今後の評価の軸は「提供の質」や「アウトカム」へ

2025年12月17日 (水)

今までの診療報酬体系では、主に提供された医療の「量」(DPCにおける出来高+包括、入院日数など)に対して評価を行う側面が強かったが、今後は「提供する医療の質」や「医療行為を受けた結果(アウトカム)」を重視する方向へと明確に舵が切られていきます。

この流れは、2024年度の改定で新設された外来データ提出加算によって、外来医療において本格的に波及していきました。この外来データ提出加算は、主に生活習慣病管理料を算定する患者の診療情報を国に提出する必要があり、外来医療における実態把握と質の評価を行うための基盤ともなっています。

そして、来年の2026年度の診療報酬改定では、この「データ提出」がアウトカム(治療結果)の評価とどう結びついていくのかが注目されています。

国が目指す「アウトカム重視」の具体的な方向性とは?

国がアウトカム(治療結果)を重視する背景には、医療資源の効率的な利用と、国民が享受できる医療の質の底上げがあります。外来医療において、特に生活習慣病管理で重視されるアウトカムとは、具体的に以下のような指標となります。

・生活習慣病の指標達成度
糖尿病におけるHbA1cのコントロール、高血圧における血圧コントロール、脂質異常症におけるLDL-C値・中性脂肪値など、診療ガイドラインに基づいた主要な検査値の達成状況はみられるかと思います。

・重症化予防・合併症発症率
糖尿病による合併症(糖尿病性腎症や糖尿病網膜症など)の進行抑制、脳卒中・心筋梗塞などの重大な合併症発症率の低下はみられるかと思います。

・患者視点のアウトカム
患者の生活の質(QOL)の改善、治療満足度、治療継続率などはみられるかと思います。

2026年度の診療報酬改定では、提出されたデータからこれらのアウトカム指標を算出し、指標の達成度が高い医療機関に対して、さらなる評価を加える仕組みが導入される可能性が考えられています。

2026年度の診療報酬改定で予想される
外来データ提出加算の進化

2024年度の診療報酬改定以降、外来データ提出加算の届出件数は増えてはいるが、令和6年12月の時点で届出を実施している医療機関が1,522件とまだまだ少ないのが現状です。外来データ提出加算を普及していくために、2026年度の診療報酬改定で外来データ提出加算は大きく変わっていくと予想されています。

・データの「義務化・対象範囲の拡大」と「質の評価」
現在の外来データ提出加算では任意的な仕組みであります。今後広く普及させるために、一定規模以上の医療機関に対する提出の義務化、あるいは提出しない場合の減算措置が導入される可能性があります。さらに、提出データが正確かどうか、また、そのデータに基づいた診療プロセス(質の担保)が適切であるかの評価がされていくようになります。

・アウトカム連動型インセンティブの導入
外来データ提出加算が、アウトカム指標の達成度と連動した評価体系へと移行していく可能性が予想されています。患者のアウトカムに応じて基準値を上回る場合に評価を受けるようなインセンティブ制度の導入もあり得るかと思います。

医療機関が今すぐ取るべき対策とは?

2026年度の診療報酬改定で成功を収めるためには、医療機関側が「データ提出」から「アウトカム達成」を実現できるよう、意識を変えていく必要があります。

① データ提出体制の最適化
現在、外来データ提出加算を取れていない医療機関も数多くございます。まずは正確で遅延のないデータ提出を実施していく体制を整えることを目指してください。今では外部企業が提供している様々なサービスがございます。そういったサービスも活用しながらデータ提出を行える体制を整えていきましょう。

②アウトカムの目標設定
患者ごとで治療方針は異なるかと思います。アウトカムを高めていくために、患者ごとで治療目標をしっかりと立てるようにしてください。そして、診察時にその目標の達成状況を患者と一緒に確認するようにしてください。

③ 他職種との連携
アウトカムを高めていくためには他職種との連携は非常に大切となります。医師・看護師との連携はもちろん、必要に応じて管理栄養士・臨床検査技師なども採用し、患者に提供する検査の質向上・食事や生活習慣の改善まで含めたトータル的なサポートを実施できる体制を整えていきましょう。

同じテーマで記事を探す

この記事を書いたコンサルタント

和田 大樹

プロフィール詳細

webマーケティング、人材採用・マネジメントと幅広くコンサルティングを行っている。webマーケティングでは、クリニックの強みを最大限に生かした集患対策を行い、医院の経営数値を改善してきた。また、人材採用・マネジメントでは現在の時流に乗った採用方法を行い、数多くのクリニックの人材不足を救った。ただ人材採用をするだけでなく、その後の医院への定着も考えた、マネジメントコンサルティングには社内外からも定評がある。今後も経営者に寄り添い、1件でも多くのクリニック様に貢献していきたく思っている。

無料経営相談のお問い合わせ
contact us

WEBからのお問い合わせ

お問い合わせフォームはこちら

お電話でのお問い合わせ

0120-958-270 (受付時間 平日9:00~18:00)0120-958-210 (受付時間 平日9:00~18:00)

病院・クリニック経営.comを見たとお伝えください。

デジタル化戦略レポート

×
医療・介護向けM&A

×