Table of Contents
皆様、こんにちは。船井総合研究所の石川です。
内視鏡クリニックの経営において、避けて通れない悩みが「季節変動(閑散期)」です。 「健康診断の時期は忙しいが、冬場は予約枠が空いてしまう」 「月によって売上の波が激しく、資金繰りが読みにくい」 このような課題をお持ちではないでしょうか。
固定費(家賃、人件費、リース料)は毎月一定にかかります。売上の波は、そのまま利益の波、ひいては経営リスクに直結します。 2026年改定で単価減が予測される中、この「非効率な稼働」を放置することは致命傷になりかねません。
今回は、閑散期を埋め、経営を安定させるための「定期受診(リピート)システム」の構築について、極めてアナログですが効果絶大な手法をご紹介します。
1. なぜ患者様は戻ってこないのか?
「また来年検査を受けてくださいね」 診察室でそう伝えても、実際に1年後に戻ってくる患者様はどれくらいでしょうか。多くのクリニックでは、良くて30〜40%程度です。 なぜ戻ってこないのでしょうか? サービスが悪かったから? 他院に行ったから? いいえ、最大の理由は「忘れているから」です。
痛みや症状がない限り、患者様は検査のことを忘れます。 逆に言えば、「思い出してもらう仕組み(リコール)」さえあれば、多くの患者様は戻ってくるのです。
2. デジタル時代にこそ効く「手書きハガキ」の魔力
リコールの手段として、メールやアプリ通知、LINEなどが普及しています。もちろんこれらも有効ですが、特に中高年層が多い内視鏡クリニックにおいて、圧倒的な開封率と来院率を誇るのが「手書きハガキ」です。
九州のあるクリニックの事例をご紹介します。 このクリニックでは、リピート患者数が伸び悩んでいました。そこで、検査から1年が経過する患者様に対し、スタッフが手書きで一言添えたハガキを送る取り組みを開始しました。
【実践のポイント】
● タイミング: 閑散期(予約が埋まりにくい時期)に合わせて発送する。
● 内容: 事務的な「検査のお知らせ」ではなく、「〇〇様、その後お腹の調子はいかがですか?」といったパーソナルなメッセージを一文添える。
● 作成: 診察の合間や、予約の空き時間にスタッフがコツコツ書く。
この結果、わずか3ヶ月間でリピート患者数が477人から701人へ、約1.5倍に急増しました。 デジタルな通知は「広告」としてスルーされがちですが、自分宛ての手書きハガキは「手紙」として大切に扱われます。この「感情への訴求」が、行動(予約)を促すのです。
3. 「予約」までをパッケージ化する
思い出してもらうだけでは不十分です。その場で「予約」という行動を完了させなければなりません。 ハガキにQRコードを載せ、スマホから24時間いつでもWEB予約ができるようにしておくことは必須です。
さらに進んだクリニックでは、「検査終了時に、来年の仮予約を取る」という運用を行っています。 「鬼が笑う」と言われるかもしれませんが、歯科業界では当たり前のこの習慣を内視鏡にも導入するのです。 1年後の予約日に近づいたら、SMSやLINEで自動リマインドを送る。 これにより、患者様は「予約を取らなきゃ」と考える手間すらなくなり、定期受診が習慣化します。
4. リピート率80%がもたらす経営の安定
目指すべきゴールは、定期受診率80%です。 毎月の検査枠の8割が、過去の患者様(リピーター)で埋まっている状態。 こうなれば、もはや高騰するWeb広告に頼って新規患者を集める必要はありません。閑散期もなくなり、毎月安定した収益が見込めるようになります。
まとめ
2026年改定では、新規獲得コスト(CPA)がさらに上がると予想されます。 今こそ「狩猟型(新規)」から「農耕型(リピート)」へ。 1枚のハガキ、1回の声かけが、数年後のクリニックを救う資産になります。 まずは来月の閑散期に向けて、対象患者様のリストアップから始めてみませんか?
同じテーマで記事を探す
この記事を書いたコンサルタント

石川 聖
大学卒業後、製薬企業で18年間勤務し、MRとして幅広い診療科を担当。その後は一般用薬品のマーケティングや社会貢献プロジェクトを通じ、組織マネジメント力を磨いた。
勤務中にMBA(経営学修士)を修了し、経営戦略や財務、組織マネジメントを体系的に習得。現在は内視鏡領域に従事し、各医院の状況に合わせたマーケティング戦略の立案、診療フローの効率化、採用・定着支援など幅広く経営をサポート。
過去の事例をそのまま当てはめるのではなく、課題を丁寧に見極め、施策内容や順序まで精緻に設計し、確実に成果に結びつけることを重視している。


