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まずはクリニックのコンセプトを確立し、本院と分院のそれぞれが目指すべき方向性を明確にします。そのうえで、分院長となる医師や現場のスタッフを充足させ、権限の整理を明確化しておくことが求められます。
1. クリニックコンセプトの確立:多角化の「羅針盤」を作る
分院展開において最も重要なのは、本院と分院それぞれが目指すべき方向性を明確にする「クリニックコンセプトの確立」です。
コンセプトが曖昧なまま規模だけを拡大すると、各分院がバラバラの方向を向き、法人のブランディングが崩壊します。多くの医療法人が2院、3院と拡大する過程で、スタッフの離職やサービスの質の低下といった「成長痛」に苦しむのは、組織の設計図が1院経営の延長線上のままだからです。
これを防ぐためには、まず「法人の理念(共通の価値観)」と「各クリニックの役割」を定義する必要があります。
本院は「かかりつけ内科」で分院は「内視鏡特化」のように、それぞれが相互に補完し合う関係性を明確にすることで、患者は「どの院に行けば、どのような医療を受けられるか」を直感的に理解できるようになります。また、スタッフにとっても「自分たちの存在意義」が明確になり、組織への帰属意識が高まります。コンセプトは、多角化しても医療の質を均一に保つための「羅針盤」となります。
2. 医師とスタッフの充足:採用から「選ばれる組織」への転換
コンセプトが固まった次に直面する課題は、それを実行する「医師と現場スタッフの充足」です。分院展開の成否は、事実上「良い分院長を確保できるか」に懸かっています。
現代の医療業界において、単に高い給与を提示するだけでは優秀な人材は集まりません。特に分院長候補となる医師は、自身のキャリア形成や働きやすさを重視します。以下の3つの視点で「選ばれる組織」を作る必要があります。
キャリアパスの提示
「一生雇われの院長」ではなく、将来的な分院の承継、あるいは法人の理事としての経営参画など、医師の野心やライフステージに応じた出口戦略を提示すること。
採用のミスマッチを防ぐ
確立したコンセプトを前面に出し、スキルだけでなく「理念に共感できるか」を基準に採用を行います。
これにより、分院展開時に起こりがちな「院長と法人のミスマッチ」を未然に防ぐことができます。
3. 権限の整理と明確化:ガバナンスと自律性の両立
最後にして最大の難所が、「権限の整理」です。理事長がすべての決定権を握り続けると、分院が増えるにつれて経営判断がボトルネックとなり、現場のスピード感が失われます。逆に、すべてを分院長に任せきりにすると、法人の統制が効かなくなるリスクもあります。これを解決するには、組織図において責任境界線を明確に引くことが不可欠です。
「何を決めてよくて、何を相談すべきか」を明文化した権限規定を作成し、それを組織図と連動させることで、理事長がいなくても円滑に回る「自律型組織」への転換が可能になります。
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