医療法人社団草思会様
今回は医療法人社団草思会の理事長、窪田 彰先生に取材をさせていただきました。
医療法人社団草思会様では「この街で、のびのび自然体で暮らせるように」をテーマに、2つの精神科・心療内科クリニックでの外来診療に加え、デイケアや訪問診療、訪問看護ステーション、就労支援施設も備えた、「多機能型精神科診療所」を運営していらっしゃいます。
多機能型精神科診療所としてクリニック・各施設を運営するまでの道のりや、運営方法についてお話をお伺いしました。
◆クボタクリニックを開業するまでの道のりを教えてください。
私は元々、錦糸町にある都立墨東病院に勤務していました。
墨東病院は東京下町の都立総合病院ですが、1973年に日本で最初の精神科救急事業を始めました。墨田区・江東区・江戸川区の人口は140万人くらいですが、当時の日本の平均からすれば、この地域に精神科病院は10か所以上が必要でした。しかし精神科病院は全くなく、錦糸町に来たときに私は「日本最大の精神病床過疎地域」だなと感じました。ですから特に精神科地域ケアが求められたのです。
精神科救急事業が始まると、多くの患者さんが30床の精神科救急病棟に入院しました。熱心な支援をしたので短期間で退院ができて、退院後も職員に会いにまた病棟に遊びに来てくださる方がたくさんおられました。退院してもすぐに働けるようになる方は少なく、中々自分の居場所を見つけることができず、症状を再発させてしまう方もいらっしゃいました。
このような状況を見て、「街の中に退院後の患者さんの居場所が必要」と感じ、寄付を募ってまずは患者さんが集まることができるクラブハウス「友の家」を作り、その後共同作業所も開設いたしました。このような地域に広がった福祉的活動を支援する目的もあって、クボタクリニックを1986年に錦糸町に開業しました。
クボタクリニック開業後は、デイケアも併設し訪問看護も実施すると「多機能型精神科診療所」といえる様になってきました。
◆クボタクリニックの周辺には多くの施設が点在していますね。
最初からこうしようと思ったわけではなく、結果としてこのような形になったのですが、クリニックが地域に根付いていくために必要なことだったと思います。
大きな病院のように、1箇所に固めて施設を創ってしまうと、地域の方からも「ここは精神障害の世界」という認識をされてしまい、街と分断されてしまうことがあります。
小さな施設が様々な場所に散らばっていれば、それぞれの施設が街に溶け込むことができます。
また、患者さんが街全体に対して親近感を覚えることができ「ここは自分たちの街で、自分たちの場だ」と感じてもらえるようになります。
◆これだけ多くの施設があると連携や統括が大変なのではないかと思うのですが、どのような取り組みをされていますか。
スタッフの勤務場所を、1施設に限定しないようにしています。
人間は、決まった場に固まりたがる生き物なので、固定して働く場所ができてしまうと他の施設の職員と交流しようという意識が少なくなってしまいます。
そこで1人あたり2〜3施設にまたがって勤務するようにし、それぞれ主たる勤務場所は異なっていても「錦糸町の街全体が自分たちの職場」と感じられるようにしています。
また、情報交換・情報共有も頻繁に行っています。
1日が終わると拠点ごとにミーティングを行い、さらに外来に各所からも集まって全体ミーティングを行います。その他にも管理職会議は週に1度、組織全体でも月に1度会議の機会を設けています。
情報交換・共有をこまめに行うことで、法人全体を見る視点が備わっていきます。
◆これから「多機能型精神科診療所」を作るためにはまず何から取り組むべきでしょうか。
まずは、訪問看護から始めることをお勧めいたします。
訪問看護を必要とされている方は非常に多くいらっしゃいますので、まずは診療所にて訪問看護を始め、ご利用の方が増えてきたら訪問看護ステーションの立ち上げへと進めていただければと思います。
既にクリニックを開設している場合には、看護師スタッフの人件費と家賃以外に投資費用は基本的に不要なので、まずは取り組みやすいのではないでしょうか。
◆今後どのようなことに取り組んでいきたいとお考えですか。
地域に更に溶け込む施策の1つとして、街の中にものを売る小売店を開設したいと思っています。ここを地域の方々との繋がりの窓口として、交流をより深める場にできればと思っています。
また、うつ病等の精神疾患を併発した妊産婦さんへの支援も、精神科・心療内科で取り組んでいくべきだと思っています。
今はまだこちらからの告知が不足していると思うので、これから広報活動も進めていきたいですね。
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