【内視鏡クリニック】近隣に競合クリニックができたときの戦い方

  • 内科(内視鏡)
公開日
更新日
執筆者内科・医療支援部
コラムテーマ経営戦略・ビジネスモデル
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「近隣に新しい内視鏡クリニックがオープンするらしい……」
「最近、近くの競合クリニックが内視鏡検査に力を入れ始めて、新患数が減ってきた……」

近隣に手強い競合が出現した際、多くの院長先生は焦りや不安を感じるものです。
しかし、ここで戦い方を誤ると、どれだけ資金や労力を投入しても泥沼の消耗戦に陥ってしまいます。
本コラムでは、年商2億円を超えるクリニックが実践している「集患の基本原則」と「差別化戦略」をベースに、新設の競合に埋もれず、地域で圧倒的な存在感を放つ内視鏡クリニックであり続けるための具体的な戦い方を、内視鏡専門コンサルタントの視点から解説します。

近隣に競合が出現!そのとき内視鏡クリニックが絶対にやってはいけないこと

競合の存在を意識し始めた院長先生が、真っ先に陥りがちな「罠」があります。

  • 「HPをリニューアルしよう」
  • 「新患を獲得するため広告費を増額しよう」
  • 「あちらが土日対応なら、こちらも土日をやろう」
  • 「女性医師による検査もアピールしよう」
  • 「鎮静剤も、院内下剤も、日帰りポリープ切除も全部盛り込もう」
  • 「最新機器の導入と、WEB予約・WEB問診もすべて完璧にしよう」

このように、競合に負けまいと課題に対して誤った策を講じることは、スタッフの負担が限界に達するだけでなく、「結局、このクリニックの本当の強み(特徴)は何なのか?」が患者様から見えなくなってしまいます。

経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間)が限られている中で、すべてにおいて競合に勝とうとする戦略は最善策とは言えません。
競合が出現したときこそ、戦略的に「やること」と「やらないこと」を決め、正しい方向性で経営を進めることは必要不可欠です。

第1章:集患の基本方程式で現状を因数分解する

競合に対抗するため、まずは現在の集患状況を分析しましょう。
クリニックの新規患者数を増やすための原点は、以下のシンプルな掛け算で表されます。

新患数 = HPアクセス数×差別化力×予約利便性

多くのクリニックは、競合ができると焦ってHPアクセス数(リスティング広告費の増額やSEO対策など)ばかりに注力しがちです。
しかし、この方程式は「掛け算」である点に注目してください。

もし自院の「差別化力」や「予約利便性」が競合より劣っていれば、いくら広告費をかけてアクセス数を増やしても、新患数は思うように伸びません。

競合が現れたときこそ、単に「認知を広げる(アクセス数を増やす)」だけでなく、自院が選ばれる理由である差別化力と、来院へのハードルを下げる予約利便性を徹底的に磨き上げ、掛け算の総和を最大化することが重要です。

第2章:5つの切り口で決める「内視鏡クリニックの尖らせ方」

では、肝心な「差別化力」はどうやって作ればよいのでしょうか。
そこで活用するのが、患者様がクリニックに感じる価値を細分化した「5つのステータス分析」です。

患者様の満足度は、一概に「良かった・悪かった」という総合満足度だけで決まるわけではありません。
以下の5つの価値に分解され、この5つの価値を、自院の強みにどのように配分するかが戦略の要となります。

【患者様が感じる5つのステータス価値】

  1. 医療的価値:
    医師の検査技術(痛くない・見落としがない)、専門医資格、高精度な最新内視鏡システム
  2. 便宜的価値:
    駅チカ、広い駐車場、WEB予約のスムーズさ、土日検査の実施
  3. 感覚的価値:
    ホテルのような院内デザイン、完全個室のリカバリルーム、スタッフの優しい接遇
  4. 信頼的価値:
    検査後の丁寧な画像説明、がん予防に対する納得感、地域でのブランド力
  5. 時間的価値:
    待ち時間の短さ、事前来院なし(オンライン診療やweb問診)、スピーディな会計

自院のすべての項目を「オール5(合計25点)」にすることは不可能です。
競合と戦うためには、特定のステータスを突き抜けさせる長所伸展の戦略をとります。

自院のターゲット層に合わせて、例えば以下のような尖ったポジショニングを構築します。

パターン ターゲット層 研ぎ澄ます価値(長所伸展) 具体的な診療モデル
パターンA(時間・便宜特化型) 忙しいビジネスパーソン(30代〜50代男女) 時間的価値 × 便宜的価値 * 事前来院なし(オンライン事前説明、web問診)
* 土日検査に特化
* 胃カメラ・大腸カメラの同日検査を最短時間で実施
* WEB問診をフル活用し、院内待ち時間を極限まで削減
パターンB(感覚・信頼特化型) 初めて検査を受ける不安の強い方、高齢者、女性層 感覚的価値 × 信頼的価値 * 徹底したプライバシー配慮(女性医師在籍、レディースデイ)
* 鎮静剤を使用する苦痛の少ない検査
* 検査後の医師による丁寧でわかりやすい画像説明
* ホスピタリティ溢れるスタッフの接遇

このように、特定の価値を尖らせることで、「この特徴なら、近隣の競合がどうあれ絶対に負けない」という自院だけの強みを確立できます。
この強みが、商圏を近隣だけでなくより広範囲な地域へ拡大し、結果的に広い商圏でナンバーワンを目指す原動力になります。

第3章:ミスマッチを防ぐ「期待値コントロール」の重要性

コンセプトを尖らせる(長所伸展)ということは、裏を返せば「特定の患者様を諦める(切り捨てる)」ということでもあります。
しかし、これで良いのです。
ターゲットを絞り込むからこそ、そのコンセプトに共感した「コアなファン患者」が生まれ、高い満足度が自発的な良い口コミを呼び、集患の正のスパイラルが発生します。
ここで重要になるのが、尖らせたことによるデメリット(短所)を事前に患者様に開示し、ミスマッチを防ぐ期待値コントロールです

感覚的価値・信頼的価値を極大化したクリニックの例

あるクリニックでは、【不安のない安心感・丁寧なカウンセリング】をコンセプトに掲げていました。

  • 強み(尖らせた部分):
    女性医師による診療やプライバシーに配慮した個室対応に加え、検査前後のカウンセリングや画像を用いた丁寧な説明に十分な時間を確保。
    「苦痛や不安をゼロにする」手厚い診療を提供。
  • 発生した短所:
    お一人おひとりに十分な時間をかけるため、どうしても「時間当たりの検査枠数が限られる」「混雑時に待ち時間が発生しやすい」という短所が出た。

対期待値コントロールの徹底
このクリニックは、ホームページやWEB予約の確認画面に以下のようなメッセージを明記しました。

当院は、初めての方や不安が強い方にも安心して受けていただくため、『お一人おひとりへの丁寧な説明と寄り添った診療』を最優先のコンセプトとしております。そのため、診察やご説明にお時間をいただいており、混雑状況によっては待ち時間が発生する場合がございます。
「とにかく短時間でスピーディに検査を終わらせたい」という患者様のご要望には、お応えするのが難しい場合がございます。あらかじめ当院のスタイルをご理解いただいた上で、ご予約いただけますと幸いです。

このように事前にコンセプトを開示し、期待値をコントロールすることで、「とにかく早く終わらせたい」という層のミスマッチを防ぐとともに、「時間をかけてでも安心して受けたい」という女性患者様やご年配の患者様が集まるようになりました。
結果として患者様の満足度は非常に高くなり、「ここまで丁寧に説明してくれたのは初めて」「安心して検査を受けられた」といった高評価の口コミが広がり、コアなファンの患者様の獲得に成功しました。

これは内視鏡クリニックにおいても同様です。

「当院は忙しい方向けに無駄のない最短検査を提供します(よって、長時間の丁寧な対話は行いません)」、あるいは「当院は初めての方の不安を取り除くため、お一人おひとりに丁寧なカウンセリングを行います(よって、少しお待たせする場合があります)」など、コンセプトに合わせた期待値コントロールをWebサイトや案内物でしっかり発信しましょう。

結論:競合の出現は「自院の強みを研ぎ澄ます」最大のチャンス

近隣に新しい競合クリニックができたとき、それを単なるピンチと捉えるか、自院を強くするチャンスと捉えるかで、その後のクリニック経営は180度変わります。

競合を意識して「何でもできる平均点なクリニック」を目指すのではなく、自院の強みを改めて因数分解し、5つの価値のどこに15点満点を振り分けるのかを決定してください。
強みを尖らせ、ターゲットを絞り、そしてホームページ上で期待値コントロールをしっかりと行うこと。

これこそが、競合が現れたときに内視鏡クリニックがとるべき、最も本質的で強固な差別化戦略です。

他院の真似をする必要はありません。自院にしかできない「オンリーワン×ナンバーワン戦略」で、地域に根強いファンの患者様を増やしていきましょう。

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執筆者 : 内科・医療支援部

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