
きたがわ脳神経外科 院長 北川 雄大 様
今回は、福岡県九州市八幡西区にある「きたがわ脳神経外科」の院長 北川 雄大 様にインタビューをさせていただきました。
Q1. 医師としての充実したキャリアの中で、開業を決断された経緯と、北九州市(八幡西区)という立地を選ばれた背景についてお聞かせください。
勤務医時代、私は脳腫瘍や救急医療、脊椎外科など、最前線の現場で真摯に手術や治療に向き合ってきました。その中で、大病院は高度な医療を必要とする患者様の命を救う、地域にとって不可欠な存在であると身をもって実感いたしました。
一方で、高度医療や急性期を担う大病院のシステムの中では、病気を防ぐためのアプローチや、退院後の暮らしを支える柔軟なサポートを、理想のスピード感で届けることの難しさも実感しました。もっと患者様の身近で、お一人おひとりのニーズに即座に応えられる医療を提供したいという思いが、日に日に強くなっていきました。
医師として今後の歩みを模索する中で、「自分がこれまで培ってきた経験や技術を、最もダイレクトに患者様へ還元できる形は何か」と深く考えるようになりました。
その結果、地域の最前線に立ち、自身の責任と裁量でお一人おひとりに最適な医療をスピーディに提供できる「開業」という道が、自分にとって最も納得のいく選択肢だったのです。
数ある地域の中から北九州市(八幡西区)を選んだのは、私の母校である産業医科大学が近くにあり、土地勘や深いゆかりがあることが大きな理由です。
これに加え、この地域は人口規模が大きいからこそ、頭痛やしびれ、脳卒中の予防といった「脳神経外科の専門的な相談」を、より身近に、気軽にできる窓口(クリニック)への強いニーズを感じていたことも背景にあります。
また、私は以前から趣味で地図や地形を見るのが好きで、「この地形なら、地域の方々はこのような動線で生活されているのだろう」と、そこに暮らす人々の日常を想像することが習慣になっていました。
そうした視点でこの場所を見つめたとき、地域の皆様の生活に寄り添いながら、医療の面から安心を提供できるイメージがはっきりと湧いたのです。
私が提供できる医療と、地域のニーズ。その2つが合致する場所とタイミングに恵まれたことが、この地での開業を決意する最大の決め手となりました。
Q2. 日々の診療において最も大切にされていることは何でしょうか?
当院の医療理念は「健康で人生を変える」です。私自身が受けたい、そして家族や大切な人に受けさせたいと思える医療を提供し、患者様がほっと安心できるクリニックでありたいと願っています。
日々の診療で最も大切にしているのは、「患者様が何を求めているか」を第一に考え、目の前の困りごとにフォーカスし、誠心誠意、最善を尽くしてお応えすることです。
私は脳神経外科医としてのバックグラウンドを持っていますが、頭の病気だけにとどまらず、地域の皆様の身近な「かかりつけ医」でありたいと考えています。
頭痛やめまいはもちろん、腰痛や首の痛みといった脊椎外科領域、さらには認知症、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、骨粗鬆症まで、患者様の「全身」を幅広く診療いたします。
医療にはさまざまな役割がありますが、当院が位置するこの地域においては、「どこに相談していいか分からない」と迷われている方々を広く受け入れ、総合的に健康をサポートしていくことが大切な使命だと感じています。
患者様の強い不安に寄り添い、求められたことに持てる全ての技術と真摯な姿勢で応え続けること。それこそが、地域医療を担う私たちの存在意義だと考えています。
Q3. 開業から1年半が経ち、地域の多くの患者様が足を運ばれていますが、お一人おひとりに丁寧な診療を提供し続けるために、クリニックとして意識されている特徴や工夫について教えてください。
当院では、患者様の不安をその日のうちに取り除けるよう、MRIやCT、骨密度検査などの充実した医療機器を導入し、院内で検査を完結できる体制を整えています。
また、医療機器だけでなく「空間づくり」にもこだわりました。例えば、頭痛でつらい思いをされている患者様が少しでも落ち着けるよう、診察室の壁紙の色に配慮し、照明も電球色と白色を切り替えられるように設計しています。
おかげさまで多くの患者様にお越しいただいておりますが、日々の診療枠や検査数については、お一人おひとりと丁寧に向き合える適正な範囲を保つよう強く意識しています。
なぜなら、脳や神経の繊細な診断においては、決して妥協のない精緻な検査と、集中力を維持できる環境が何よりも大切だからです。また、スタッフが常に心身ともに万全の状態で患者様をサポートできる環境を維持することも、医療の質を守るためには不可欠だと考えています。
特に、当院は認知症や脊椎疾患の患者様も多く、ご不安やお困りごとを詳しくお聞きすることが診断や治療の大きな鍵となります。私たちが責任を持ってお一人おひとりに最善の医療を提供するためには、現在の体制に合わせた適正なキャパシティを守ることが大切だと考えています。
時には『お待たせしている、より多くの患者様を診られないだろうか』という葛藤もありますが、そこを急いでしまっては、当院が目指す医療のあり方を見失うことになりかねません。ブレずに適正なペースを守り、目の前の患者様に全力を注ぐこと。この姿勢こそが、結果として患者様やご家族への深い安心感に繋がっていくと信じています。
Q4. クリニックが成長していく中で、全体の経営や日々の運営、そしてスタッフの採用・育成において、どのようなことを意識して取り組まれていますか?
勤務医時代に後輩の指導にあたってきた経験や、日々の暮らしの中で大切にしてきた人との向き合い方など、これまでの人生で培ってきた「思考」がそのままクリニック運営に活きていると感じます。
脳外科の手術に例えるなら、顕微鏡で患部をピンポイントに集中して見る「ミクロの視点」と、一度ズームアウトして術野全体を広く見渡す「マクロの視点」の切り替えです。
一人ひとりのスタッフに寄り添う視点と、組織全体を見渡す視点、この両輪のバランスがマネジメントの要だと考えています。
採用において一番重視しているのは、これまでの経験や技術以上に「当院の想いに共感し、一緒に患者様のために歩んでくれるお人柄かどうか」です。
短い面接時間であっても、「目の前の患者様の役に立ちたい」という純粋な想いや熱意は、言葉の端々や温かい表情からしっかりと伝わってくるものです。
医療現場では時に難しい壁にぶつかることもありますが、それを乗り越える一番の原動力となるのは、そうした「患者様に真摯に向き合う前向きな気持ち」だと思っています。
また、そうして入職してくれたスタッフとは、私が大切にしている「医療への姿勢」を、言葉で押し付けるのではなく、日々の診療の中で自然と共有できるよう意識しています。
例えば、当院では診察室にクラークが同席していますが、私が患者様とどう向き合い、どのような言葉をかけているかを間近で毎日見て、聞いてくれています。このように、私の実際の行動をスタッフが体感してくれることが、クリニックの理念が組織全体へと自然に伝わっていく大切な一歩になっていると感じています。
開業からありがたいことに持続的に成長してきましたが、私が一人で先走るのではなく、スタッフとしっかり足並みを揃えて、成長のステップを踏むことを何よりも大切にしています。
また、私が診療に専念できるよう、Web発信や広報などのバックオフィス業務は、事務長が全面的にサポートしてくれていることも大きな支えです。
Q5. 最後に、今後の医療業界・地域の展望と、その中での貴院の役割や将来像についてお聞かせください。
今後の医療業界は、高度な手術や救急対応を担う大病院と、日常の健康管理や初期診療を担うクリニックとの「機能分化」がより一層進んでいくと考えられます。大病院側も、病状が安定した患者様を地域のクリニックへスムーズに引き継ぐ流れがさらに加速していくでしょう。
そうした時代において、お待たせする時間を抑え、必要な検査を迅速に行えるクリニックの存在意義はますます高まります。
脳神経外科の専門性をベースに持つ当院だからこそ、脳の疾患そのものだけでなく、その引き金となる高血圧や糖尿病などの生活習慣病、認知症、さらには日常の軽微な外傷まで、患者様の全身を包括的に見守ることができると考えています。「体のことで困ったら、まずはあそこに相談しよう」と、地域の皆様に最初に思い出していただける存在になることが私たちの目標です。
当院の今後についてですが、大変ありがたいことに多くの患者様にご来院いただいており、現在の施設や限られた人員のままでは、いずれお一人おひとりに十分な時間を割くことが難しくなるのではないか、という懸念を持っています。
そのため、将来的には、より多くの患者様をゆとりを持ってお迎えできるよう、「診療体制の拡充」も少しずつ視野に入れています。
あくまで私の目がしっかりと届き、信頼できるスタッフとともに、当院が何よりも大切にしている「丁寧な診療」を変わらずに維持・提供できる範囲で、一歩一歩進めていきたいと考えています。
これからも、目の前の患者様お一人おひとりに真摯に向き合い、「健康で人生を変える」お手伝いができる、地域で一番温かいクリニックであり続けたいと思います。



