ふじさわ脳とからだのクリニック 脳神経外科・内科
院長 永尾 征弥 様

今回は、神奈川県藤沢市(藤沢駅徒歩5分)にある「ふじさわ脳とからだのクリニック 脳神経外科・内科」の院長 永尾 征弥 様にインタビューをさせていただきました。
本インタビューでは「ふじさわ脳とからだのクリニック 脳神経外科・内科」が実践する、診療の質と経営効率を両立させるための具体的な工夫や、生活習慣病管理を通じた「患者様との向き合い方」についてお話を伺いました。
Q1.開業にあたり、あえて「MRIを持たない」という戦略をとられた理由と、現在の立地を選ばれた背景についてお聞かせください。
私がこの藤沢という地を選んだのは、地元だからという理由ではなく、純粋に「自分のやりたい医療」と「健全な経営」を両立させるための戦略的な決断でした。その核となるのが、「MRIを自院で保有しない」という選択です。
一般的に脳神経外科の開業といえば、CTとMRIの両方を導入するのが王道です。しかし、1.5テスラクラスのMRIを導入すると、初期投資、保守費用、さらに電気代や人件費といった重いランニングコストがのしかかります。経営的な損益分岐点を超え、クリニックを安定して運営していくためには、常に一定の検査数を確保する必要があります。
私は、開業にあたり、そうした設備の稼働率を追うのではなく、「目の前の患者様に本当に必要な医療を行うこと」にリソースを集中させたいと考えました。「必要な時に、必要な検査だけを行う」という自身の医療方針を貫くためには、経営を圧迫する設備を持たないことが現時点の最適解だと判断したのです。
その代わり、当院ではコストパフォーマンスに優れ、スクリーニングに最適なCTを導入しています。MRIのような巨額のコストがないため、十分に健全な経営が成り立っています。そして、詳細な検査が必要な時だけスムーズに外部へ依頼できるよう、近隣に画像検査専門のクリニックや、MRIの共同利用が可能な病院があるこの立地を選びました。また、マンションが多く立ち並ぶこの場所なら、生活習慣病など日々の健康管理を大切にしたいとお考えの皆様にとって、一番身近で頼れるクリニックになれると感じたことが大きかったです。そして、何よりもMRIを持たずに、近隣の画像センターなどと役割分担をしながら高水準の検査を提供できる場所であることが、この場所を選んだ最大の理由です。
また、私個人のライフスタイルとの親和性も大切にしました。私は実家が静岡の沿岸部なのですが、藤沢の、海が近く開放的な雰囲気には、以前から故郷に通じる魅力を感じていました。「将来住むならこんな街がいい」と思い描いていた土地で開業できたことは、長く地域に根差して診療を続ける上でも、大きなモチベーションになっています。
Q2.クリニック名にもある「脳とからだ」というコンセプトについて、脳神経外科医が「生活習慣病」を診る意義は何でしょうか?
私が「脳の専門家が体全体を診る」ことを掲げているのは、脳卒中などの脳疾患が、あくまで「結果」にすぎないからです。救急の現場で多くの患者様を診てきましたが、脳卒中で運ばれてくる方の多くは、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を背景に持っています。つまり、脳の病気の「原因の上流」は生活習慣にあるのです。定期的にMRIを撮って「異常なし」と確認するだけでは、本当の意味での予防にはなりません。その検査と検査の間にある日常(生活習慣)が悪ければ、血管はダメージを受け続けているからです。だからこそ、結果である「脳」を守るために、原因である「からだ」と「生活習慣」を管理することが、脳神経外科医としての私の使命だと考えています。
また、治療においては「失われた時間を作らない」ことを重視しています。健康診断で数値が悪かった時、多くの患者様は「まずは運動や食事制限を頑張ってから薬を考えます」とおっしゃいます。そのお気持ちは痛いほど分かりますが、数値が高いまま放置している期間に、血管は確実に老化し、不可逆的なダメージを負ってしまいます。この「失われた時間」は取り戻せません。ですから私は、「まずは薬を使って数値を下げ、血管を守りましょう。その間に、ゆっくりと生活習慣を変えていけばいいんです」という現実的な提案をしています。無理なダイエットは続きませんし、現在のライフスタイルを大きく変えるのが困難だという患者様もいらっしゃいます。それなら、まずは医学的な介入でリスクを排除し、ご自身のタイミングで生活が改善できたら薬をやめればいい。将来、脳卒中という取り返しのつかない事態になってから後悔してほしくないからこそ、専門家として「今、血管を守る」ための介入を強く推奨しています。
Q3.日々の診療において、患者様と接する際に先生が大切にしている「診療スタイル」や「患者様との向き合い方」を教えてください。
私が日々の診療で最も大切にしているのは、「脳神経外科の専門医だからこそできる徹底した管理」と、「患者様が無理なく続けられる現実的なアプローチ」を両立させることです。
まず、専門医としての「厳格な管理」には強くこだわっています。例えば、一度脳梗塞を起こしたことのある患者様に対しては、「緩やかな管理」は行いません。再発率を最大限下げるために、シビアな数値コントロールを徹底します。これが、「脳の怖さ」を知っている専門家が生活習慣病を診る大きな意義だと考えています。
一方で、患者様へのアプローチには柔軟性を持たせています。特に薬を飲みたがらない患者様には、「3か月間、自分が続けられる範囲の努力をしてみてください」というような一定期間のトライアルを提案します。過度な我慢を長く続けることは容易ではありませんから、あくまで「継続できるレベルの節制」で数値が改善するかを試していただきます。それでもダメなら、潔く薬の力を借りましょうと約束するのです。
また、患者様の理解を深めるために、口頭での説明だけでなく、オリジナルのスライドや説明資料を多数用意しています。薬の飲み方や病気のメカニズムなどを視覚的に伝えることで、診療の質を落とさずにコミュニケーションの効率化を図り、ご来院される多くの患者様が納得して治療に向き合える環境作りを徹底しています。
Q4.多くの患者様を診ながら高い診療品質を維持するために、院長独自で行っている工夫やルーティンはありますか?
日々の診療において私が力を入れ、かつ時間を多く割いている一つの作業が「予習」です。毎日診療後の夜間や診療日の早朝に行っています。これは、患者様が診察室に入室される前に、その日のカルテの下書きをすべて終えておくという作業です。新患の方であればWeb問診の内容から病態を予測し、必要な検査や処方を組み立てておきます。再診の方であれば、前回のカルテを読み返し、「今日は採血の結果説明がある」「そろそろCTを撮る時期だ」といったオーダーを事前に入力しておきます。
これを徹底する理由は「医療と経営の正確性」のためです。日々、多くの方を診療する外来においては、本来やるべき検査を忘れてしまったり、確認事項を漏らしてしまったりすることは、患者様の健康管理にとって大きな損失です。それと同時に、クリニック経営の視点でも「提供すべき医療を提供し損ねる(機会損失)」ことになります。予習をすることで、こうしたミスを未然に防ぎ、医療と経営の両面で正確性を担保しています。
毎日の診療前や隙間時間に行うこの「予習」は、正直に言えば非常に根気のいる作業です。しかし、これをやるかやらないかで、診療のスムーズさと正確性、そして何より患者様からの信頼の積み重ねが大きく変わります。ですから、院長である私自身が全ての患者様の情報を事前に把握して待ち構える。これが当院の診療品質と健全な経営を支える最大の秘訣であり、患者様からの信頼にお応えするための責任だと思っています。
Q5.今後の医療業界の展望と、その中での貴院の役割や将来像についてどのようにお考えですか?
これからの日本は人口減少と高齢化が同時に進行していきます。その中で、各クリニックが競って高額なMRIを保有し合うだけが正解ではないと考えています。先ほど申し上げた通り、維持費のかかる機器を単独で持ち、それを維持するために無理な経営をするよりも、それぞれの医療機関が得意な分野で役割分担をするほうが、地域全体として健全です。今後は、当院のように「CTなどの小回りの利く機器は自院で持ち、重装備(MRI)は地域の拠点病院や検査センターと共同利用する」というスタイルも、地域医療を支えるクリニックの「一つの在り方」として重要になってくると考えています。
また、現代はストレス社会であり、患者様はネットで自身の症状を詳しく調べてから来院されます。情報が溢れ、不安が強い時代だからこそ、「頭痛なら脳の専門家へ」という明確な「専門性」を掲げることが、患者様に選んでいただくための重要な「入り口」になります。そして、その入り口から入ってこられた患者様の健康を支えるベースとなるのが、多くの病気の始まりである「生活習慣病の管理」です。
脳疾患の予防は、結局のところ日々の血圧や血糖、脂質の管理などに帰着します。専門性を信頼して来院していただき、その背景にある生活習慣病という土台を私たちがしっかり管理させていただく。この循環を作ることが、患者様の健康寿命を延ばし、かつクリニックとしても長く地域に必要とされる基盤になると考えています。
診療領域としては、やはり「認知症」への対応が急務です。高齢化に伴い、その患者数は確実に増えますが、専門的に診られるクリニックはまだ足りていません。脳神経外科医としてのバックグラウンドを活かし、認知症の早期発見・治療はもちろん、そのご家族のケアも含めた地域全体のサポートを行っていきたいと考えています。
そのために、私自身も常に新しい知識を取り入れ続けています。現在保有している専門医資格に加え、必要となる専門医資格は積極的に取得するようにしています。制度の兼ね合いで更新できなくなるものもありますが、私が長年培ってきた技術や知識が失われるわけではありません。これからも「取得歴」として自身のキャリアをすべてオープンにし、患者様に「この先生なら安心だ」と思っていただける「脳とからだの専門家」として、地域の健康寿命を延ばす役割を担っていきたいと思います。



