品川駅前メンタルクリニック様

今回の取材は現在、「品川駅前メンタルクリニック」の心療内科・精神科クリニックの院長を務めるかたわら、東京大学の精神保健学分野にて客員講師を務め、(一社)日本うつ病リワーク協会の役員・評議員や研修委員会委員長を務める有馬秀晃氏に、先進的なリワークの取り組みについてお話をお伺いしました。
リワークとは気分障害、不安障害などを理由に休職しているビジネスパーソンに対して行われる職場復帰を目的としたリハビリテーションの総称です。特に医療機関で行われるリワークは精神科デイケアなどの診療報酬の範囲内で行うため、保険適応となっており、一部負担で利用することができます。再休職をしない職場復帰を目指しているため、実際に会社で行う作業などのオフィスワークがプログラムに組み込まれており、再発予防に向けて自身の疾患の理解や対処方法を学ぶこともできます。利用者には主に認知行動療法などの心理教育、疾病教育を用いたプログラム構造となっており、集団療法でもあり、コミュニケーションの取り方も学んでいただき、復職へと導きます。

 

◆「リワークを取り巻く環境はどのように変わりましたか?」

 

2003年に品川港南口(東京都港区)で開業しましたが、その当時国からは職場のメンタルヘルスにおいて4つのケア(セルフケア・ラインケア・事業所内ケア・事業所外ケア)が打ち出されておりました。しかし、就業規則等の会社のルールや、復職可能な回復度の基準を精神科医自身が分かっておらず、「寝れて食べれて日中カラダを縦にして過ごせれば復職しても良いだろう」と考え、復職準備性が低い状態で職場に戻ってもすぐに再休職してしまい、企業内での混乱を生んでおりました。そのころから精神科のデイケアはありましたが、現在のリワークの機能や役割とは異なり、国からの入院を減らす方針に従い、統合失調症やアルコール依存症の方の社会との接点、安全安心な場所として行っているクリニックがほとんどでした。そのため、3つのコンセプトを掲げてリワークデイケアを開始いたしました。1つ目が復職できるのかを見極める場。2つ目が利用者に段階的に負荷をかけていき教育を行い再発予防する場。そして3つ目が病理をあぶり出して診断の精度を上げる場です。

 

◆「品川駅前メンタルクリニックの強みは何ですか?」

 

当院の特徴はリワークにあると考えております。当院でのリワークを開始して以降、当院への見学をしたいという他院の医療スタッフや企業の産業保健スタッフからのお問い合わせを数多くいただいており、実際に当院を真似ていただいて今はリワークを提供出来ているという嬉しいお話もお聞きしております。お越しいただいた方に聴いてみるとサービスの質が高いところが特徴的とお話いただくことが多いです。実際にリワークを利用しなかったら教わらないであろう考え方などを学び、リワーク終了までに仕様書という自己分析・再発予防レポートの発表をしていただいており、何度か行う発表のたびに他の参加者やリワークスタッフからの厳しい質疑応答を終えてから卒業となりますので、リワークをされる前よりは確実に強くなって終えられていく方が多いです。また当院では2004年に日本で初めて復職後のフォローアップ体制として土曜日にショートケア(午前の部、午後の部)を行っており、復職された方が集まってピアカウンセリングを行っております。実際にリモートワークが増えたこの1年間ほどでは土曜日に初めて対面で人と会ってモヤモヤした感情を発散しあうという場としても活用いただいております。また当院のリワークを利用される方は大企業で活躍されている方も多くいらっしゃり、そういった方とも対等以上にお話しできるだけのスタッフが揃っていることもリワークの質を底上げしてくれている要因と思います。おかげさまで実際に日本うつ病リワーク協会での施設認定もいただきましたし、わたくし自身は、当協会が委嘱する認定(認定、専門、指導)スタッフに関わる研修委員会委員長を務めております。

 

◆「再発予防としてどのようなことを取り組んでいらっしゃるのでしょうか?」

当院のリワークでは内省・自己分析に力を入れております。不調に至った経緯の振り返りから、内省・自己分析(自己理解)を掘り下げ、再発予防策へ繋げていきます。その際に用いるアプローチとしては、認知行動療法を軸として、アサーション、SSTなどを用います。内省・自己分析や再発予防策は、自らの担当回にはグループ内で発表が行われ、通常5~6回は繰り返されます。認知行動療法などにより適応的自我を確立し、人間的にも成長を果たします。また、復職後には土曜日にフォローアッププログラム(ショートケア)にご参加いただいており、ピア・サポートによる援助を行っています。さらに、ご家族や企業の方へは個別の相談枠を設けております。ご本人の承諾のうえで、ご家族や企業の方と現在の回復度、患者さんへの接し方、今後の見通しなどを説明して意識合わせします。実際、ご家族や上司の方には患者さんを心配するがあまり自分が気に病んでしまい共倒れしてしまうことがよくあるため、周囲の方のケアもきわめて重要です。

 

◆「 現状のリワークの課題はどういったところにあるのでしょうか? 」

 

 リワークに対する正しい理解とサービスの質の確保、そして集患にあると考えます。わたしが産業医をしている企業では、いわゆる「リハ出社」のことをリワークと呼んでおり、わたくしがクリニックでおこなっているリワークプログラムのことを「社外リワーク」と呼んでいるところもあります。どちらが「リワーク本家」か?は別として、両者の目的や内容は全く異なることは理解して頂きたいところです。繰返しになりますが、リワーク(デイケア)は従来型デイケアのような安全・安心な社会との接点の提供に留まるものではありません。内省・自己分析の場であり、そのために心理教育・訓練を受けて頂き、再発・再休職をしない程度の十分な回復度での復職を目指す場です。そして最後に集患に関してですが、当院はありがたいことに多くの方にご利用いただいております。そうした中難しいのは集患するタイミングです。本人がリワークを希望されていても初参加されるまでに当院では約 4 週間かかります。卒業される利用者の数と新しく入られる方の数を常に一定に保つという、病院のベットコントロールに近いことを常に考えておく必要がありますのでこの点を見越しての集患対策という部分が、リワークを実施する際には一番の課題となるかもしれません。その点もどのように行っているかなどはご見学をされた際などにお伝えさせていただきます。ありがとうございました。

 

◆主な論文、執筆

・有馬秀晃.書籍「うつ病の人に言っていいこと・いけないこと (健康ライブラリーイラスト版)」.2014年4月25日.講談社.
・有馬秀晃.職場復帰をいかに支えるか―リワークプログラムを通じた復職支援の取り組み.p74-p85.日本労働研究雑誌 2010
・有馬秀晃,島津明人,江口尚,堤明純.復職支援プログラムほかオランダにおける先進的な産業保健の取り組み.産業医学ジャーナル,39(3),62-68(2016)
・Arima H, Akiyama T, de Moura P, Bernick P, Sakai Y, Ozaki Y, Matsumoto S, Ohki Y, Igarashi Y, Tachimori H, and Yamaguchi S. Resilience building for mood disorders: Theoretical introduction and the achievements of the Re-Work program in Japan. Asian Journal of Psychiatry 58 (2021) 102580. https://doi.org/10.1016/j.ajp.2021.102580. Received 19 November 2020; Received in revised form 22 January 2021; Accepted 24 January 2021; Available online 17 February 2021

 

他、多数。

 

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