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皆様、こんにちは。船井総合研究所の石川です。 2026年度(令和8年度)の診療報酬改定に向けた議論が本格化しており、その方向性を示す「短冊(改定項目案)」の内容が公開されました。 日々、多くの内視鏡クリニックの院長先生方からご相談をいただきますが、その中でも最も切実かつ共通している不安があります。 それは、「次の改定で、内視鏡検査、特にポリープ切除(ポリペク)の点数が下がるのではないか?」という懸念です。 結論から申し上げますと、その危機感は決して取り越し苦労ではありません。今回の改定は、これまでの「検査件数を回して、ポリープ切除で利益を確保する」という内視鏡クリニックの勝利の方程式を、根本から揺るがすものになる可能性が高いのです。 本記事では、2026年改定の短冊から読み取れる「不都合な真実」と、そこから生き残るために今すぐ着手すべき対策について、徹底解説します。
1. ポリペク点数は下がる?「短期滞在手術等基本料」見直しの衝撃
まず、診療報酬改定の議論において注目すべきは、「短期滞在手術等基本料の見直し」です。 短冊には、「実態に即した評価を行う観点から、短期滞在手術等基本料について、対象手術等を追加するとともに、要件及び評価を見直す」という文言が含まれています。 これまでの改定の歴史を振り返っても、普及が進み、実施件数が大幅に増加した手術や検査は、その後の改定で「評価の適正化」、すなわち「点数の引き下げ」が行われるのが常です。日帰りポリープ切除術は、近年の内視鏡クリニックの増加に伴い実施件数が急増しており、まさにその対象となりやすい領域と言えます。 もし、ポリペクの点数が引き下げられれば、同じ件数の検査を行っていても、医業収入は確実に減少します。これは、経営の根幹に関わる重大な事態です。
2. 「物件費の高騰」への対応は限定的という現実
一方で、クリニック経営を取り巻くコスト環境はどうでしょうか。 短冊には、「医療機関等が直面する人件費や、医療材料費、食材料費、光熱水費及び委託費等といった物件費の高騰を踏まえた対応」として、初診料や再診料の引き上げが盛り込まれています。 しかし、冷静に考えてみてください。これはあくまで「基本診療料」の微増に過ぎません。 電気代の高騰、内視鏡スコープや処置具などの医療材料費の値上がり、そして何より、国が主導する「医療従事者の賃上げ(ベースアップ)」要請。これら全てのコスト増を、わずかな初・再診料の引き上げ分だけで吸収するのは、現実的に不可能です。 つまり、2026年には「手術・検査の単価は下がる(または据え置き)」一方で、「経営コストは確実に上がる」という、非常に厳しい「負のパラドックス」が待ち受けているのです。この状況下で、従来通りの経営を続けていれば、利益率は急速に悪化し、最悪の場合は赤字転落もあり得ます。
3. 「薄利多売モデル」からの脱却と「消化器ドック」への転換
では、この状況をどう打破すればよいのでしょうか。 「単価が下がるなら、件数を増やしてカバーすればいい」と考える先生もいらっしゃるかもしれません。しかし、その「薄利多売モデル」は既に限界を迎えています。件数を追えばスタッフは疲弊し、採用コストがかさむという悪循環に陥るからです。 答えは、「保険診療の単価減を、別の要素で補う構造改革」です。 保険点数が梯子を外された時、クリニックを守るのは「自分で価格を決められる商品」、すなわち「自費診療」です。 具体的には、「消化器ドック」の導入を強く推奨します。 「混合診療になるのが怖い」と二の足を踏む先生も多いですが、明確にメニューを分け、予防医療として提供すれば問題ありません。 例えば、「胃カメラ・大腸カメラ同日実施」「鎮静剤使用」「リカバリー室確約」「詳細なレポート」などをパッケージ化し、忙しい現役世代や経営者層に向けた「予防医療」として提供します。 保険診療では「病気を見つけて治す」ことが目的ですが、消化器ドックでは「健康であることを確認し、安心を提供する」ことが価値となります。この付加価値に対して、保険診療の枠組みを超えた適正な対価をいただくのです。 これにより、保険点数の変動に左右されない収益の柱を構築することができます。
まとめ
2026年の改定は、現状維持を続けるクリニックにとっては「淘汰の波」となりますが、いち早く「自費導入」に取り組んだクリニックにとっては、地域で圧倒的な一番店になるための「追い風」となります。 ぜひ今すぐ、貴院の収益構造を見直し、次なる時代への備えを始めてください。
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この記事を書いたコンサルタント

石川 聖
大学卒業後、製薬企業で18年間勤務し、MRとして幅広い診療科を担当。その後は一般用薬品のマーケティングや社会貢献プロジェクトを通じ、組織マネジメント力を磨いた。
勤務中にMBA(経営学修士)を修了し、経営戦略や財務、組織マネジメントを体系的に習得。現在は内視鏡領域に従事し、各医院の状況に合わせたマーケティング戦略の立案、診療フローの効率化、採用・定着支援など幅広く経営をサポート。
過去の事例をそのまま当てはめるのではなく、課題を丁寧に見極め、施策内容や順序まで精緻に設計し、確実に成果に結びつけることを重視している。


