「患者数や売上はあるのに利益が残らない」
「美容医療の機器を導入したものの、予約が埋まらない」。
こうした悩みを解決するには、売上と費用の両方から、経営状況を把握することが大切です。
本記事では、公的データをもとに皮膚科の利益・利益率の目安を確認し、次の3つの視点から改善方法を解説します。
- 診療効率を高める
- 自費診療の機器の稼働率を高める
- 広告の費用対効果を見直す
皮膚科クリニックの平均売上・利益率
厚生労働省「第25回医療経済実態調査」によると、個人経営の皮膚科クリニックにおける年間平均は、次のとおりです。
| 項目 | 年間平均 |
| 売上(医業収益) | 約6,546万円 |
| 費用(医業・介護費用) | 約4,735万円 |
| 利益の目安(損益差額) | 約1,811万円 |
| 売上に対する損益差額の割合 | 約27.7% |
損益差額の割合は、次の計算で求められます。
1,811万円 ÷ 6,546万円 × 100 = 約27.7%
自院と比較する際の注意点
個人診療所では、院長本人の報酬相当額が給与費に含まれていません。そのため、損益差額の約1,811万円が、そのまま院長の年収や手取りになるわけではありません。
自院と比較する際は、会計上の条件の違いに注意しましょう。
※主たる診療科が皮膚科の個人診療所50施設(青色申告の省略形式による回答を含む)の平均です。対象は、2025年3月末までに終了する直近の事業年(度)です。皮膚科のみを標榜する施設や、保険診療のみを行う施設に限定した数値ではありません。
出典:厚生労働省「第25回医療経済実態調査」625頁。
売上が増えても利益が残らないのはなぜ?
売上が増えても、それ以上に費用が増えると、利益は減少します。
同調査の皮膚科・医療法人の集計では、前々年(度)から前年(度)にかけて、次の変化が見られました。
| 項目 | 前々年(度)から前年(度)への変化 |
| 医業収益 | 4.9%増加 |
| 医業・介護費用 | 7.8%増加 |
| 損益差額率 | 10.7%から8.2%へ低下 |
この集計では、収益以上に費用が増え、増収でも減益となっています。
自院を振り返る際も、売上だけでなく、次の費用がどのように変化しているかを確認しましょう。
- 人件費
- 原価
- 機器関連費用
- 広告費
また、美容医療の機器は、稼働が少なくても、契約に応じてリース料や保守料などの負担が続きます。
美容売上を増やす取り組みと、費用に見合う成果が得られているかの確認を、並行して進めることが大切です。
皮膚科クリニックの利益率を改善する3つの方法
船井総研では、保険診療と自費診療の売上比率が1:1程度の皮膚科・美容皮膚科クリニックを想定し、経営管理において、次の比率を参考目安としています。
| 項目 | 売上に対する比率の目安 |
| 原価率 | 15% |
| 人件費率 | 20%(医師の給与を除く) |
| 広告費率 | 7% |
※これらは公的統計の平均値ではありません。保険診療と自費診療の売上構成などによって、目安は異なります。また、医師給与や家賃など別途考慮すべき費用もあるため、この3項目だけで利益率を計算することはできません。
① 業務分担とオペレーションを見直し、診療効率を高める
診療効率化は、「業務の整理と適切な分担」「オペレーションの最適化」の2つの軸で進めます。
業務を整理し、適切に分担する
まず、医師が行っている業務を洗い出し、看護師や事務スタッフが担当できる仕事を、それぞれの資格・職務の範囲内で移管します。
- 医師の業務を洗い出す
- 看護師・事務スタッフが担当できる仕事を整理する
- 資格・職務の範囲内で業務を分担する
- 問診・記録・予約管理などで、AI・DXツールの導入を検討する
医師が診察や医学的判断に集中できる体制を整え、診療の質を保ちながら、患者様を受け入れる余力をつくりましょう。
動線や情報伝達を見直す
次に、患者様とスタッフの動線、情報伝達の方法、指示系統を見直します。
確認するポイントは、次のとおりです。
- 患者様やスタッフに、無駄な移動が生じていないか
- 情報伝達や指示の確認で、待ち時間が生じていないか
- 同じ作業を重複して行っていないか
- 「誰が、いつ、何をするか」が明確になっているか
必要な人員を確保しながら、円滑に働ける体制を整えることが大切です。
② 自費診療の認知から契約までを見直し、機器の稼働率を高める
機器を導入しても予約が埋まらない場合は、「認知→予約→カウンセリング→契約」のどこに課題があるかを確認しましょう。
そもそも施術が知られていなければ、ホームページや院内掲示などで情報を届けます。
施術ページが閲覧されているのに予約が少ない場合は、内容・料金の分かりやすさ、予約ボタンの位置、予約システムの入力や操作の手間を見直します。
カウンセリングも、次の3つに分けて確認します。
| 課題 | 見直すポイント |
| 来院数が少ない | 認知・予約導線、予約後のキャンセル状況 |
| 来院はあるが契約につながらない | 悩みや希望の把握、施術内容・費用への疑問の解消 |
| 契約につながるが契約単価が低い | 契約メニューの内訳、値引き、希望に合った選択肢の説明 |
契約単価は施術内容によって異なり、低いことだけで問題とは判断できません。患者様に必要な治療を提案したうえで、施術時間や原価、機器関連費用も踏まえて採算を確認しましょう。さらに契約後の施術予約まで追い、実際の契約につながっているかを把握します。
③ 広告を予約ボタンのクリック数と費用対効果から評価する
広告の費用対効果を確認する際は、広告のクリック数や予約ボタンのクリック数(CV数)などを把握することが大切です。ここでいうCVは、予約完了ではなく「予約ボタンのクリック」を指します。
広告経由の実来院や契約まで追い切れない場合も、媒体ごとの広告費・CV数・1CV当たりの費用を整理することで、改善すべき点を見つけやすくなります。
CV数が少ない場合は、広告内容と施術ページの整合性、説明の分かりやすさ、予約ボタンの位置を確認します。
実際の予約状況も確認でき、CV数があるのに予約につながっていない場合は、予約システムの入力項目や操作の手間、予約枠の空き状況などを見直しましょう。
広告費率の参考目安も踏まえながら、CV数と獲得費用の推移を確認します。そのうえで、把握できる範囲で実際の予約・来院・契約状況と照らし合わせ、原価や人件費なども踏まえて採算を判断することが大切です。
利益改善は、自院の課題の把握から
皮膚科の利益率を改善するには、まず自院の売上・費用・損益の推移を把握し、診療体制、自費診療の稼働状況、広告の成果を確認することが大切です。
すべての施策を同時に始めるのではなく、最も大きな課題から着手しましょう。自院の優先課題や具体的な改善策を整理したい方は、船井総研の皮膚科・美容皮膚科・形成外科向け経営相談をご活用ください。
出典:厚生労働省「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」(2025年11月公表)、169頁・625頁および利用上の留意事項。
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001599544.pdf



