※令和8年度(2026年度)診療報酬改定の内容に合わせて全面更新しました(2026年10月更新)
「血糖自己測定指導加算は、うちでも取れるのか?」
令和6年度改定で特定疾患療養管理料の対象から糖尿病が外れ、多くの内科クリニックが生活習慣病管理料に移行しました。それに伴い、これまで意識されることの少なかった「血糖自己測定指導加算」が、身近な算定項目になっています。
しかし実際には、HbA1cの条件や「月20回以上の測定」といった細かな要件があり、正しく運用できている院は多くありません。
本記事では、令和8年度改定後の最新ルールに沿って、以下の3点を解説します。
- 血糖自己測定指導加算の点数・算定要件(何を満たせば取れるのか)
- 血糖自己測定器加算との違い、CGM(リブレ等)の扱い
- 加算を「単発の500点」で終わらせず、糖尿病診療全体の収益と質の向上につなげる運用のポイント
血糖自己測定指導加算とは?【結論:500点・年1回】
血糖自己測定指導加算は、インスリンを使っていない2型糖尿病の患者さんに血糖自己測定(SMBG)をしてもらい、その記録に基づいて指導した場合に、生活習慣病管理料に上乗せできる加算です。令和8年度改定でも点数・要件の骨格は変わっていません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 点数 | 500点(年1回に限る) |
| 加算できる管理料 | 生活習慣病管理料(Ⅰ)・(Ⅱ)のいずれも可 |
| 対象患者 | 糖尿病が主病で、インスリン製剤を使用していない2型糖尿病の患者 |
| HbA1cの条件 | 算定する月または前月のHbA1cがNGSP値で8.4%以上(中等度以上の糖尿病) |
| 測定・指導の条件 | 血糖自己測定器で月20回以上測定してもらい、記録や生活状況の報告に基づいて指導し、療養計画に反映する |
| 材料費 | 試験紙・センサー・穿刺針・測定器などの費用は加算に含まれ、別に算定できない |
出典:令和8年 B001-3 生活習慣病管理料(Ⅰ)(しろぼんねっと)
算定要件を3つのポイントで整理
現場で算定漏れや査定につながりやすいのは、次の3点です。
ポイント1:対象は「HbA1c 8.4%以上・インスリン未使用」の2型糖尿病
対象は「中等度以上の糖尿病」と定義されており、算定する月か前月のHbA1cがNGSP値8.4%以上である必要があります。食事・運動療法や経口薬で治療中の患者さんが中心です。なお、GLP-1受容体作動薬などの注射薬で在宅自己注射指導管理料を算定している場合は、生活習慣病管理料自体が算定できない点に注意が必要です。
逆に言えば、HbA1cが改善して8.4%を下回った患者さんでは算定できません。「血糖コントロールが悪化した、あるいは治療強化を検討するタイミングの患者さん」に使う加算だと理解しておくと運用しやすくなります。
ポイント2:「月20回以上の自己測定」と記録に基づく指導が必須
患者教育の観点から、月20回以上の自己測定をしてもらい、測定値や生活状況を報告してもらう必要があります。そのうえで報告内容に基づいて指導し、療養計画に反映させることが求められます。
測定器を渡すだけでは要件を満たしません。測定記録の回収、指導内容、療養計画書への反映を診療録に残すまでがセットです。
ポイント3:材料費はすべて加算に含まれる
試験紙(センサー)、穿刺器、穿刺針、測定機器などの給付・貸与にかかる費用は、すべて500点に含まれます。通知上は皮下グルコース用電極(CGMのセンサー)も含まれる費用として明記されています。
そのため、使う機器や消耗品によっては採算が大きく変わります。導入前に「1人あたりの材料費」を確認しておくことが欠かせません。
「血糖自己測定器加算」との違い
名前が似ていますが、対象患者も算定の仕組みもまったく別物です。ひと言でいえば「インスリンを使っているか」で使い分けます。
| 比較項目 | 血糖自己測定指導加算 | 血糖自己測定器加算(C150) |
|---|---|---|
| 区分 | 生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)の加算 | 在宅療養指導管理材料加算(在宅自己注射指導管理料などに加算) |
| 主な対象 | インスリン未使用の2型糖尿病(HbA1c 8.4%以上) | インスリン等の自己注射を行う患者、12歳未満の小児低血糖症、妊娠中の糖尿病・妊娠糖尿病など |
| 点数 | 500点 | 測定回数に応じて段階的(月20回以上で350点〜) |
| 算定頻度 | 年1回 | 3月に3回まで |
| 位置づけ | 治療初期〜強化前の「教育」目的の測定 | 自己注射中の継続的な血糖管理 |
生活習慣病管理料は、在宅自己注射指導管理料(糖尿病の適応がある薬剤に係るもの)とは同時に算定できません。インスリン導入後は血糖自己測定器加算側に移る、という流れで整理しておくと迷いません。
令和8年度改定で変わった生活習慣病管理料のルール
血糖自己測定指導加算そのものは据え置きですが、土台となる生活習慣病管理料には5つの見直しが入りました。基本点数((Ⅰ)糖尿病760点、(Ⅱ)333点)は変わっていません。
| 改定項目 | 内容 | 糖尿病診療での実務ポイント |
|---|---|---|
| 糖尿病の眼科・歯科連携の評価を新設 | 眼科医療機関連携強化加算・歯科医療機関連携強化加算(各60点・年1回)。(Ⅰ)(Ⅱ)どちらにも加算可 | 紹介状を出し、次回受診時に受診状況を確認・記録した日に算定。診療情報提供料(Ⅰ)と同月でも算定可 |
| 外来データ提出加算の見直し | 従来の外来データ提出加算に代わり、充実管理加算1〜3(30/20/10点・月1回)を新設 | 要届出。外来医療等調査へのデータ提出と、質の高い生活習慣病管理の実績が前提 |
| (Ⅱ)の包括範囲の見直し | 別途算定できる医学管理料等が16項目から37項目に拡大。糖尿病以外の適応の薬剤に係る在宅自己注射指導管理料も算定可能に | 外来栄養食事指導料など、多職種による指導を出来高で算定しやすくなった |
| (Ⅰ)の要件見直し | 原則6か月に1回以上の血液検査が必要に(健診結果を参照できる場合等は除く) | (Ⅰ)を選ぶ患者の検査スケジュール管理が必要 |
| 療養計画書の負担軽減 | 患者の署名が不要に | 作成・交付・説明と同意は引き続き必要。署名回収の手間が減った分、説明の質で差がつく |
出典:【2026年度改定対応】生活習慣病管理料算定ガイド(メディコムパーク)、令和8年 疑義解釈(その5)問12(しろぼんねっと)、令和8年 疑義解釈(その1)問34(しろぼんねっと)
よくある質問
Q. リブレなどのCGMを使っても算定できますか?
通知では、皮下グルコース用電極(CGMのセンサー)も加算に含まれる費用として挙げられています。つまりセンサー代を別に請求することはできません。センサーは試験紙より高額になりやすいため、500点の範囲で採算が合うかを事前に確認してください。運用方法は地域の審査傾向も含めて確認しておくと安心です。
Q. 生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらで算定すべきですか?
どちらでも算定できます。(Ⅰ)は検査・注射が包括、(Ⅱ)は出来高です。なお、(Ⅰ)を算定した月から6か月以内は(Ⅱ)を算定できないため、患者ごとの受診・検査頻度に合わせて選びます。
Q. 初診の月に算定できますか?
できません。生活習慣病管理料は初診料を算定した月には算定できないため、この加算も翌月以降になります。
Q. 途中でインスリンを導入した場合は?
対象外になります。インスリン導入後は在宅自己注射指導管理料と血糖自己測定器加算で管理する形に切り替わります。指導加算の時期に血糖自己測定の習慣をつけておくと、導入後の自己管理もスムーズです。
Q. HbA1cが8.4%未満の患者さんには使えませんか?
加算の要件としては算定できません。ただし、自己測定による教育効果は8.4%未満の患者さんにもあります。保険算定とは切り離し、院内の療養指導プログラムとして設計する院もあります。
【コンサル視点】500点単体で見ると小さい。だから「糖尿病管理パッケージ」で設計する
結論から言うと、血糖自己測定指導加算は単体では大きな収益になりません。価値があるのは、この加算をきっかけに「測る→記録する→指導する→続ける」という仕組みを院内に作り、周辺の評価と患者さんの継続通院をまとめて取りにいくことです。
糖尿病を主病として生活習慣病管理料を算定している患者さんが300人のクリニックを想定して、令和8年度改定後の関連項目を試算しました。
| 項目 | 試算の前提(仮定) | 年間の目安 |
|---|---|---|
| 血糖自己測定指導加算 500点 | 対象(インスリン未使用・HbA1c 8.4%以上)が1割の30人 | 約15万円(材料費控除前) |
| 眼科医療機関連携強化加算 60点 | 眼科未受診の半数150人を紹介 | 約9万円 |
| 歯科医療機関連携強化加算 60点 | 歯科未受診の半数150人を紹介 | 約9万円 |
| 充実管理加算3 10点(月1回) | 300人全員、要届出 | 約36万円(加算1の30点なら約108万円) |
| 継続通院による管理料の維持 | 中断を10人防ぐ((Ⅱ)333点×12か月) | 約40万円 |
※1点10円で計算。患者数・割合は説明用の仮定です。
加算を一つずつ見ると数万〜数十万円ですが、合わせると年間100万円を超える規模になります。そして最も大きいのは、最後の行の「中断を防ぐ」効果です。血糖自己測定で数値の変化を患者さん自身が実感できると、治療への納得感が上がり、通院が続きやすくなります。
取りこぼす院に共通する3つのパターン
- 対象患者を抽出していない:HbA1c 8.4%以上・インスリン未使用の患者さんを毎月リストアップする仕組みがなく、医師の記憶頼みになっている
- 測定器を渡して終わっている:記録の回収・指導・療養計画書への反映が診療録に残っておらず、要件を満たせていない
- 医師が1人で抱えている:説明や記録確認を看護師・管理栄養士に任せられず、忙しい外来で後回しになる
明日から始める導入・運用の5ステップ
要件を満たしながら医師の負担を増やさないためには、役割分担を先に決めておくことが重要です。
- 対象患者を毎月抽出する(事務):電子カルテ・検査結果から「糖尿病が主病・インスリン未使用・当月か前月のHbA1c 8.4%以上」の患者さんをリスト化し、診察前にカルテへフラグを立てる
- 医師が必要性を伝え、同意を得る(医師):「1か月、ご自身の血糖の動きを見てみましょう」と目的を短く伝える。詳しい説明は次のステップに任せる
- 測定方法と記録のルールを説明する(看護師・管理栄養士):測定器の使い方、月20回以上の測定タイミング(食前・食後など)、食事や運動のメモの付け方を説明し、記録用紙やアプリを渡す
- 記録を回収して指導する(看護師・管理栄養士→医師):次回受診時に記録を回収し、血糖の動きと生活の関係を一緒に振り返る。医師は要点を確認して指導し、療養計画書に反映する
- 算定と記録の確認(事務):指導内容・療養計画への反映が診療録に残っているかを確認し、加算を算定。あわせて眼科・歯科の受診状況も確認し、連携強化加算の算定につなげる
この流れを一度作ると、同じ導線で外来栄養食事指導や眼科・歯科連携も回せるようになります。「血糖自己測定指導加算のための仕組み」ではなく「糖尿病患者さんを継続的に管理する仕組み」として設計するのがポイントです。
まとめ:加算を「入口」に、糖尿病診療の質と収益を同時に上げる
- 血糖自己測定指導加算は500点・年1回。対象はインスリン未使用・HbA1c 8.4%以上の2型糖尿病で、月20回以上の測定と記録に基づく指導が必要です
- 令和8年度改定では、眼科・歯科連携強化加算や充実管理加算の新設、療養計画書の署名不要化など、生活習慣病管理料の周辺ルールが変わりました
- 加算単体では小さくても、「測る→記録する→指導する→続ける」仕組みを作れば、連携加算・継続通院まで含めて年間100万円以上の差になり得ます
令和6年度改定で生活習慣病管理料に移行して2年あまり。「とりあえず算定はしている」段階から、「管理料の仕組みを使って患者さんを継続的に支える」段階へ進むかどうかで、今後の差は広がっていきます。


