医療法人社団FOREST もり脳神経外科クリニック

今回は、東京都品川区の荏原町駅直結のビルに位置する「もり脳神経外科クリニック」の
院長 森 達郎 様にインタビューをさせていただきました。
本インタビューではもり脳神経外科クリニックが地域医療に貢献しながら持続可能な経営を実現している取り組みについて、お話を伺いました。

◆開業の経緯とクリニックの長所を教えてください。
開業当時、脳神経外科は診断にCTやMRIといった高額な医療機器が不可欠であり、手術が前提となるため、一般的にクリニックとしての開業は難しい科目と言われていました。それでも、長年脳神経外科医として培ってきた専門知識と技術を地域医療に活かしたいという強い思いから開業を決断しました。
また、質の高い診断のための「武器」として、当時クリニックではまだ珍しかった1.5テスラMRIの導入が不可欠だと考えました。

このMRIがあるからこそ、当院では2016年の開院以来、専門性の高い医療を提供し、診察当日の撮影から結果説明まで迅速に行えることが大きな強みとなっています。

◆高額なMRIの導入は大きな投資だったと思いますが、その戦略と運用について、どのような工夫をされたのですか？

高額な医療機器の導入は大きなリスクです。CTかMRIか、そして機種についてもかなり熟慮しました。最終的には、当時の状況やコストパフォーマンス、MRAやDWIの活用、VSRADの診断など、必要な機能を考慮して、1.5テスラのMRI装置を選びました。単に最新機器を入れるのではなく、クリニックの規模や経営状況、提供したい医療の質を総合的に判断した結果です。

このMRIを最大限に活用するためには、工夫が必要です。まず、受診当日のMRI検査と結果説明を基本にしています。中核病院では難しいですが、当クリニックでは受診されたその日のうちにMRI検査を行い、結果を説明することで、迅速な対応が患者さんの安心感に繋がると考えています。予約枠を設けつつも、緊急性の高い方には当日対応できるようにしています。
それから、地域連携によるMRIの共同利用も積極的に行っています。整形外科の先生からは脊椎や関節、耳鼻科や眼科の先生からは画像診断の補助として、さらには内科の先生からも依頼があります。これにより、稼働率向上だけでなく、地域との連携も強化できています。

◆患者さんに選ばれるクリニックであるために、患者満足度を高める上で特に力を入れていることはありますか？

患者さんに選ばれるクリニックであるために、きめ細やかな配慮を心がけています。例えば、画像検査の結果は、MRIやエコーの画像を持ち運びやすいA5サイズにプリントアウトしてお渡ししています。ご自身の検査結果を手元で確認できることで、病状や診断への理解と納得度が深まり、安心感に繋がると好評です。
また、クリニックの満足度において待ち時間は非常に重要なので、予約優先制や診察の効率化に努め、待ち時間の短縮を図っています。カルテ記載も、患者さんをお待たせしないよう、作業のタイミングや進め方を工夫しています。

そして、患者さん対応においては、スタッフの果たす役割が非常に重要だと考えています。受付スタッフや診療放射線技師、看護師など、スタッフの働きがクリニック全体の印象や患者さんの満足度に大きく影響します。
当クリニックではスタッフの定着率が高く、開業当初から勤務しているスタッフも多いです。このことは、質の高い医療提供を可能にし、そしてそれが経営の安定にも繋がっていると感じています。

◆最後に、地域医療における脳神経外科クリニックの役割と、先生の今後の展望についてお聞かせください。

当クリニックは、頭痛、めまい、しびれといった日常的な症状の診療に加え、高齢化社会における認知症対策、脳卒中予防のための生活習慣病管理など、幅広い役割を担っています。重症度の高い患者さんを早期に発見し、近隣の基幹病院と連携して迅速な治療に繋げるハブとしての機能も果たしています。
将来的には、手術を行う病院とそうでない医療機関との役割分担が進むと考えられます。その中で脳神経外科クリニックは、「本当に手術が必要な患者さんを的確に見極め、地域の基幹病院と緊密に連携することで、診断から手術までワンストップでスムーズに移行できる体制を構築する」という役割を担うべきだと考えています。
さらに、クリニックの運営を「事業」として捉え、戦略的な計画のもとに着実に実行していくことが、質の高い医療を持続的に提供するための基盤となると考えています。ホームページを自作するなど、ブランディングやイメージ作りにも力を入れています。
また、予防から介護まで、患者さんのライフステージ全体を支えたいという思いがあります。