医療法人財団 神戸海星病院

医療法人財団 神戸海星病院

1871年に「神戸万国病院」として開院した、神戸市灘区の六甲の高台にある神戸海星病院、そのエントランスや総合受付はホテルのように高級感あふれる綺麗な病院だ。医療従事者の質に関しても地域住民から高いものを求められてきた同院は、上質な医療を提供できる体制づくりに励み、開設以来長い歴史の中で、ハード・ソフト両面において常に患者さんを第一に考え、地域からの信頼を得られるよう病院運営に取り組んできた。

同院は、 176床（うち地域包括ケア病棟：60床）の病院で、近くには特別養護老人ホームやセコムが運営する介護付き有料老人ホームがあり、密接な医療連携を行っている。2014年に河野理事長が立ち上げた乳腺外科のほか、眼科、整形外科、消化器内科・外科に力を入れており、中でも整形外科の患者会の会員数は約4千人にのぼるという。診療科においてはリウマチ・人工関節センター、アイセンター、消化器病センター、糖尿病センターなどのセンター方式を取り入れ、例えば消化器病センターでは、内科と外科が相互協力して診療を進める体制をとっているほか、内視鏡検査では、鎮痛剤と鎮静剤を少量静脈注射し、繊細かつ愛護的に内視鏡を操作することで痛みがほとんどないことが好評になり、リピーターも多く、大規模病院にも劣らない検査数をこなすまでになっているそうだ。その他にも看護師による専門外来、訪問看護ステーションなど、地域ニーズに沿った様々な取り組みを行っている。さらに特徴的なのが、外国人のための病院として設立された歴史もあり、外国人ボランティアが積極的に参加し、外国人患者さんのために、受付での案内や病棟でのサポートを行っている。また、ビザ健診のためのカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの大使館指定病院という珍しい病院でもある。

乳がん治療

乳がんは大規模病院ではなくても十分に診療が可能で、乳腺専門クリニックの中には年間に100-200例ほど手術をこなしている施設もある。患者さんにはコンパクトな病院のほうが個々それぞれの希望、要望に沿った医療を提供でき満足度の高い診療ができるという面もある。大規模病院の中には、患者さんの顔の識別ができなくなることを避けるために患者数を制限している病院もあるそうだ。
　河野理事長が乳腺外科を開設した当初、インターネット等でその存在を知り受診する人はおられたが、灘区では地盤がゼロだったため、当時は患者さんが少なかったようだ。診療科立ち上げ時から、ホームページ強化などWEB戦略を行い、理事長監修本非売品「乳がんのおはなし」をダウンロードコンテンツとするなどして乳腺科の存在の周知を行っている。また、患者さんの日常の諸問題を緩和するために患者会を大切にしており、乳がん患者さんに寄り添う医療を実践している。数ではなく、質で患者さんの満足度を中心に乳がん医療を行っている。
　がんに対する緩和治療は診断を下した時点から始まり、患者さんと医療者は伴に長い道のりを歩くことになると河野理事長は語っていた。そのためまず患者さんが悩みを相談しやすい環境作りの為、患者さんとの付き合いを密にするためにも乳腺チームを形成し外来看護師のローテーションを極力少なくし外来看護師の固定を行っている。そうすることで看護師も乳がん患者さんの状況把握、乳癌治療へのモチベーションも上がり質が良くなってきている。神戸の山手にある病院の特性からも、地域の患者さんからの理解が得られやすく、病院へのニーズに合っていた。今では年に１-２回行う市民公開講座は2～300人、年4回の患者会は5-60人の参加者が集まるという。さらに独自の取り組みとして、最近のアメリカの研究で効果が実証されている抗がん剤に伴う副作用軽減のため病院内に設けた鍼灸院に行ってもらい効果を上げているという。また、放射線治療等が必要な場合は、提携先の神戸低侵襲がん医療センターに行っていただき密な医療機関連携も実施している。

今後の病院展開

昨年開設した地域包括ケア病棟は、主に整形外科と内科がリハビリテーション目的などで利用している状況だ。今後、高齢者疾患に積極的に取り組むとともに、院外から、在宅の急性増悪の患者さんやレスパイト入院、糖尿病の教育入院などを受け入れ、診療所との連携を強化していきたいとのこと。その中で、診療所の先生たちにも地域包括ケア病棟の利用方法を周知していき、地域のかかりつけ医と密接に協力し合える環境づくりを目指していくと語っていた。