の a、b、c 又は d のうち少なくとも2つを満たしていること。 a. 当該保険医療機関において在宅患者訪問診療料の算定回数が3月で20 回以上であること。 b. 当該保険医療機関において在宅患者訪問看護・指導料、同一建物居住者訪問看護・指導料又は精神科訪問看護・指導料Ⅰの算定回数が3月で 100 回以上、又は同一敷地内の訪問看護ステーションにおいて、訪問看護基本療養費又は精神科訪問看護基本療養費の算定回数が3月で500 回以上であること。 c. 当該保険医療機関において、開放型病院共同指導料(Ⅰ)又は(Ⅱ)の算定回数が3月で10 回以上であること。 d. 介護保険における訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、介護予防訪問看護又は介護予防訪問リハビリテーション等の介護サービスを同一敷地内の施設等で実施していること。 |
ト) | 当該保険医療機関において、厚生労働省「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、看取りに対する指針を定めていること。 ※上記(2)のニ、ホ、へ及びトが、「診療実績の評価」に係る新たな要件。 |
地域包括ケア入院医療管理料1の施設基準
イ) | 当該病室において、退院患者に占める、在宅等に退院するものの割合が7割以上であること。 |
ロ) | 当該病室に入室した患者のうち、自宅等から入室した患者の占める割合が1割以上であること。(当該病室が 10 床未満の場合については自宅等から入室した患者を前1月において1人以上受け入れていること。) |
ハ) | 当該病室において自宅等からの緊急入院患者の受入れが3月で3人以上であること。 ニ (2)のロ、ハ、へ及びトを満たす医療機関であること。 |
地域包括ケア病棟入院料2の施設基準
(2)のイ及びロを満たす医療機関であること。
地域包括ケア入院医療管理料2の施設基準
(2)のロ及び(3)のイを満たす医療機関であること。
地域包括ケア病棟入院料3の施設基準
(2)のハ、ニ、ホ、ヘ及びトを満たす医療機関であること。
地域包括ケア入院医療管理料3の施設基準
(2)のハ、ヘ及びト並びに(3)のロ及びハを満たす医療機関であること。
地域包括ケア病棟入院料4の施設基準
通則の施設基準を満たす医療機関であること。
地域包括ケア入院医療管理料4の施設基準
通則の施設基準を満たす医療機関であること。