【クリニック事例】週休3日制ナーシングホームの経営実態 ~医療法人が経営する意義&メリット~

2024年09月27日 (金)

科目:
内科
コラムテーマ:
在宅医療

本コラムでは医療法人が運営する「週休3日制ナーシングホーム」の実例をご紹介します。
施設形態としては「ナーシングホーム=有料老人ホーム×訪問看護&介護」ですが、介護施設でも珍しい週休3日制に移行しています。
元々は介護中心の一般的な有料老人ホームでしたが、医療対応が可能なナーシングホームへモデルチェンジしました。
医療法人として往診や看護という強みを活かした施設モデルをつくりあげ、週休3日制など生産性を意識した働き方も影響して素晴らしい業績を出しています。

最後には本事例施設の「現地視察ツアー」もお知らせします。
医療依存度が高い方が入居している施設のためこれまで実現が難しかったのですが、遂に1日限定で開催することになりました。
是非、コラムをお読みいただき、興味を持たれた方は直接施設を見て、経営者・管理者・責任者の話を聞きに来てください。

それでは、事例のご紹介です。
【市場】
・地域:茨城県水戸市
・市の人口:約26.7万人(R6年7月)

【施設概要】
・ナーシングホームとうはら:2015年2月竣工、19室
・ナーシングホームほしぞら:2019年6月竣工 24室
・ホテルコスト(家賃・食費・管理費等):102,000円~(※保険サービス費は別途)

【経営数値】
<売上・利益(2023年度実績)>
・2棟計43床で売上約3億円/年 営業利益25.7%
・部屋部屋単価58万円/月
※医療中心の方が多いナーシングホームほしぞらは部屋単価75.6万円/月
・人件費率52.8%
・往診として月売上300-400万のクリニック収益有り

次は、インタビュー内容をお伝えします。

特別インタビュー

・自己紹介
かねこ消化器内視鏡 肛門外科クリニックの医師として診療所をメインで経営しています。クリニックは23年前に開院しました。

・施設事業(ナーシングホーム)を始めた理由・きっかけ
クリニックへ通院されている方が高齢化し、通えなくなってくる方が増えたことがきっかけです。地域との距離が近いクリニック経営を目指している中で、これまで地域で困った事例に数多く携わっていました。特に重症な方を受入れる施設が少ないことも感じていたのですが、その時にたまたま『クリニックの近くで土地を購入してくれないか?』という話をいただきました。
介護事業自体も全くの未経験でしたが、「凄いタイミングだ!」と決断しましたが、今思えば思い切った判断だったと思います。

 購入した土地は約3,000坪です。1棟目は建物に1.5億程の投資をして19床の有料老人ホームをつくりました。
2015年当時は『ナーシングホーム』という頭はなく、クリニックにいる看護師に手伝ってもらう予定で基本は介護職だけで始める計画でした。

・ナーシングホームに切り替わった理由
介護のみの有料老人ホームが結果的にはうまくいかなかったのが理由です。重症者を受入れると介護スタッフから「自分達では受け入れられない」となってしまい、退職も出て不安定だったのが最初の3年間です。入居者の介護度は要介護2~3が多く、入居率は7~8割程で推移、さらには介護保険の限度額に対して他のデイサービスを利用されるなど自社サービスを使っていただくことがなかなかできませんでした。
 
 ナーシングホームに切り替わったのはある看護師の入職がきっかけでした。現場が要介護4・5を積極的に受け入れる空気になり、稼働率や単価が上がって売上が急に変わりました。途中から指揮を私(理事長)から現場の看護師に任せるようになったのですが、売上をオープンにしていたので、『こうすれば売り上げが上がるよね』と看護師が自ら考え始めたことも良かったのだと思います。介護保険の算定方法や病院への営業、入居者の見極めなど理解を深めながら看護師も増え、約2年程掛けて今のスタイルが出来たと思います。

・2棟目を開設した理由

土地が余っているのもありますが、1棟目の時点で入居待機者が多くいました。集客はクリニックへ通っている方からの入居希望はほとんどなく、病院からの受け入れが9割以上なのですが、とにかく入居希望の方が多かったです。2棟目はコロナの時期と重なっていたこともありますが、病院からしたら退院して欲しかった患者を受けられたので良く相談をいただきましたね。
2棟目の「ナーシングホームほしぞら」は2019年に開設ですが、開設当初から順調です。1棟目から入居者も多くて待機者も多かった、スタッフも多くなっていたので「これはいける!」と自信がありました。金融機関の担当者さんも始めは反対されましたが、最終的には納得されて約2億で24床の施設を建設できました。
2棟で計43床ですが、合わせて全員でみているという感じです。

・ナーシングホーム経営の大変な点
 正直特にこれ、というのがあまりありません。挙げるとすると、ナーシングホームを始めた時に看護師と介護の境界線が被っているため、そのすみ分けに苦労したくらいです。今はある程度看護と介護でやることのすみ分けをしていて人が少ない時は協力するというスタイルです。
 それと、私はクリニックもやっていて施設も見に行くので意外と体がきついというくらいですね。週1回しか今は行ってませんが何かの際は行きますが、今は特段困っていることはありません。

・施設を経営していて良かったと思う点
 『やりがい』だと思います。この辺は重度な方をみれる施設がほとんどないので、その点はやりがいがありますしスタッフもそう思っていると思います。
経営的にはクリニックより施設の方が今は売上が大きくなりました。クリニックが2~2.5億、全体で5.5億(施設は3億)程となりますが、クリニックはなんだかんだ波があるため、会社の安定感を考えると施設を持っていることのメリットは大きいです。
合わせて43床ありますが、私自身が全ての方を診ています。クリニックとしても減算はありますが、週1回の往診で月売上300-400万があります。

<体制>

看護師常勤12名、夜勤専従10名、介護職常勤15名、夜勤専従7~8名
夜間は3名体制(看護1~2名 ※日によって異なる)
年齢的には30~40代が主力

<稼働率・入居者層>
稼働率は100%
とうはらは軽度(介護)、ほしぞらが重度(医療)のすみ分け
とうはらには点滴や胃ろうが入っているなど他では受入できない入居者が多い
ほしぞらは入居者のほとんどが癌末期または難病。
重度な方ばかりだと職員が疲弊してしまうので、敢えてとうはらに介護度の低い比較的元気な方を受け入れている

・クリニックとの相乗効果
経営的な報酬もありますが、評価制度や週休3日制など新しいことをクリニックで導入して、うまくいきそうだったから施設で導入などクリニックベースでトライしたことを施設でも実践できる点が大きいと感じています。

週休3日制は病欠やお休みの方が減りました。若いスタッフも多いので子育てと両立しやすくなっているのか「「子どもの用事を足しやすくなった」「かなり助かる」と聞かれています。

・競合施設との差別化
最近は市内に競合施設も出ているのですが、特に意識していません。当施設の方が丁寧に診ていると自信がありますし、紹介も多くいただいているので病院や周りの評価としてもそう思っていただけていると思っています。
他施設から転職してくる看護師もいますが「ここの方が楽しい」とコメントをもらうことも多いです。
『週休3日制の施設』を実現していてうまく回っていますし飲み会や部活動もスタッフが自主的にやっていますので仲も良いのだと思います。

・今後の展望
 まだ土地が空いているのでデイサービスをやってみようかと話が出ています。地域にはたくさんあるけど自分達也のスタイルがあるんじゃないか?と検討中です。
クリニックも含めてですが、より効率化していきたいですし、施設のデジタル化をもっともっと進めないといけないと思っています。

最後に、 【視察ツアー】週休3日制ナーシングホーム2024
のお知らせです。

本コラムでご紹介した医療法人維誠会のナーシングホーム2棟を視察し、経営者から講演をいただきます。
この1回限りの特別な機会は11月10日(日)13時~です。
当日は責任者として施設長・看護管理者も同席してくれますのでシフトやルート等細かい運営ノウハウや算定のポイントなども学ぶことができます。
水戸市で開催のため東京駅から約85分ですが、ここでしか得られない体験ですので是非ご参加ください。

【現地視察】週休3日制ナーシングホーム2024


医療法人維誠会のナーシングホームを視察できる貴重な機会です。
ナーシングホームという性質上困難だった視察ツアーを遂に実現。
【開催日】
2024年11月10日(日)
【開催時間】
13:00~17:00
【開催場所】
講演:JR水戸駅直結徒歩1分(BIZcomfort水戸)
視察:ナーシングホームとうはら・ほしぞら
※参加者全員バスで移動します。(約15分)
※視察後、講演会場に戻った後に終了となります。

詳細は申し込みページをご覧ください。

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