Table of Contents
議論の焦点は「急性期らしさ」の追求
今回、分科会で示された最大の論点は、いわゆる「7対1病棟」である「急性期一般入院料1」の要件厳格化とその影響についてです。
現在、「急性期一般1」を維持するためには、「平均在院日数16日以内」「重症度・医療・看護必要度」の基準をクリアし続ける必要があります。しかし、高齢患者の増加による在院日数の長期化などにより、この基準を維持できず、脱落する病院が増えています。
ここで問題視されているのが、基準をクリアできなくなった病院の動向です。
「急性期一般1」から、段階的に基準が緩やかになる「2」や「3」へ移行するのではなく、一気に基準が大幅に緩い「急性期一般4」以下や「地域一般入院料」へ移行するケースが目立っています。
つまり、中途半端な「急性期2・3」が機能不全を起こし、入院医療が「高度急性期(急性期1)」と「それ以外(地域密着型・慢性期)」に二極化しつつあるのが現状です。
厚労省が描く「あるべき姿」
こうした現状に対し、厚生労働省は今回のたたき台で、以下のような方向性を示唆しています。
1.「急性期一般1」はさらに厳格化:より「急性期らしい」医療を提供する病棟へと純化させる。
2.「急性期一般2・3」の見直し:存在意義が薄れているため、廃止や統合を含めた抜本的な見直しを検討。
3.地域包括ケア病棟の役割強化:ここが重要です。高齢者の誤嚥性肺炎や尿路感染症、脱水といった救急搬送が増加している現状を踏まえ、地域包括ケア病棟に「高齢者救急の受け入れ機能(サブアキュート機能)」を付与・評価する方向が検討されています。
消化器内科クリニックへの影響と対策
では、この流れは消化器内科の先生方の診療にどう影響するでしょうか。最大のポイントは「連携先の機能変化」です。
1. 紹介先病院の「立ち位置」が変わる
先生方が普段、ESDや緊急内視鏡のために患者さんを紹介している病院は、今後どちらの道を選ぶでしょうか。 「急性期1」を死守するために、より重症・緊急性の高い患者にターゲットを絞るようになるかもしれません。逆に、地域密着型へシフトし、地域包括ケア病棟を主軸にする病院へ変わる可能性もあります。
連携病院がどの方向を目指しているのか、日頃のコミュニケーションを通じて情報収集しておく必要があります。
2. 高齢者救急の連携ルートが変わる可能性
消化器内科では、吐血・下血や胆管炎などの緊急対応に加え、高齢者の食欲不振、脱水、誤嚥性肺炎などを診る機会も多いかと思います。
これまでは、こうした高齢患者さんも含めて「とりあえず急性期病院へ紹介」というケースが多かったかもしれません。しかし今後は、国の方針として「高齢者の軽~中等症救急は、地域包括ケア病棟が診る」という流れが加速します。
もし、近隣の病院が地域包括ケア病棟での救急受け入れ体制を強化した場合、新たな連携が構築される可能性があります。
まとめ
まだ議論は始まったばかりですが、大きな方向性として「急性期病院は、より高度な医療に特化する」「高齢者の一般的な急性期疾患は、地域包括ケア病棟などで受け止める」という機能分化がさらに強力に推進されることは間違いありません。
地域の病院が今後どのような機能を担おうとしているのか。その変化をいち早く察知し、自院のポジショニングや連携戦略を微調整していくことが、今後の安定したクリニック経営において重要になってきます。
同じテーマで記事を探す
この記事を書いたコンサルタント

津田真里亜
大学卒業後、新卒で船井総合研究所に入社。
大学では開発経済学を専門とし、途上国で暮らされている方々のことを学ぶ中で、地域社会における医療の役割の重要性を知り、医療を通じた社会貢献をしたい想いを持つ。
医療コンサルティングを通して一人でも多くの患者様へ医療を届けるために、心療内科を中心に、内視鏡内科・歯科・耳鼻科・整形外科と幅広い領域のコンサルティングを行っている。また経営者に寄り添うことを大切にし、長期的な目線で経営コンサルティングを行うことを心がけている。


