医療法人社団おうちの診療所


医療法人社団おうちの診療所
中野 院長 石井 洋介 氏

本日は、在宅医療を提供する「医療法人社団おうちの診療所」の設立経緯から組織運営、今後の展望について、おうちの診療所 中野 院長 石井様にお話を伺いました。在宅医療への熱い想いと、革新的な取り組みについてインタビュー形式でお届けします。

船井総研:今回は「医療法人社団おうちの診療所」様の様々な側面についてお伺いできればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。まずは、開業経緯からお話をお伺いできますでしょうか。2020年の5月頃、コロナ禍でのスタートだったと伺っております。当初は何名くらいのスタッフで開始されたのでしょうか。


先行き不透明なコロナ禍の開設について

石井様:
はい。元々、医師4人で話を進め実質的に診療を行っていたのは3人で、看護師1名と事務1名(非常勤)という体制でスタートしました。
開業当初は収益がなかったため、医師3人はアルバイトをしながら無収入で始めたという状況でした。患者さんの当てがあったわけではなく、ゼロからのスタートでした。初年度の患者数は41人で、2022年5月の時点では倍の成長を遂げていました。最近は成長のペースは緩やかになりましたが2025年3月現在は全体で600人以上の患者さんを診ています。


連携先と信頼関係を築いたうえでの患者さんのご紹介

船井総研:
素晴らしいですね。初期の段階で患者さんを増やしていく上で、様々なご苦労もあったかと思いますが、どのような活動をされたのでしょうか。

石井様:
元々、2月頃に開業が決まり、物件も決めていたのですが、ちょうどコロナウイルスの影響が出始めた頃でした。当初は、他の医療機関やケアマネジャーさんなどへの挨拶回りも考えていましたが、コロナ禍でそれも難しく、最初は苦労しました。
そのような状況の中、新しく開設される施設などに営業担当の方を通じてお願いし、患者さんを紹介してもらう形でスタートしました。ちょうど近くに新しい施設ができるタイミングだったこともあり、そこから最初の患者さんの紹介があったという経緯があります。

船井総研:
現在、ご紹介元の割合としては、病院、ケアマネジャー、施設などで、それぞれどのくらいの割合になっているのでしょうか。

石井様:
現在は施設の患者さんが6割、居宅が4割程度です。施設からの患者さんは全て施設からの紹介となります。居宅に関しては、病院から直接、ケアマネジャーさんから、訪問看護ステーションからと、ほぼ1対1対1くらいの割合ですね。新規の患者さんの割合も居宅の方が多く、病院からの紹介でそのままお看取りまで至るケースも多いです。


より多くの患者さんを診察し地域医療貢献するための分院展開

船井総研:
規模が大きくなり、分院という形になったのは開業からかなり早かった印象を受けますが、2年目ということでしょうか。

石井様:
そうですね。おそらく分院を考え始めたのは1年ちょっと経った頃だと思います。教科書的に患者さんが300人を超えるあたりで、1つの診療所だけで全てを把握するのが難しくなると聞いていました。
また、早い段階で拡大することで、再現性があるのか、拡大する上でのポイントはどこにあるのかを余裕があるうちに確認しておきたいという思いがありました。今思うと、少し早すぎたかもしれません。

船井総研:
分院の場所ですが、目黒から直線距離で10kmほど、車で1時間かからない程度の距離ですね。この距離に関しては何か理由があるのでしょうか。

石井様:
緊急時の対応を考えると、車で20~30分で駆けつけられる距離が限界だと考えています。都内だとそのくらいの距離感になるかと思います。地方に行けばもう少し広がると思いますが、東京はどこも混んでいますので。そのため、半径6kmを目安にしました。


医師同様に活躍する診療看護師(NP)

船井総研:
これだけの成長を遂げられた中で、診療に集中できるような体制を整えるために診療看護師(NP)の方を活躍されていると伺いました。昨年4月からとのことですが、NPさんの活躍状況はいかがでしょうか。

石井様:
NPさんとの出会いは、偶然求人に応募してきてくださったのがきっかけでした。私自身、NPのことを詳しく知っていたわけではなく、手技に強くて医師のタスクシフトを担うため病院で活躍されるイメージだったのですが、お話を聞くうちに、できることの多さに驚き、むしろ在宅医療の分野でこそ活躍できるのではないかと感じました。
最初の一年間は、医師に同行する訪問診療看護師として動いてもらっていましたが、初期評価やトリアージの面でも高い能力があることが分かり、医師の代わりに処置ができるのではないか、緊急時に反対側にいる医師が駆けつけるのに時間がかかる場合でも、NPが対応できるのではないかと考えるようになりました。
現在は、目黒の拠点などにNPが待機し、そこから30分圏内であればすぐに駆けつけられる体制を構築中です。簡単な処置や、搬送が必要かどうかの判断であれば、医師と遜色ない能力を発揮していただけると期待しています。位置づけとしては、みなし訪問看護として動いています。エコーなども使えるため、その場でオンライン診療につなぎ、医師が指示を出すという連携も行っています。


質の高い在宅医療を目指すための独自に定める質指標「QI-8」について

船井総研:
質の高い在宅医療を目指すためにモニタリングされているとのことですが、具体的にどのような指標で管理されているのでしょうか。

石井様:
居宅で患者さんと1対1になる訪問診療は診療の質が見えにくくなります。そこで緊急往診率、緊急コール率など8つの指標を独自で定め数値指標化しています。例えば、緊急往診率は全患者数当たりの緊急往診発生数で算出しています。「打率」のような指標を見て、緊急往診率が異常に増えたり減ったりしていないかを確認しています。また、転倒や新規の褥瘡、疼痛管理不良など、質に関係すると思われる各イベント数も、個別に確認するようにしています。


船井総研:
これだけの規模になると、スタッフの方も増え、先生の目が行き届かない部分も出てくるかと思います。評価制度や賃金制度はどのように導入されたのでしょうか。

石井様:
分院を設立した1年半~2年目くらいのタイミングで、評価制度と賃金制度を導入しました。人数が増え、誰がどのように頑張っているのかが分かりにくくなったためです。当時は、常勤が10人~15人くらいの規模だったと思います。
評価項目としては、「診療の質」と「関係の質」の2つを大きな柱としています。診療の質を向上させることと、スタッフ間の心理的安全性を維持することが、組織の成長には不可欠だと考えています。関係の質を高めるためには、カンファレンスでの発言力や、職種を超えて意見を言える環境づくりが重要だと考えています。

船井総研:
関係の質を高めるための具体的な取り組みとして、週に1日のカンファレンス日を設けているとのことですが、どのような内容なのでしょうか。

船井総研:
週に4日のみ定期訪問を行い、月曜日をカンファレンス日としています。午前中は緊急訪問に対応し、午後は全てのスタッフが集まってカンファレンスを行っています。各拠点から集まる対面会議は月に2回、月2回は各拠点で遠隔開催しています。半年に1回は、スタッフ全員が対面集合し、丸1日対話を行う日を設けています。在宅医療は治療だけを目的としないので、正解のない課題も多くあります。建設的な議論や対話のスキルが診療の質を維持するためにも必要なので、こうした時間を設けています。
そのためには、スタッフ間のコミュニケーションが重要であり、カンファレンスの時間が不可欠だと考えています。


業務効率化のためのIT活用

船井総研:
DXにも力を入れているとのことですが、最もインパクトが大きかった取り組みは何でしょうか。

石井様:
自動化ですね。例えば、事務の方が手作業で行っていた未処理業務のリマインドを自動化するツールを導入しました。また、シフトやマニュアル、議事録、共有レポートといった情報共有やタスク管理、QI-8の集計などにNotionを活用し、業務の効率化を図っています。エンジニアを採用し、ツールの導入だけでなく、その活用方法まで丁寧に指導してもらったことが、大きな価値だったと感じています。ITが苦手なスタッフも積極的に活用しており、業務改善の実感につながっているようです。


今後の展望について

船井総研:
ありがとうございます。最後に今後の展開についてお聞かせいただけますでしょうか。

石井様:
今後も質の高い在宅医療を提供できるよう、組織体制の強化やDXの推進を図っていきます。また、地域包括ケアシステムの構築に向け、様々な連携を深めていきたいと考えています。

船井総研:
本日は貴重なお話、誠にありがとうございました。

石井様:
こちらこそ、ありがとうございました。

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