呼吸器内科において、重症喘息に対する「生物学的製剤(抗体免疫療法)」は、患者様のQOLを劇的に改善する非常に強力な治療選択肢です。
デュピルマブ、メポリズマブ、オマリズマブなどの高額な注射製剤を導入し、専門性の高い医療を提供されている先生方に、ひとつ確認していただきたいことがあります。
これらの重症喘息向け抗体免疫療法において、「在宅自己注射指導管理料」を適切に算定できていますでしょうか?
「院内でスタッフが注射を打ち、手技料(皮下・筋肉内注射:13点)だけを算定している」
もしそのような状況であれば、本来評価されるべき手厚い指導管理の点数を取りこぼしている可能性があります。
重症喘息の抗体免疫療法における「在宅自己注射指導管理料」のインパクト
重症喘息に用いられる抗体免疫療法の多くは、厚労省により在宅自己注射が認められています。これは、定期的な通院による負担を軽減し、患者様が仕事や日常生活と治療を無理なく両立できるようにするための重要な選択肢です。
もちろん、単に「家で打ってもらう」というわけではありません。医師やスタッフが患者様に安全な手技を丁寧に指導し、在宅での治療を継続的にサポートする体制を構築する必要があります。
この「手厚い指導と管理」に対する正当な評価として、クリニックは以下のような管理料を算定できるようになります。
- 在宅自己注射指導管理料(月27回以下の場合):650点
(※複雑な場合など、製剤・条件により異なる場合があります) - 導入初期加算(導入から3ヶ月間):580点
- 注入器用注射針加算:130点(※必要な場合)
導入初期の3ヶ月間は、管理料と導入初期加算だけでも月1,230点(12,300円)という非常に高い評価が設定されています。これは、患者様が自宅で安全に重症喘息の治療を継続するための「指導と管理」がいかに重要であり、国から高く評価されているかを示しています。

自己注射への移行条件(算定要件)
もちろん、無条件に自己注射へ移行できるわけではありません。主に以下の「条件(要件)」を満たす必要があります。
適応疾患の確認
重症喘息など、厚労省が自己注射を認めている疾患であること。
院内での安全性確認
導入初月から自己注射はできません。まずは院内で一定期間(製剤ごとの規定回数)投与を行い、重篤な副作用がなく、効果と安全性が確認されていること。
適格性の判断
医師が「この患者様(またはご家族)なら手順通りに安全に手技を実施でき、万が一の副作用の際も適切な対応ができる」と判断すること。
十分な指導と記録
院内で複数回にわたる手技指導を行い、同意を得た上で、その指導内容をカルテに記載すること。
これらの条件をクリアし、算定要件を満たすことが、クリニックの安定した経営基盤づくりに直結します。
最大の壁「指導に時間がかかる」をタスクシフトで突破する
メリットが大きい自己注射ですが、移行が進まない最大の理由は「手技の指導に時間がかかりすぎる」という点にあります。
「ただでさえ忙しい外来中に、ペン型注射器の使い方やトラブル時の対応を、院長が手取り足取り教えている時間なんてない」
そうお考えの先生も多いのではないでしょうか。
自己注射移行を成功させているクリニックの最大の鍵は、「院長がすべてを抱え込まない仕組み(タスクシフト)」にあります。
医師は「自己注射への移行の医学的判断と指示」に集中し、具体的な機器の操作説明や、初回導入時の見守り、チェックリストを用いた安全確認は、看護師へタスクシフトする。これにより、外来のスピードを落とさずに、患者様へ安全な在宅医療を提供することが可能です。
本コラムでは、あえて「具体的な指導用パンフレットの運用や、看護師へのタスクシフトの手順」は記載していません。クリニックごとにスタッフの人数や習熟度が異なるため、ネット上の情報をそのまま真似しても機能しないからです。
「うちの看護師体制でも、自己注射の指導は回せる?」
「査定されないための、カルテ記載や指導記録のフォーマットが知りたい」
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