vol.59 「クリニック経営における人材募集のポイント」
2015年8月30日配信
2013年には、『ブラック企業』という存在が社会的に認知され、流行語となった。
その存在が白日のものとなり、場合によっては公表されブランド力が傷つき
組織として立ち行かなくなってしまうケースも出ている。
特に、大企業であればあるほど、その『雇用環境』が法令順守がなされているか
どうかを厳しい目で見られている。
おのずと、雇用環境整備がなされていない組織には有能な人材が集まらなくなってきている。
情報化社会の中、一度でもブラック企業と認定されればたちまちその情報は広がり、
ブランド力の回復に何年もかかったり、大きな投資をしないと挽回できなくなったり、
最悪の場合は倒産することだってある。
医療経営において、こういった世の中の時流をどう捉えるべきだろうか?
私は、医療経営においても人材確保を経営の中心に据える時代にきていると考えている。
優秀な人材が集まる医院づくりをしないと、5年後、10年後に生き残ってはいけないと考えている。
しかし、この考え方に共感していただけたとしても、
現実的にはさまざまなジレンマを抱えている先生も多いだろう。
たいていの医療機関は一人医師と片手で足りる程度の人数で運営されている。
いわば中小企業の中でも、零細企業と言われる程度の規模で、
大企業のように『雇用環境』を整備することは現実的に難しい側面もある。
誰かが有給休暇をとればたちまち人手不足になり、診療が立ち行かなくなる。
だからといって有給休暇のために常に余剰な人材を抱えておく体力もない。
それでも、人材を選ばなければスタッフを採用することは十分可能だ。
しかし、こと優秀な人材を確保したいという観点に立てば、一気にそのハードルは高くなる。
優秀なスタッフと一口に言っても、その定義はさまざまだと思うが、どのような定義をしたところで、
今の時代優秀なスタッフが雇用環境の整っていない医院へ応募することは極めて少ないし、
運よく採用できたところで定着してはくれない。
私は、そういった雇用環境整備を十分にできる財務体力をつけるためにも
医院としてのひとつの成功ラインである医業収入1億円まではしっかりと規模の拡大のための
マーケティングを実施、そこからはより人材投資に向かうことをおすすめしている。
私のクライアントさんでは、組織が次のステージに行くタイミング、ある程度の規模になると
定期的に経営方針発表会を実施していただいている。
複数医院を運営する医療法人では、経営方針発表会を先日実施し、
明快に『雇用環境整備』について言及、宣言していただいた。
具体的には、
・有給消化率100%の実現
・産休・育休制度の積極的利用の推奨
・アニバーサリー休暇の導入
・努力が報われる評価制度の導入
・将来のキャリアが見えるキャリアパスの導入
・年間1度の社員旅行の実施
などを伝えていただいた。私も驚くほど、一気に医院の雰囲気が良くなったと感じている。
形や側だけ整えてすべてがうまく循環するわけではないが、
院長の本気の姿勢がスタッフの心に届く瞬間を目の当たりにした。
スタッフの自律や自発性を望む先生はとても多い。そういった能力は個々人の素養だったりもする。
どんなに教育しても自律できない、自発性が醸成されないスタッフもいる。
しかし、素養を持ったスタッフが本当に自律や自発性を発揮するためには、
『雇用環境整備』という土台が必要になってきているように感じる。
医療という社会インフラにおいて、患者さんの健康のために時間を惜しまず献身的に仕事をする。
そういった美学は、もう通用しない時代に入ってきている。
Customer Satisfaction(顧客満足度)を優先した医療経営は終焉を迎えるかもしれない。
今後の医療経営に必要な考え方は、Employee Satisfaction(従業員満足度)の最大化が
Customer Satisfaction(顧客満足度)の最大化を生み出すと考えていく必要がある。
人材はコストではなく、投資。と考えられるかどうかが、分岐点なのかもしれない。
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