杉並PARK在宅クリニック インタビュー
この度は、先進的なDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進されている杉並PARK在宅クリニックの田中公孝院長先生に、その具体的な取り組みとクリニックの変化について詳しくお話を伺ってまいりました。

杉並PARK在宅クリニックの概要について
インタビュアー: 田中院長、本日はお忙しい中、貴重な時間をいただきありがとうございます。今回は、貴院がどのようにDXを経営に活かし、在宅医療の質向上と持続可能な組織運営を実現されているのか、詳しくお伺いできればと存じます。まずは、クリニックの概要について教えていただけますでしょうか。
田中院長: はい。当院は、訪問診療を中心に事業を展開しております。現在、常時60-70名程度の居宅患者様にご利用いただいており、1日の訪問件数は10件前後です。私は常勤医師として訪問診療を行っており、多職種と密に連携しながら、患者様とそのご家族をサポートしています。当院の特徴は、開業当初からITツールを積極的に活用し、業務効率化と質の向上を目指している点にあります。
具体的なDX施策について
インタビュアー: ありがとうございます。それでは、貴院で実施されているDXの施策について具体的に教えていただけますでしょうか。
田中院長: 当院では、多岐にわたるDX施策を導入し、業務の効率化と質の向上を図っています。
まず、最近のトピックだと、ChatGPTの活用です。書類を作成する際の効率化のために使用しております。具体的には診療記録のSOAPのうち、SとPの記載内容を活用して前回の居宅報告書をもとに叩き台の作成をChatGPTに行ってもらうことで、日々の報告書作成の効率化に役立てております。また、ChatGPTは採用面接時の適性検査のサマリー作成や、候補者の適性に関するリコメンドにも活用しています。
情報共有という観点ではLINE WORKSを院内で積極的に活用しております。具体的には、他職種やご家族からクリニックにあった電話内容をリアルタイムに共有したり、都度物品発注やレセプト会計に関する検討事項等を共有したりします。LINE WORKSやり取りを通じて、物理的に離れていても様々な角度からの情報を部門の内外を問わず共有することが可能となり、効率的に情報共有できるだけでなく、抜け漏れに気づき合えるよう機能しております。同様にタスク管理ツールであるAsanaを活用することで、従来属人的になりがちだったタスクを複数名で共有できるようにしたことも大きな変化です。
また、Notionを活用した院内マニュアルの整備も進めております。当院では、Notionを単なるマニュアルのデジタル化にとどまらず、社内Wikiや業務に関する包括的なナレッジベースとして積極的に活用しています。現在、小さなものを含めて1000を超えるページ数で構成されており、運用しています。最近では、人事総務マニュアルの立ち上げや、医療事務関連のナレッジベースも作成し、通常の診療や事務業務以外の領域でも知識共有の幅を広げる挑戦を続けています。
他にも様々なツールや施策がありお話しすると長くなってしまいますが、0から作るのではなく、既存のITツールを積極的に導入し活用しております。

効率化だけではない!?DXを進めていくうえで起こった変化
インタビュアー: 大変多岐にわたるDX施策ですね。これらの施策を実施していくことで、クリニックには具体的にどのような変化が起こりましたか?
田中院長: DXの推進は、クリニックに非常に大きなプラスの変化をもたらしました。
まずは人材育成の高速化と質の向上です。業務を「見える化」し「言語化」する仕組みを整えたことで、新人の育成スピードが飛躍的に向上しました。Notionなどのツールを活用し、オンボーディングシートの進捗を可視化することで、新人自身が自律的に学習できる環境が実現できています。
そして、患者様・多職種からの信頼とリピーターの増加にも繋がっています。スタッフが患者様や多職種の情報を深く理解し、質の高く、迅速な対応ができるようになった結果、患者様・多職種からの信頼が増し、リピーターの増加に繋がりました。
最後に、DX推進は、私の働き方にも大きな変化をもたらしました。以前は診療以外の事務作業や連絡調整に多くの時間を費やしていましたが、DXによって医師でなくてもできる業務を大幅に圧縮できました。例えば、主治医意見書や訪問看護指示書の更新など細かな書類作成などは、スタッフが事前に叩き台を作成し、私が最終チェックを行う形です。これにより、私は経営者として注力すべき人材育成や組織体制の構築といった、より戦略的な業務に時間を投資できるようになりました。
もちろん業務の効率化やペーパーレスにもつながったところは多いですが、このように院内の教育や多職種連携、私自身の働き方に大きな影響をもたらしております。

DX人材の採用と育成について
インタビュアー: ただの業務効率化だけではなく、人材育成や患者様・多職種からの信頼獲得にもつながっているのですね!多くのクリニックではDXを推進しようともなかなか現在の人員では進めにくいというお声も多くいただきますが、DXを推進していくための人材採用や育成はどのように行われていますか?
田中院長: DXを効果的に推進し、持続可能なクリニック運営を実現するためには、人材の採用と育成が極めて重要だと考えています。
まず採用戦略として、当院ではスキル以上に協調性が高く、穏やかな人間性を重視しています。そのほかの要素として、パソコンがある程度使える人材を特に重視しており、パソコンをよくいじる世代の採用を意識しています。
次に教育・育成体制についてですが、DXツールを活用することで、新人育成のスピードが飛躍的に向上しました。特に、業務を「見える化」し「言語化」することで、新人が自律的に学習できる環境を整えています。具体的にはNotionなどのツールを活用したオンボーディングシートの進捗管理により、新人自身が学習履歴を確認し、疑問点を解消できる仕組みがあり、これにより教育担当者の負担も軽減されています。また当院では、医師でなくてもできる業務をマニュアル化してスタッフに移譲することで大幅に圧縮した結果、院長である私も経営方針や組織体制の構築といった戦略的な業務に時間を投資できるようになりました。
さらに、組織力の強化にも力を入れています。私はOKR(「目標と主要な結果」の略称で目標管理手法のを導入し、四半期ごとにクリニック全体の目標とチーム目標、個人目標を設定・共有することで、全スタッフの意識と行動を統一しています。こちらもツールを入れて、運営会社の支援を受けながら正式な院内人事制度として運用しています。
DXの推進が多職種連携の強化に?
インタビュアー: ありがとうございます。DXが多職種連携にもつながった例について具体的に教えていただけますでしょうか。
田中院長: DXは、地域における多職種連携を円滑にする上で非常に重要な役割を果たしています。当院の主な紹介元は、ケアマネージャーと訪問看護ステーションであり、次に病院からの紹介が続きます。DXによって、当院のスタッフが患者情報をすぐに把握し、連携先へ提供できるようになったことで、ケアマネージャーや訪問看護ステーションの皆さんからは「杉並PARKのクリニックは情報がタイムリーに来てありがたい」という評価をいただいています。医師である私だけでなく、事務スタッフや走行班(訪問診療看護師、地域支援ソーシャルワーカー、診療アシスタント)がケアマネージャーからの電話対応や情報収集を積極的に行うことで、医師の負担を軽減しつつも、より迅速で質の高い連携が可能になっています。特に、当院のソーシャルワーカーが患者様やご家族の社会的・精神的な問題(例えば、家族の介護体制、金銭問題、不安など)に対応することで、ケアマネージャーからの評価が非常に高く、多職種連携における当院の強みとなっています。これにより、医師がいなくても、連携先や患者様に対して付加価値を提供できるチームが実現できています。
杉並PARK在宅クリニックの今後の展望
インタビュアー: 最後に、杉並PARK在宅クリニックの今後の展望についてお聞かせいただけますでしょうか。
田中院長: 今後の展望としては、いくつかあります。一つは、現在の杉並区を中心とした地域で、地域へのアプローチをさらに強化していくことです。幅広く様々なエリアで訪問診療を行うよりも、近隣の医療機関や地域住民との連携を一層深め、より質の高い在宅医療を提供できる体制を構築していきます。
もう一つは、在宅医療業界全体の変革に貢献することです。私自身がDXを推進し、そのノウハウを外部に発信していくことで、これからの若い世代の医師や看護師が「この業界に来てよかった」と思えるような、魅力的な環境づくりを支援していきたいと考えています。対外活動も積極的に行い、情報発信を強化していきます。
インタビュアー: 田中院長、本日は貴重なお話をありがとうございました。杉並PARK在宅クリニック様の革新的なDX推進と、それによる人材育成・組織強化の取り組みは、これからの在宅医療のあり方を示す素晴らしい事例であると強く感じました。今後のさらなるご発展を心よりお祈り申し上げます。
田中院長: こちらこそ、ありがとうございました。

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