
医療法人社団 正念 ほどがや脳神経外科クリニック 理事長・院長 日暮 雅一 様
今回は、神奈川県横浜市保土ヶ谷区にある「ほどがや脳神経外科クリニック」の院長 日暮 雅一 様にインタビューをさせていただきました。
Q1. 大学病院の最前線から、横浜市保土ケ谷区での地域密着の開業へ。そのキャリアの軌跡と決意の背景をお聞かせください。
私のルーツを辿ると、父や祖父が歯科医師、叔父が医師という、地域に根ざした開業医の家系で育ちました。そのため、自分自身も最終的には「開業」という形で地域医療に貢献することが、自然な将来のゴールとして頭にありました。
脳神経外科医となってからは、大学病院や主要な基幹病院で、顕微鏡手術(マイクロサージェリー)や救急医療の最前線に没頭する毎日を送っていました。そのキャリアの大きな転機となったのが、38歳の時に経験したオーストラリアへの留学です。そこでは研究活動(リサーチフェロー)に従事しながら、夜はしっかりと眠り、自分や家族との時間を大切にするという、極めて健康的で豊かなライフスタイルを経験しました。それまで最前線に立ちながら全力で走り続けてきた日々を一度振り返り、医師としての自身の健康や生き方、そして提供すべき医療のあり方を深く見つめ直す貴重な機会となったのです。
また、医療技術の変遷を肌で感じる中、高度な手術で急性期の患者様を救うやりがいを実感する一方で、得意とする顕微鏡手術の適応症例の減少、「原因が分からない不安を抱えて来院される外来の患者様とじっくり向き合い、脳神経内科的なアプローチで丁寧に問診・診断治療するプロセス」に、医師としての深い面白さと知的好奇心を強く感じるようになりました。
40歳を迎える頃、これからの自身のライフステージや、地域医療へより深くコミットしていく形を模索する中で、「これまで培ってきた専門知識や診断技術を、最もダイレクトに、自分の責任と裁量で患者様に還元できる場所を作ろう」と、当時生活圏としても馴染みの深かった保土ヶ谷の地での開業を決意いたしました。
Q2. 診療において最も大切にされている「想い」と、医師自身の「ウェルビーイング」との繋がりについて教えてください。
当院では「頭痛」「認知症」「脳卒中」を3大看板に掲げ、地域の頼れる相談窓口、そして、しびれやてんかんや脳腫瘍などといった、自分に弱い領域を、多くの優れた代診を入れることで、高度な専門治療をスムーズに繋ぐ「ハブ機能」を担うことを使命としています。
その診療の中で、最も大切にしているのは「患者様やご家族のお話を決して否定せず、じっくりと耳を傾ける(傾聴)」問診スタイルです。頭痛や認知症といった脳の不調は、患者様一人ひとりで生活背景や痛みの表れ方が異なり、画像検査だけでは捉えきれない要因が潜んでいることが多いからです。
例えば、慢性頭痛(片頭痛)の継続治療においては、頭痛ダイアリーを患者様と共に読み解き、きめ細かな生活習慣のアドバイスやカウンセリングを行うなど、丁寧に向き合っています。目の前の患者様の不安に徹底的に寄り添い、真摯に耳を傾ける姿勢こそが、地域の皆様からの信頼にもつながると考えております。
そして、こうした診療を支える当院の最優先の土台は、医師自身が心身ともに健やかで、精神的・体力的なゆとりを保ち続けること(ウェルビーイング)です。私自身、医療に全力で尽くす一方で、一人の人間として人生を充実させる時間や、心身をリフレッシュする機会も同じように大切にしています。

院長自身が心身ともに良好な状態を保つことで、どのような時も目の前の患者様へ常にベストな医療と安心を提供できると考えています。これこそが、当院が貫いているクリニック運営の核心です。
同時に、経営者としての客観的な視点を持てば、クリニックの重要な資産であるMRIを、検査を必要とする方に適切にお届けし、その稼働をしっかりと担保していくことも極めて大切です。
頭痛やめまいといった症状の背景を明らかにするために検査を必要とする患者様に対し、MRIを用いて迅速かつ正確な診断を行うこと。こうした地域における確かな医療ニーズに真摯に応え、大切な医療機器を適切に稼働させていくことは、確かな安心を地域に提供すると同時に、クリニックの健全な運営を維持する原動力となります。
このような日々の安定した稼働と、無理のない確かな運営の積み重ねがあるからこそ、私たちはブレることなく、すべての患者様お一人おひとりと誠実に向き合い続けることができているのだと感じています。
Q3. 高品質な診断を迅速に届けるために、検査機器の導入や診療フローにおいてどのような工夫をされていますか?
当院では、高度な診断をその日のうちに迅速に届けるため、画質を大幅に向上させるAI(ディープラーニング)補正技術を搭載した「先進の1.5テスラ新型MRI(キヤノン製)」を導入しその後バージョンアップしました。この補正機能により、診断に必要な高画質を維持したまま、撮影時間を短縮することが可能となりました。もちろん、単に撮影時間を短くするだけではなく、各疾患に必要な複数の撮影シーケンスをパッケージ化し、妥協のない画像診断のクオリティを担保しています。
また、MRI検査において重要なのは、撮影時間の短縮以上に、ご高齢の患者様や認知症患者様の移動やご案内をいかにスムーズに行うかという現場のサポート体制です。歩行に不安がある方や車椅子の患者様に放射線技師や看護師が優しく寄り添い、安心感を持っていただきながらも、タイムロスなく速やかに検査へご案内できるよう連携を徹底しています。この一連のフローを最適化することこそが、クリニック全体の円滑な稼働と、患者様の待ち時間短縮に直結していると考えています。
さらに、日々患者様と向き合う中で、検査前の待ち時間以上に、検査が『終わった後』の結果説明を待つ時間の見通しが立ちにくいことが、より心理的な負担が大きくなりやすいという点に着目しました。そのため、画像が上がったら「すぐに結果説明を行い、速やかに会計を済ませてお帰りいただく」診療フローのコントロールを重視しています。緊急の脳卒中や外傷の患者様にも即座に対応できるよう、予約枠の間に適切な「隙間(バッファ)」を設けたスケジュール管理も、高い医療品質を守るための大切な工夫です。
Q4. スタッフの採用や育成、配置など、日々の組織運営において意識されていることは何ですか?
現在、当院には多くの優秀な脳神経外科専門医の先生方が在籍しており、しびれ外来や物忘れ外来などの多角的な専門診療を展開しています。現在は、地域の患者様のニーズや日々の混雑状況に応じて、私自身の診療枠を柔軟に調整しながら、常に一貫性のある質の高い医療を提供できる自律的な体制を整えています。
また、スタッフマネジメントにおいては「過剰に干渉しすぎず、自律を促すこと」を大切にしています。良かれと思った過剰な教育や細かな指示は、時に『干渉』となってスタッフの主体性を奪ってしまいかねません。だからこそ、情報共有と挨拶といった基本を大切にしながら、私自身が率先して動く「背中」を見せることで、スタッフが自発的に空気を読み、連動して動いてくれる良好な調和が生まれています。
細かな指導や指示を押し付けるのではなく、重要な情報共有や日々の気持ちの良い挨拶といった基本を大切にしながら、私自身が率先して動く「背中」を見せることで、スタッフが自発的に空気を読み、連動して動いてくれる良好な調和が生まれています。
このように過剰に管理しないことで、スタッフ自身が主体的に判断して動くゆとりが生まれ、急な欠員の際にも代診の先生方やスタッフが自発的にカバーし合う強固なチームワークが育まれます。これこそが、結果としてスタッフ自身の働きやすさ(ウェルビーイング)につながる原動力となっています。
こうしたチームワークを築くためにも、採用の際には書面上の情報だけでなく、面接時の表情や仕草、態度から伝わる『誠実さ』や、当院の雰囲気に合うかどうかのフィーリングをとても大切にしています。
また、広報活動についても、ホームページなどを中心に、必要な情報を丁寧にお届けする発信を心がけています。最近はじめたインスタグラムで、最新情報・医療の裏側・本には載っていないような内容を中心にアップして、医者から患者層へ直接届ける努力もしています。適正なペースを維持することで、私やスタッフが心身のゆとりを持ち、患者様お一人おひとりに丁寧に向き合う医療とウェルビーイングを両立させています。
Q5. これからの医療環境を見据え、クリニックが地域で果たすべき役割や今後の展望についてお聞かせください。
これからの医療業界は、少子高齢化や各種の制度改定、さらには内装・建築費等の高騰による経営環境の変化など、非常に変化の激しい時代を迎えると考えています。無理な投資などでリスクを背負うのではなく、手堅く堅実な経営に徹する「バランスの取れた確かな視点」を持つことは、クリニックを長期的に安定させ、地域医療を守り続けるために極めて重要だと考えています。

同時に、一人の医師がどれだけ情熱を持っていても、いつかは体力的・年齢的な節目が訪れます。万が一の事態で診療が突然止まってしまうようなことがあれば、それは頼りにしてくださる地域の患者様や、共に歩んできたスタッフに大きな不安を与えてしまうことになりかねません。
だからこそ、早い段階から未来を見据え、これまで築いてきた患者様との信頼関係やカルテ、大切なネットワークを、次の世代を担う若い医師へとスムーズに託していく「医療のバトンタッチ」を視野に入れておくことは、経営者としての本当の優しさであり、大切な責任であると考えています。医療の灯を絶やすことなく、未来へと繋いでいく――そんな「持続可能な運営モデル」を築くことこそが、地域医療に対して私たちが果たせる一つの役割ではないでしょうか。
そうした先々の安心までを見据えた上で、当院が目指すのは、地域の皆様が脳の不調や不安を感じたときに、真っ先に思い出していただける「温かく、信頼される脳の専門クリニック」であり続けることです。「脳かな?とおもったら」「どこの科に行くかわからない」方に、敷居のきわめて低い当院によろず相談していただけたら嬉しいです。
これからも、私自身やスタッフの健康、そして何より通ってくださる患者様の安心を守りながら、一歩一歩誠実に保土ヶ谷の地で歩みを進めてまいりたいと思います。



