厚生労働省のデータによると、外来医療の需要は緩やかな減少に転じると予測されています。一方で、内科クリニックの数はほぼ横ばいの状態が続いています。
需要は減っていくのに、供給(クリニックの数)は変わらない。この単純な構造だけを見ても、循環器内科を取り巻く経営環境が、これまでとは異なる局面に入りつつあることが分かります。
「最近、初診の方が心なしか減った」「同じような内容のホームページを持つ医院が近くに増えた」——もし思い当たる節があるとしたら、それは先生の医院固有の問題というより、業界全体で起きている構造変化の一部かもしれません。
こうした環境下で見直したいのが、患者さんが実際に来院に至るまでの一連の流れです。集患というと「いかに知ってもらうか」に意識が向きがちですが、実際にはその先に「選ばれる」段階があり、選ばれた後には「実際に来院する」段階もあります。この3つを分けて考えることで、自院のどこに課題があるのかが見えやすくなります。
来院に至るまでの3つのステップ
患者様が実際に来院されるまでには、大まかに3つのステップがあります。
第1段階:「知る」
地域住民や潜在的な患者さんに、そもそも医院の存在を知ってもらう段階で、看板やホームページなど、目に触れる接点をきちんと整えておくことが基本となります。この段階では「選ばれる」ところまでは至っておらず、「近くにこういう医院がある」という認識を持ってもらうことが目的です。
第2段階:「選ぶ」
ここでは、クリニックの存在を知った患者様が、複数の候補の中からどこに行くかを比較検討する段階です。ホームページ上でいかに他院との違いを見せられるかがポイントになります。具体的には、診療する疾患について一般的な説明にとどめず「当院ではこのような点を大切にしながら診療しています」といった当院ならではの診療方針を添えることや、院長先生の医療に対する思いを言葉にすること、また料金や診療時間、予約方法といった実務的な情報を分かりやすく掲載しておくことなどが重要です。
第3段階:「来院する」
選ばれた後、実際に足を運んでもらうまでの行きやすさを指します。たとえば予約制を導入している医院であれば、予約サイトそのものの使いやすさや、ホームページのどこから予約ページに遷移できるか、といった導線設計がここに当たります。せっかくホームページで選んでもらえても、予約ボタンが分かりにくい場所にある、予約フォームの入力項目が多く途中で離脱してしまう、といった状態では来院にはつながりにくくなる可能性があります。
患者のタイプ分類と伝えるべきメッセージ
第2ステップ「選ぶ」では、ホームページ上で他院との違いをどう見せるかがポイントだとお伝えしました。しかし、実際にどんなメッセージを届けるべきかは、患者さんがどんな状態にあるかによって大きく変わります。循環器内科を必要とする、あるいは必要とすべき患者さんの状態には幅があり、一つのメッセージですべてをカバーすることは難しいというのが実情です。ここでは代表的な3つの状態を見ていきます。
①新規指摘層(健診で引っかかった方)
健診で心電図の異常や心雑音を指摘され、まだ何も行動を起こせていない方がいます。この層にとって重要なのは、専門用語を並べることではなく、「これは何なのか」「今すぐ何かが起きるものなのか」という素朴な疑問に、平易な言葉で答えることです。
②転院検討層(今の治療に不満がある方)
今の通院先に何らかの不満を抱えている方もいます。待ち時間の長さや、検査結果の説明が不十分だと感じている場合、「検査結果はその場で分かりやすくご説明します」「エコーやホルター心電図を院内で完結できます」といった具体的な情報が、比較検討の材料として響きやすくなります。
③治療中断層(途中で行かなくなった方)
そして、一度は通院していたものの、何らかの理由で通院が途絶えている方もいます。多忙による中断や、症状が落ち着いたことによる自己判断での中断です。この層に対しては、通いやすさを伝えることに加えて、「症状が落ち着いても継続受診が必要な理由」を丁寧に伝えることが、再来院のきっかけになると考えられます。
患者様が重要視する5つの要素
最終的に患者さんに選ばれ、通い続けてもらうためには、診断や治療の正確さ(医療的な価値)だけでなく、それ以外の要素も想像以上に大きな比重を占めるといわれています。
| 患者さんが評価する要素 | 具体的な内容の例 |
|---|---|
| 時間に関する価値 | 待ち時間の短さ、検査から結果説明までの速さ |
| 信頼に関する価値 | 症状や検査結果の丁寧な説明、不安への寄り添い |
| 感覚に関する価値 | スタッフの対応、院内の清潔感や落ち着き |
| 利便性に関する価値 | Web予約やキャッシュレス決済、オンラインでの結果確認 |
| 医療そのものの価値 | 症状の原因が明確になったこと、専門的な助言 |
この5つの要素をバランスよく満たすことができれば、「近所だから」ではなく「この医院に相談したい」という理由で選ばれる患者さんを、少しずつ増やしていくことができると考えられます。
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