皮膚科・美容皮膚科の経営支援に携わるなかで、求人を掲載しても応募が集まらない、採用できても定着につながらないというご相談をいただくことが多々あります。
厚生労働省の公表によると、令和7年度平均の全職種の有効求人倍率は1.20倍です。職業情報提供サイトjob tagでは、看護師の有効求人倍率は2.38倍となっています。これらの数字からも、看護師は多くの求人の中から職場を比較し、選択できる環境にあることが分かります。
採用活動において、求人媒体の選定や給与条件の検討はもちろん重要です。ただし、それだけでは、数ある求人の中から自院を選ぶ理由まで十分に伝わらないことがあります。まずは、採用ペルソナ(一緒に働きたいスタッフの属性・タイプ)を明確にし、効果的なアピールができるようにすることから始めることが大切です。
そこで今回は、採用活動を、次の7段階に整理し、それぞれの段階で検討すべきポイントを解説します。
- 採用ペルソナ
- 認知・発見
- 興味・関心
- 比較・検討
- 応募
- 選考・面談
- 定着・評価
1.採用ペルソナ:どのような看護師を採用したいか決める
最初に着手するのは、自院に合う看護師像の明確化です。資格や経験年数だけでなく、どのような考え方を持ち、どのような働き方を希望する人と一緒に働きたいかを決めます。
採用ペルソナは、WHO・WHAT・HOWの順で整理します。
- WHOは、自院が求める人物のマインドとスキルです。
- WHATは、自院の理念、価値観、強みです。
- HOWは、その人物に情報を届ける採用媒体やツールです。
そのうえで、自院の強みを、給与、働き方、キャリア、コミュニティ、ミッションの5領域から選びます。
給与は月給や手当、働き方は退勤時間や休日、キャリアは資格取得や経験できる業務、コミュニティは職場の雰囲気や指導方法、ミッションは経営理念や仕事のやりがいを指します。
すべてを良く見せる必要はありません。自院と採用ペルソナの相性が良く、競合と比較して優位性を作れる領域を決めることが重要です。
2.認知・発見:採用ペルソナに合った媒体へ求人を掲載する
採用ペルソナを決めたら、次に求人を見つけてもらうための媒体を選びます。
経験者採用が中心であれば、ジョブメドレーなどの医療系求人媒体や看護師専門媒体が候補になります。美容医療未経験者まで対象を広げる場合は、Indeed、ハローワーク、地域求人媒体なども活用します。
多くの媒体に同じ求人を掲載することが目的ではありません。採用したい人物が、転職時に利用する可能性の高い媒体を優先します。
また、欠員が出てから募集を始める補充採用だけでは、条件に合わない方でも採用せざるを得なくなります。良い人材と出会ったときに採用できるよう、採用活動は継続して行うことが理想です。
3.興味・関心:競合と時流を踏まえて募集要項を作る
求人を見つけてもらった後は、求職者に興味を持ってもらう必要があります。ここで行うのが、競合調査と募集要項の作成です。
まず、同一エリアの皮膚科・美容皮膚科が提示している給与、勤務時間、休日、手当、賞与、教育制度を一覧化します。全国平均だけで判断せず、地域で比較されるクリニックの条件を確認していただくのがおすすめです。
そのうえで、採用ペルソナが重視する領域を募集要項で強く打ち出します。例えば、働き方を強みにする場合は、残業が少ないという表現だけではなく、定時退勤を実現するために、勤務時間中は集中して業務を進め、スタッフ同士で協力するという働き方まで記載します。そうすることで、時間的制約がありつつも、真面目でしっかり働きたい層の求職者に刺さる訴求となります。
メリットだけでなく、求める姿勢も示すことで、自院の理念や働き方にそぐわない方の応募を減らせます。
4.比較・検討:採用サイトで自院の強みを伝える
求職者は、一つの求人だけを見て応募を決めるわけではありません。求人票で興味を持った後、クリニックのホームページ、採用ページ、SNS、口コミなどを確認し、他院と比較します。
採用ページでは、理念、求める人物像、仕事内容、給与、手当、昇給、勤務時間、休日、教育体制、スタッフの声などを通じて、自院の特徴や働く魅力を具体的に伝えます。掲載項目を網羅するだけでなく、自院にマッチする人物が働きたいと思える、自院ならではの強みを打ち出すことが重要です。
皮膚科・美容皮膚科では、保険診療と美容施術の業務割合、扱う美容機器、施術を一人で担当するまでの流れも重要です。求人媒体では働き方を強みとしているのに、採用ページでは美容施術の魅力しか紹介していないなど、媒体ごとに訴求がずれないようにします。
採用サイト、募集要項、SNSで同じ強みを一貫して伝えることが、医院ブランドの構築につながります。
5.応募:即レス・即面接ができる体制をつくる
応募が来た後の対応が遅いと、求職者は先に連絡が来た別のクリニックの選考へ進んでしまいます。
応募確認、連絡、面接日程の調整を誰が担当するのか、事前に決めておきましょう。院長が診療の合間に対応するのではなく、採用担当者や幹部スタッフを決め、速やかに返信と面接設定ができる体制をつくります。
求人を掲載する前に、応募者への返信文、確認事項、面接候補日まで準備しておくと、応募後の対応を止めずに進められます。
6.選考・面談:スキルだけでなく理念との相性を確認する
書類選考、スタッフ面接、院長面接、採用決定までの流れと判断基準を決めます。
美容施術の経験だけを優先すると、自院の働き方や理念と合わない人を採用する可能性があります。技術は入職後に身につけられますが、仕事への姿勢や周囲との関わり方を短期間で変えることは簡単ではありません。
面接では、美容医療への関心だけでなく、患者様への接し方、学ぶ姿勢、報告・連絡・相談、チームで働く意識を確認します。人柄が良いことと、自院との相性が良いことは同じではありません。採用ペルソナと自院の理念に基づき、独自の採用基準を守ることが重要です。また、現職および前職の退職理由が他責になっている場合は、採用を避けたほうが良いでしょう。
7.定着・評価:入職後の期待値のずれをなくす
採用活動は、入職で終わりではありません。求職者は、応募時にイメージした通りの職場で長く働きたいと考えています。
募集要項で伝えた仕事内容、働き方、教育体制と、入職後の実態が一致しているかを確認します。評価制度、教育計画、定期面談、フォローアップ研修を整え、本人が何を習得し、次に何を目指すのかを明確にします。
入職後のヒアリングを行い、採用前後で期待値がずれている場合は、教育だけでなく求人原稿や面接時の説明も見直します。定着率の改善は、採用後ではなく、採用ペルソナと情報発信の段階から始まっています。
まとめ
皮膚科・美容皮膚科の看護師採用で、最初に着手すべきことは採用ペルソナの作成です。その後、採用ペルソナを含む7段階順で、採用活動を整えていきます。
広い看護師採用市場で、自院が強みを持つ領域を決め、その価値を求める看護師へ情報を届けることが大切です。
船井総合研究所では、皮膚科・美容皮膚科の採用ペルソナの設計から、競合調査、募集要項、採用ページ、選考フロー、評価・教育制度まで一貫してご支援しています。
看護師採用を何から始めればよいか分からない先生は、ぜひ一度ご相談ください。



