なぜ糖尿病内科は「数十秒の差」で患者数が変わるのか?医師の仕事を棚卸しする診察時間短縮術

  • 内科(生活習慣病)
公開日
更新日
執筆者弓削 裕輝
コラムテーマ診療・業務効率化DX
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船井総研内科コンサルタントの弓削裕輝です。本日は、糖尿病を中心に診療されている先生から特によくいただく「診察時間をこれ以上短縮できない」というお悩みについてお伝えします。

「もうこれ以上は削れない」と感じている糖尿病内科の共通の悩み

「ある程度の患者数はすでに診ている。ただ糖尿病は問診も検査結果の説明も指導もあって、どうしても1人あたりの時間がかかる。これ以上は短縮できないし、患者数を増やせるイメージが湧かない」

このような声を、糖尿病を主軸に診ている院長先生からよくお聞きします。

忙しいのに月末の数字を見ると思ったほど伸びていない、という状態は、多くの場合「1人あたりの診察時間」が頭打ちになっていることが原因です。ここで多くの院長先生が陥りがちなのが、「大きく時間を削る方法」を探そうとしてしまうことです。しかし実際に効果が出るのは、もっと地味な積み重ねであることがほとんどです。

なぜ"数十秒の積み重ね"という発想が必要なのか

糖尿病診療の1コマを丸ごと5分・10分単位で短縮しようとすると、どうしても「診療の質を落とすのでは」という不安が先に立ち、現実的な打ち手が見つかりにくくなります。

そこでおすすめしたいのが、「1つの動作を数秒~数十秒短縮できないか」という視点で、診察の流れを分解して見直すという考え方です。例えば、次のような場面を思い浮かべてください。

  • カルテを開いてから前回データを確認するまでの数十秒
  • 検査結果を伝えてから次の一言に移るまでの間
  • 同じ説明を毎回一から話し始めている数十秒~数分

これらを1つずつ数十秒短縮できたとしても、1人あたりでは大きな変化に感じられないかもしれません。しかし1日30~40人を診療している場合、その数十秒は1日単位・1カ月単位で見ると決して小さくない時間になります。

厚生労働省も「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進について」という通知を発出し、医師が担ってきた業務の一部を看護師・薬剤師・臨床検査技師など他職種に移管することを推進しています。国レベルでも、「医師の一つひとつの業務を見直し、他職種に委ねられる部分は委ねる」という発想そのものが後押しされている状況です(出典:厚生労働省「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進について」)。

医師にしかできない仕事、実は医師でなくてもできる仕事――診察業務の棚卸しの仕方

数十秒の積み重ねを見つけるための第一歩は、「今、医師がやっている業務をすべて書き出し、"医師でなければできない業務"と"委ねられる業務"に仕分けること"です。糖尿病診療でよくある業務を例に、仕分けの視点を挙げてみます。

診察業務 仕分け 補足
問診(症状・生活状況のヒアリング) 一部委譲可 既往・服薬確認は看護師が事前聴取
血糖自己測定(SMBG)の機器説明 委譲可 看護師・検査技師が対応可能
フットケアの実施・指導 委譲可 看護師が対応可能
生活指導(食事・運動) 委譲可 管理栄養士・看護師が対応可能
検査結果の説明 医師必須 診断・治療方針に直結
処方内容の判断 医師必須 医師の専権事項
次回受診までの注意事項説明 委譲可 動画・資料化して仕組み化

こうして書き出してみると、「実は自分がやらなくても回る業務」が診察時間の中に相当数含まれていることに気づく院長先生は少なくありません。「今まで自分でやってきたから」という理由だけで医師が担い続けている業務がないか、一度棚卸ししてみることをおすすめします。

今日から始められる時間短縮の打ち手

棚卸しができたら、次は具体的な打ち手に落とし込みます。

看護師・検査技師へのタスクシフト

血糖自己測定の手技指導やフットケア、生活習慣に関する基本的な聞き取りなどは、看護師や臨床検査技師が担うことができる業務です。医師が診察室で改めて確認する時間を、要点の共有だけに絞ることができれば、1人あたりの診察時間はその分短縮されます。

繰り返し発生する説明の仕組み化

糖尿病診療では、「合併症とは何か」「HbA1cとは何を表す数値か」「低血糖時の対処法」など、多くの患者に共通して繰り返し説明している内容があるのではないでしょうか。こうした内容は、院内で説明動画や説明資料を一度作成してしまえば、毎回医師が一から話す必要がなくなります。視聴や資料を読むこと自体は待合室や診察前の時間で完結でき、診察室では確認と質問対応だけで済むようになります。また、内容によっては看護師や医療事務が説明を担当することも可能です。

数十秒の短縮が積み重なると、患者数・売上はどう変わるか

簡単な試算例で考えてみます。1人あたり平均30秒の短縮を積み重ねられたとすると、1日40人診療しているクリニックでは1日あたり20分の余力が生まれます。月20日診療していると考えると、月間で約6~7時間分の診療枠が新たに確保できる計算になります。この時間を新患の受け入れや再診枠の拡充に充てられれば、診療の質を落とさずに患者数を増やし、売上にもつなげていくことが可能になります。

もちろんこれはあくまで一例であり、実際の効果は業務内容やスタッフ体制によって変わります。大切なのは、「削れない」と決めつけずに、業務を分解して数十秒単位で見直してみるという発想そのものです。

まとめ

  • 診察時間の短縮は、大きな変化ではなく数十秒単位の積み重ねで考える
  • 医師の業務を棚卸しし、看護師・検査技師に委ねられる業務がないかを確認する
  • 繰り返し発生する説明は、動画や資料で仕組み化し、医師以外が担える体制をつくる

「自院の場合、どの業務から棚卸しを始めればよいか分からない」「タスクシフトを進めたいが、スタッフへの落とし込み方が分からない」という院長先生も多いのではないでしょうか。自院の診療体制・スタッフ構成を踏まえた個別の見直し方について詳しく知りたい方は、ぜひ一度、無料経営相談をご利用ください。

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執筆者 : 弓削 裕輝

新卒で船井総研に入社。整骨院・整体院・治療院業界のコンサルティングで得たマーケティング知識を中心に、現在は生活習慣病を扱う内科を中心とした内科クリニックの総合的な業績アップコンサルティングに従事している。Webマーケティングを中心とした集患対策やDX・AI分野を中心に、診療効率化&最適化、採用マネジメントなど幅広い分野を手がける。