外来データ提出加算は今後どうなるのか?
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外来データ提出加算とは?
2024年度の診療報酬改定で新設された「外来データ提出加算」は、多くの医療機関にとって大きな注目点となったことと思います。今までは主に入院医療で求められてきた診療情報のデータ提出が、生活習慣病管理料を算定する外来医療においても2024年の診療報酬改定から導入されることになりました。
この加算は、単に診療報酬に点数を上乗せするためのものではなく、外来医療の質の評価や、地域医療構想における機能分化を推進するための重要なインフラ整備という役割を担っています。国としては外来患者の疾病構造や治療内容、アウトカムなどの詳細なデータを把握し、将来的な診療報酬体系の適正化や、エビデンスに基づいた医療政策の立案に繋げていくための基盤ともなります。
2024年から内科外来においても
外来データ提出加算が開始!
外来データ提出の算定状況とは?
外来データ提出加算の目的として、医療現場の実態(外来患者の疾病構造や治療内容、アウトカムなどの詳細なデータの把握など)を把握し、今後の診療報酬改定など医療政策に役立てていくものとなります。そのため、この外来データ提出加算は全医療機関からのデータ提出を理想としています。
しかし、この外来データ提出加算の算定には、診療データを正確に作成し、遅延なく継続して提出することが求められており、医療機関には新たな業務負担も生じてしまうものとなっていました。そのため、実情としては、外来データ提出加算を算定できている医療機関は非常に少ない状況となっています。

外来データ提出加算等の届け出状況(入院・外来医療分科会(1)3 250619)
令和6年3月、6月、9月の時点では外来データ提出加算の届出をしていたのが全国でも154件程度と非常に少なかったが、届出している医療機関数はその後右肩上がりで伸びており、令和6年12月の時点で1,522件まで増えていた。
ただ、全国で内科を標榜しているクリニックが6万施設以上あることを考えると、外来データ提出加算の届出をしている医療機関数が伸びているとはいえ、まだまだ少ないことが分かるかと思います。
2026年改定で議論が予想される主な論点
2026年度の診療報酬改定でも引き続き外来データ提出加算は継続になると考えられており、今後は主に以下の2点が議論の焦点になる可能性が高いです。
論点1:対象範囲の拡大とデータ提出の「義務化」
現在は生活習慣病管理料を算定する患者に限定されていますが、将来的にはデータ提出の対象疾患や管理料が拡大される可能性があります。さらに、現行の「加算」という任意的な位置づけから、一定規模以上の医療機関に対してはデータ提出を義務化し、データの提出ができない場合には減算を適用する仕組みについても議論される可能性があります。
これは、国が外来データ提出加算を通して外来医療の実態把握を進めていくためでもあり、今後の診療報酬改定で対象範囲の拡大とデータ提出の義務化が議論されていくかもしれません。
論点2:データの「質」と「活用」の評価
現在のデータを提出したことに対する評価から、提出されたデータが「医療の質の向上」や「地域医療連携に実際に活用されているか」を評価する視点が加えられる可能性があります。
例えば、提出データに基づくフィードバックレポートの活用状況や、特定のアウトカム指標の改善が見られた場合に、さらなる加算を設けるなど、「データの質」と「活用」を評価する新たな要件が加わるかもしれません。
医療機関が今から準備すべきこととは?
2026年度の診療報酬改定の方向性を見据え、医療機関が今から取り組むべきことは、「データ提出体制の確立」と「データの戦略的活用」の二点があげられます。
1.データ提出体制の確立
外来データ提出加算を算定している医療機関は、何よりも「遅延なく、正確なデータ」を提出できる業務フローを確立しています。提出遅延は直ちに収入減につながるため、遅延なく、正確なデータ提出ができる人材の選定・育成は必須となります。
2.提出データの読み解きと院内改善への活用
提出しているデータは、自院の診療実態を客観的に示した貴重な経営資源ともなります。国への提出のために作成したデータを、自院の診療の強み・弱みを分析し、医療の質改善や効率化に役立てる視点を持つことも重要です。ただデータを提出するだけでなく、データの内容にも意識をし、ぜひ皆様の経営の方にも生かしていただければと思います。
まとめ
2026年度の診療報酬改定の大枠はまだ公開されておりませんが、今後、外来データ提出加算のあり方については変わっていく可能性が高いです。外来データ提出加算の変更は、外来医療が「データに基づくエビデンス」へと変革していくことになるかもしれません。
単なる事務作業と捉えるのではなく、今後の地域医療、ひいては日本の医療全体を形作る重要な取り組みとして、積極的な準備と活用を進めていく必要があります。
また、データ提出を通して自院の強み・弱みの分析も可能となり、自院の今後の経営戦略の立案にもつなげていただければと思います。


