内科コンサルタントの弓削裕輝です。本日は、糖尿病を中心に診る内科クリニックの「診療効率化」についてお伝えします。
生活習慣病患者の急増で「診療効率化」が待ったなしになっている現状
「気づけば予約が1カ月先までいっぱいで、新患を断らざるを得ない」「スタッフは毎日フル稼働なのに、月末の数字を見るとそれほど伸びていない」――このような声を、糖尿病を中心に診療されている院長先生からよくお聞きします。
厚生労働省の国民健康・栄養調査では、「糖尿病が強く疑われる人」と「糖尿病の可能性を否定できない人」を合わせると、成人の約4人に1人にあたる約2,000万人にのぼるとされています(出典:厚生労働省「国民健康・栄養調査」)。高齢化の進行や特定健診の普及により、今後も糖尿病患者・予備群は増え続けると見込まれます。
つまり、患者数の増加そのものは多くの糖尿病内科にとって追い風です。問題は「増えた患者を、診療の質を落とさずに、収益にきちんとつなげられているか」という点にあります。忙しさに追われて診療効率化が後回しになっている糖尿病内科ほど、患者が増えても手元の利益が伸びないという状態に陥りやすいのではないでしょうか。
一昔前の糖尿病診療との違い――"人海戦術"が通用しなくなった理由
一昔前は、患者が増えたら診療時間を延ばす、あるいは院長がひたすら診察スピードを上げる、といった"気合いと根性"での対応が一定程度は通用していました。
しかし今は状況が異なります。
2024年の診療報酬改定で、糖尿病・高血圧・脂質異常症を対象とする生活習慣病管理料の枠組みが見直され、療養計画書の作成・説明や、検査間隔の管理など、院内オペレーション側の負担が増えている実務があります。そこに患者数の増加が重なることで、「診療の丁寧さ」と「回転率」の両立が一段と難しくなっているのが実情です。
また、医師・看護師などの医療人材の確保が年々難しくなっていることも背景にあります。人を増やして対応するという昔ながらの解決策が、簡単には取りづらくなっているクリニックが多いようです。だからこそ、人を増やす前に「仕組み」で対応できる部分を見直すことが、今の糖尿病内科経営には欠かせません。
あなたの糖尿病内科は今どのレベル?回転率でわかる診療効率化の3段階

自院がどの段階にあるか、次の3つの目安で診断してみてください。
- レベル1(属人化段階)
予約管理・問診・検査結果の確認などが、すべて院長やベテランスタッフの経験と勘に頼っている状態。人が休むと途端に回らなくなる、という悩みを抱えている段階です。
- レベル2(部分効率化段階)
Web問診や予約システムなど、一部の業務にはツールを導入しているものの、糖尿病患者特有の療養指導(栄養指導・フットケア・血糖自己測定指導など)は依然として医師に集中してしまっている段階です。 - レベル3(分業・仕組み化段階)
医師でなければできない診断・処方判断と、看護師・管理栄養士・医療事務が担える療養指導・事務作業とが明確に切り分けられ、患者一人当たりの医師の関与時間が最適化されている段階です。
多くの糖尿病内科は、レベル1からレベル2の間に留まっているというのが実感です。レベル3まで到達できるかどうかが、患者数増加を増収に変えられるかどうかの分かれ目になります。
状況別・診療効率化の具体策
オペレーション改善型(レベル1の院向け)
Web問診・自動再来受付機・予約システムの導入により、受付から診察までの流れを標準化します。特に糖尿病内科では、血糖値・HbA1cなどの検査結果を診察前に医師が確認できる体制を整えるだけでも、診察室内での「待ち」の時間を大きく減らせることが多いようです。
診療単価向上型(レベル2の院向け)
生活習慣病管理料の算定要件を再点検し、療養計画書の運用や検査間隔の管理を見直すことは、診療の質を担保しながら診療単価を適正化することにつながります。あわせて、栄養指導料など算定できる項目に漏れがないかも確認したいポイントです。
スタッフ体制強化型(レベル3を目指す院向け)
栄養指導・フットケア・血糖自己測定の使い方説明などを、管理栄養士や看護師に権限移譲していくことが有効です。医師は「診断」と「治療方針の決定」に集中し、それ以外の療養支援をチームで担う体制に変えることで、医師一人当たりが診られる患者数そのものを増やすことができます。
選ばれ続ける糖尿病内科になるための3つの価値
最後に、今後の糖尿病内科経営で選ばれ続けるために意識したい3つの価値をまとめます。
- 待たせない価値:オペレーション改善による待ち時間の短縮
- 正当な対価を得る価値:算定漏れのない適正な診療単価
- チームで支える価値:医師以外のスタッフが療養指導を担う分業体制
この3つがそろって初めて、「患者が増える」ことが「クリニックの利益が増える」ことに直結します。
まとめ
患者数の増加は、糖尿病内科にとって本来はチャンスです。しかし、診療効率化の仕組みが伴っていなければ、忙しさだけが増えて利益にはつながりにくいというのが実情ではないでしょうか。まずは自院が3段階のうちどこにいるかを確認し、できるところから手をつけていくことをおすすめします。
とはいえ、「自院の場合、どこから着手すべきか」「生活習慣病管理料の算定状況が適正かどうか自分たちだけでは判断が難しい」という院長先生も多いかと思います。自院の診療体制・数値を踏まえた個別の打ち手について詳しく知りたい方は、ぜひ一度、無料経営相談をご利用ください。現状の数値をお伺いしたうえで、具体的な改善余地を診断いたします。



