肥満症治療薬「ゼップバウンド」が睡眠時無呼吸症候群の適応追加 5月18日にゼップバウンドのSAS適応が承認

  • 内科(生活習慣病)
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執筆者内科・医療支援部
コラムテーマ時流予測・業界動向
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睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の標準治療として、長らくCPAP療法が第一線で用いられてきました。しかし、患者のアドヒアランス低下や、根本的な原因である「肥満」の解消には直結しないという臨床上の課題を抱えていたのも事実であります。

2026年5月18日、GIP/GLP-1受容体作動薬である「ゼップバウンド(一般名:チルゼパチド)」が、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対して適応追加の承認を受けました。これにより、肥満を合併するOSAS治療は「対症療法」から、気道閉塞の根本原因にアプローチしていく「根本治療」へと大きな転換期を迎えています。

本コラムでは医療機関におけるゼップバウンド導入と、臨床データに基づく有効性について記載をしています。

SURMOUNT-OSA試験が示す臨床データ

ゼップバウンドのOSASに対する有効性は、グローバル第3相試験である「SURMOUNT-OSA試験」によって実証されています。CPAP療法を行っていない患者群、およびCPAP療法を継続している患者群の両方において、極めて高い有効性が示されています。

評価項目 SURMOUNT-OSA試験における主な結果
AHI(無呼吸低呼吸指数)の低下 チルゼパチドの投与により、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)が約55〜63%低下した(プラセボ群と比較して)
体重減少効果 52週間の投与でベースラインから約18〜20%の体重減少が確認された
疾患の解消(CPAP離脱の可能性) 臨床試験では、患者の4割以上でCPAP(持続陽圧呼吸療法)が不要になる可能性が示された

これらのデータは、ゼップバウンド(チルゼパチド)による減量効果が上気道周囲の脂肪組織を減少させ、物理的な気道閉塞を改善させることを示唆しています。

保険適用の要件と対象患者のスクリーニング

臨床現場において、ゼップバウンドをOSAS治療薬として保険診療で処方するためには、適切な適応評価が求められます。主な要件は以下の通りとなります。

  • 中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と確定診断されていること
  • BMIが27以上であり、肥満症の要件を満たすこと
  • CPAP療法に不耐容の患者、またはCPAP療法と併用して更なる病態改善を目指す患者

特に、これまでCPAPのマスク装着に伴う不快感や皮膚トラブル、空気が漏れることによる中途覚醒などでCPAP治療を離脱してしまっていた患者にとって、新しい治療選択肢となります。

ゼップバウンドを保険処方するための条件は?

ゼップバウンドを保険処方するためにはいくつかの条件があり、全てのクリニックが保険処方できる訳ではありませんのでご注意ください。

①対象となる患者の基準(BMIと合併症)

保険適用を受けるには、まず「肥満症」という病名がつく必要があります。体重がただ多いだけでは該当せず、以下のいずれかを満たす必要があります。

A:BMI 35以上(高度肥満)
B:BMI 27以上かつ、以下の肥満関連疾患を2つ以上合併している方
・高血圧 ・2型糖尿病 ・脂質異常症(高コレステロール・高中性脂肪)
・閉塞性睡眠時無呼吸症候群(いびき・無呼吸)
・非アルコール性脂肪肝炎(NASH) 等

②処方前に最低3か月の前治療が必要

上記に記載している基準を満たしていても、すぐに始めることはできません。最適使用推進ガイドラインでは、「薬物療法以外の治療(食事・運動・生活習慣指導)を一定期間行い、それでも十分な効果が得られなかった場合」という条件が記載されています。

③処方できる医療機関が限られる

ゼップバウンドを保険処方できるのは、「肥満症治療に精通した専門的な施設」として各製薬会社の適正使用推進委員会に登録された医療機関のみとなります。一般の内科クリニックでは保険処方できないことがほとんどかと思います。

保険処方ができる具体的な医療機関

  • 肥満外来・内分泌科を持つ大学病院・基幹病院
  • 日本肥満学会認定施設 等

上記のようにゼップバウンドを保険処方するためには大きなハードルがあり、誰しもが保険処方ができる訳ではありません。

まとめ

2026年5月に肥満症外来の治療薬である「ゼップバウンド」が適応追加となりました。睡眠時無呼吸症候群は、肥満が原因となって発症していることもあり、今回のゼップバウンドの適応追加は注目されていました。

ゼップバウンドの保険処方をするためには厳しい施設基準があり、多くのクリニックでは対応が難しいことかと思います。最近では自費でゼップバウンドの対策を行っているクリニックも増えてきています。貴院の新しい事業として肥満症外来の付加、または自費領域の強化をお考えの方はお気軽にご相談ください。

参考資料
厚生労働省「最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(販売名:ゼップバウンド皮下注)~閉塞性睡眠時無呼吸症候群~」:https://www.pmda.go.jp/files/000280608.pdf 2026年7月1日

執筆者 : 内科・医療支援部

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