理想の診療フローの作り方:タイムパフォーマンスを高め、患者満足度を向上させる次世代のチーム医療

  • 内科(生活習慣病)
公開日
更新日
執筆者山田 海斗
コラムテーマ診療・業務効率化DX
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「待ち時間がどうしても長くなってしまう」
「スタッフも自分も常に時間に追われ、疲弊している」

このようなお悩みをお持ちの先生は多いのではないでしょうか。気管支喘息やCOPDなどの慢性疾患を適切に管理し、質の高い医療を提供し続けるには、医師がすべてを抱え込む従来のスタイルからの脱却が不可欠です。

本コラムでは、医師の負担を劇的に軽減し、効率的かつ患者満足度の高い「理想の診療フロー」の作り方を解説します。

理想の診療フローを描く「4つの基本視点」

現状の業務フローを見直す際、やみくもに業務をスタッフへ割り振るだけでは根本的な解決になりません。日々の業務をフロー化して現状を把握し、以下の「4つの視点」から徹底的に無駄を削ぎ落とすことが必要です。

  • 判断の回数を減らす:スタッフや医師が「どうするか」と迷う時間をなくします。「紙の問診票かWeb問診か」を都度判断せず、原則Web問診に統一するなど、現場の判断基準をシンプルにします。
  • 重複作業を減らす:受付、看護師、医師の各部署で同じカルテ確認を繰り返すような二度手間を見直し、情報の集約と確認フローの最適化を図ります。
  • システムへの手入力を減らす:紙問診の内容をカルテに入力するような手作業や、前回カルテのDo処方(同じ処方の繰り返し)を見ながら手打ちでカルテの型を作成するような手作業をやめ、システムの自動入力機能を活用します。
  • リソースをフル活用する:スタッフがわざわざ紙のファイルを別の部署へ運ぶのではなく、「患者さんの移動と一緒にファイルを移動させる仕組み」を作るなど、物理的・人的リソースの無駄な動線をなくします。

診療のボトルネック解消と「前倒しシフト」

上記の視点で分析すると、クリニックの三大ボトルネックである「医師によるカルテ入力」「診察室での問診」「受付・会計業務」が浮き彫りになります。これらに対し、的確な業務シフトを実行します。

  • 事務・インフラの省力化:自動精算機や電子処方箋を導入し、医療事務の作業負荷を削減します。
  • 医師の入力業務の削減:シュライバー(医師事務作業補助者)やAIシュライバーを導入し、1人あたり平均1分20秒(弊社調べ)かかるカルテ入力から医師を解放します。1日80人の診療なら約100分の時間創出に繋がります。
  • 検査の前倒し:診察室で医師が指示を出してから患者が検査室へ移動するフローを廃止します。詳細なWeb問診や事前の予診データをもとに、プロトコルに従って基本検査(X線や呼気NOなど)を診察前に完了させます。これにより、医師は「診察と結果解釈」にのみ集中できます。

定型業務の移譲と「Top of License」の発揮

診察後のフローにおいても、各スタッフが資格の限界(Top of License)まで業務を担い、医師は「最終的な医療的判断」に特化します。

  • 看護師への移譲:禁煙外来における初回カウンセリングや吸入指導、病識の啓蒙などは、完全に看護師へ移行させます。
  • 医療事務への移譲:医師が定めた明確な基準に沿って、定期検査の「異常なし」の通知や自動発送を委譲します。
  • システム・外部の活用:在宅酸素療法(HOT)の紙の指示書印刷やFAX送信を廃止し、電子署名とクラウド連携へシフトします。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査キットは業者からの自宅直送を活用し、定型的な説明は待合室での動画視聴へと代替します。

全員が連動する「4階層」の理想フロー

ここまで整理した要素を統合し、クリニックを明確な役割を持つ「4つの階層構造」として再設計します。

  • 来院前〜受付(システム):Web予約・問診、自動受付機が稼働し、「判断」と「手入力」を極小化します。
  • 診察前(有資格者・無資格者):事前のWebデータに基づき、必要な検査を前倒しで完了させます。待ち時間が「意味のある検査・指導の時間」へと変わります。
  • 診察(医師):すべての準備が整った状態で患者さんを呼び込みます。医師はシュライバーを活用し、「診断・治療方針の決定」という最重要業務に没頭します。
  • 診察後(有資格者・無資格者):吸入指導や次回予約は専門スタッフが引き継ぎ、医師はすぐ次の診察へ移行します。

生み出した「空き容量」で成長の歯車を回す

この理想の診療フローが定着すると、経営上の最大の果実である「空き容量(キャパシティ)」が生まれます。このゆとりを活用し、冬場の発熱・感冒患者の中に潜む「隠れ呼吸器疾患(隠れ喘息など)」のスクリーニングを積極的に実施します。

スクリーニングによって新規の専門患者が多数発見されても、インフラから価値創出層に至る強固なフローが確立されているため現場はパンクしません。見つけ出した専門患者をスタッフ主導で教育し、治療継続率を高めることで、1時間あたり15枠という高い生産性を維持しながら収益基盤を安定させることが可能になります。

「判断・重複・入力・リソース」の無駄を省き、医師とスタッフがそれぞれの専門性を最大限に発揮できる環境を整えることで、患者満足度とスタッフのやりがいを同時に高める盤石なクリニックを作り上げていきましょう。

執筆者 : 山田 海斗

大学を卒業後、船井総合研究所に新卒として入社。入社後は、医療業界のコンサルティングに従事し、主に呼吸器内科と消化器内科クリニックを専門としている。院長先生に心から『あなたがいてよかった』と思っていただくことを第一に、『即時業績アップ』という短期的な成果と、クリニックを核とした『地方創生』という長期的なビジョンの両方を、先生に深く寄り添い、伴走することで実現している。