かかりつけ医機能報告制度でこれからどう変わっていくのか?

2025年12月09日 (火)

2024年までの評価体制の限界と
「報告制度」の運用開始

日本の外来医療におけるかかりつけ医機能の評価については、これまで「地域包括診療料・加算」や「機能強化加算」などの、主に「体制整備」や「要件充足」に対して評価する形で運用されていました。しかし、これらの点数の算定は伸び悩み、本当に質の高いかかりつけ医機能を患者に提供できているのかの実態把握は困難でした。

この課題を解決するために医療法が改正され、2025年4月から「かかりつけ医機能報告制度」が施行されました。これは、すべての病院や診療所が、自院がどのようなかかりつけ医機能(17診療領域・40疾患への対応、24時間対応、介護連携、情報提供など)を患者に提供しているかを2026年1月〜3月に都道府県へ報告する制度となります。

そもそも、かかりつけ医機能報告制度が
創設された背景とは?

かかりつけ医機能報告制度は、「高齢化社会における国民の医療の質と利便性の向上」を目的として創設されました。そして、その目的達成に向けた手段として「かかりつけ医機能の見える化」「患者による選択支援」「地域での機能確保・強化」があげられています。2026年度の診療報酬改定では、この報告制度の結果が、医療機関への評価に具体的に反映されることになると予想されています。

2026年度の診療報酬改定で
かかりつけ医制度がどう変わっていくのか?

2026年度の診療報酬改定の最大の焦点は、この「かかりつけ医機能報告制度」で集まった情報を、診療報酬体系にどう反映させていくのかという点になります。単なる「報告」で終わらせず、質の高いかかりつけ医機能を担ってくれている医療機関を適正に評価する仕組みへと転換していくと予想されています。具体的な変容としては、以下の2点があげられます。

① 「機能強化加算」など体制評価の抜本的な見直し
現在の「機能強化加算」は、初診時に80点を算定することができる点数で、かかりつけ医機能の一部体制(情報提供、相談体制など)を評価しています。ただこの機能強化加算は、算定要件が煩雑であり、本来の目的が見えにくいという指摘もされています。

2026年度の診療報酬改定では、この加算を含め、かかりつけ医機能に関する既存の点数が抜本的に見直され、報告制度の内容と連動した形で、より明確な評価体系へと再編される可能性が高いと言われています。報告された機能に応じて、より段階的で手厚い評価がなされるかもしれません。

② 「地域包括診療料・加算」の評価内容の柔軟化・多段階化
「地域包括診療料・加算」は多疾患を抱える患者の包括的な管理体制を評価する点数です。この地域包括診療料・加算は、算定要件が厳しく、算定数が伸び悩んでいるのが現状です。

この地域包括診療料・加算について日本プライマリ・ケア連合学会などからは、対象となる疾患をより柔軟にし、管理する疾患数や提供する機能(例:フレイル予防、多職種連携)に応じて9段階などに細分化していき、算定しやすくすべきであるとの提言がされています。2026年度の診療報酬改定では、この提言に基づき、外来診療での「主治医機能」をより多角的に評価していく仕組みが導入されることが予想されています。

医療機関に求められる新たな役割
「選択されるかかりつけ医」へ

2026年度の診療報酬改定後の医療機関には、以下の2つの大きな役割が求められる可能性が高いです。

①情報の積極的な開示と患者の選択支援
かかりつけ医機能報告制度によって集められた情報は、医療機能情報提供制度を通じて国民に公開されることになります。患者は、どの医療機関が、どの疾患に強く、夜間や休日も対応できるかを知り、かかりつけ医を自身で「選択」することになります。医療機関は、自院の強みや専門性を院内掲示やホームページなどで積極的に開示し、患者に選ばれる努力が不可欠となっていきます。

②「多職種連携」と「後方支援」の強化
真のかかりつけ医機能とは、自院だけで完結するものではありません。特に、他の診療科の医療機関、在宅医療や介護分野の連携が強く求められるようになります。ケアマネジャーとの定期的な情報共有や、入院が必要な際に後方支援病院と円滑に連携できる体制の構築が、診療報酬上の評価に直結するようになります。スムーズにそういった連携を進めていけるように、院内での体制整備は重要になります。

データと連携による医療の質の向上を
目指しましょう!

2026年度の診療報酬改定は、かかりつけ医制度を単なる理念や体制要件から、実効性のある、質の高い医療提供体制へと進化させるための決定的な機会となります。この診療報酬改定を乗り越え、持続的成長を実現させるためには、報告データから自院の強みと弱みを分析する貴重なツールとして活用するようにしてください。

・データに基づく機能強化
国に報告した機能の中で、特に地域からニーズが高い、または自院の専門性を活かせる領域(例:認知症への対応、特定の生活習慣病管理など)を特定し、集中的に強化してください。これが、将来的により高い評価点数(例:多段階化した地域包括診療料の上位区分)を算定するための基盤となりえます。

・「選ばれる理由」の言語化
報告された機能情報を活用し、「当院は〇〇という機能に特化し、地域の皆さまの××というお困りごとを解決できます」というメッセージを明確にし、ホームページなどでも積極的に報告するようにしてください。医療機関の数も年々増えておりますので、患者に選ばれる理由を確立していきましょう。

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この記事を書いたコンサルタント

和田 大樹

プロフィール詳細

webマーケティング、人材採用・マネジメントと幅広くコンサルティングを行っている。webマーケティングでは、クリニックの強みを最大限に生かした集患対策を行い、医院の経営数値を改善してきた。また、人材採用・マネジメントでは現在の時流に乗った採用方法を行い、数多くのクリニックの人材不足を救った。ただ人材採用をするだけでなく、その後の医院への定着も考えた、マネジメントコンサルティングには社内外からも定評がある。今後も経営者に寄り添い、1件でも多くのクリニック様に貢献していきたく思っている。

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